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企業におけるソフトウェア品質向上に向けたプロセス改善に関する研究
Authors
Hideto Ogasawara
小笠原 秀人
Publication date
2 September 2016
Publisher
Abstract
ソフトウェアがさまざまな領域で活用されるのにともない,製品やシステムにおけるソフトウェアが果たす役割は増している.1990 年代以降,製品やシステムの高機能化・多機能化にともない,ソフトウェアの大規模化・複雑化が急激に進んでいる.さらに,ユーザニーズが多様化してきたことによって,製品サイクルの短縮,製品ファミリーの拡大といった傾向も顕著になってきた.このような状況に対応しきれず,ソフトウェア開発の問題が発生し続けている.多くの企業では,ソフトウェア開発におけるQCD(Quality:品質,Cost:コスト,Delivery:納期)を安定させるために,ソフトウェアプロセス改善活動を推進している.プロセス改善活動を推進するために,多くの企業では,CMMI(能力成熟度モデル統合:Capability Maturity Model Integration)やISO9001 などのモデルを活用している.しかしながら,それぞれのモデルでは,具体的にどのように実施すればよいかということは記述されていない.そのため,プロセス改善活動は推進しているものの,活動自体が形骸化してしまう,過重なプロセスを作ってしまい品質向上や生産性向上に寄与できていない活動になってしまう,という結果も報告されている.つまり,これらのモデルだけでは,プロセス改善活動を推進するには十分なものが揃っているとはいえない,ということを示している. さらに,プロセス改善活動の中で導入・推進が図られるソフトウェア品質向上のための管理手法や管理ツールに関しても,組織内への導入と定着のための方法が明確でないため,先行部門ではうまく導入され定着するものの,組織横断的な展開には失敗するということも大きな問題として認識されている.これらの問題を解決するため,本研究では,企業におけるソフトウェアプロセス改善活動を全社的に実践することを目的として,ソフトウェアプロセス改善活動を推進・定着させるための「SPI1フレームワーク」を提案し,その提案に基づいて構築した東芝版SPI フレームワークを活用して大規模な組織2に対して約10 年間にわたり実践した.構築したフレームワークの中には,ソフトウェア品質向上のために活用される管理手法や管理ツールを,組織横断的に展開するための方法の提案も含まれている.大規模組織における約10 年間にわたる実践の結果,構築した東芝版SPI フレームワークが全社的に認知され,機能し続けているという状態を達成した.また,全社的な推進活動の成果として,組織成熟度が高くなり,ソフトウェア開発におけるQCD の向上にも貢献できていることを示した.本論文の価値は,組織横断的にSPI 活動を推進・展開させるための「SPI フレームワーク」を提案し,その提案に基づき,東芝内の状況に合わせて東芝版SPI フレームワークを構築したことと,その構築したフレームワークの実用性,汎用性を示したことにある.本論文を参照することによって,企業におけるソフトウェアプロセス改善活動の推進方法や留意点がわかり,より具体的な計画立案と実施に役立つはずである.電気通信大学201
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