京都大学0048新制・課程博士博士(医学)甲第21688号医博第4494号新制||医||1036(附属図書館)京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 河本 宏, 教授 生田 宏一, 教授 江藤 浩之学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Xu, Huaigeng

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Title Targeted Disruption of HLA genes via CRISPR-Cas9 generatesiPSCs with Enhanced Immune Compatibility( Abstract_要旨 )Author(s)Xu, HuaigengCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2019-03-25URL https://doi.org/10.14989/doctor.k21688Right許諾条件により本文は2020-03-24に公開;https://doi.org/10.1016/j.stem.2019.02.005Type Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University                                                                                京都大学 博士（ 医学 ） 氏名  徐 淮耕 論文題目 Targeted Disruption of HLA genes via CRISPR-Cas9 generates iPSCs with Enhanced Immune Compatibility （CRISPR-Cas9を用いた個別HLA遺伝子破壊による免疫適合性の向上したiPS細胞の作製） （論文内容の要旨） 【背景と目的】  他家 iPS細胞を用いた再生医療は既に臨床治験の段階まで来ているが、移植片と患者との間に HLA(ヒト白血球抗原)のミスマッチがあると拒絶の原因となりえることが知られている。HLAホモドナー由来の iPS細胞を用いることによりHLA適合性を上げる方法があるが、日本人の90%以上をカバーするにはHLA-A,B,DRのホモストックを140 株用意する必要があるが、HLA 型がホモである人は稀少であり、ドナー勧誘が律速となっている。 一方で、 全てのHLAクラスI の細胞表面提示に必要なB2M遺伝子を破壊することで、細胞表面に提示させない方法も報告されている。この方法ではCD8陽性T細胞の拒絶を免れることはできるが、HLAクラス Iを介した抑制がなくなってしまうため、NK細胞に攻撃されることが知られている。加えて、HLAクラス I完全欠失細胞は抗原提示能も欠失するため、感染源となるリスク及び腫瘍化時に免疫系に排除されないリスクも存在し、新たな方法が必要と考えた。  【戦略】  まずHLAヘテロドナー由来の iPS細胞において古典的HLAクラス I(HLA-A,B,C)の片アレルのみを破壊し、擬似的なHLAホモ株の作製を試みた。まずCRISPR-Cas9を用いて、HLAアレルに特異的なgRNAをデザインし、標的アレルのみを破壊できることをサンガーシークエンスで確認した。その過程で、未分化 iPS細胞でも IFN-γで刺激すれば HLA を細胞表面発現することを突き止め、HLA アレル特異的な抗体を用いてHLAアレル破壊に成功した細胞のみを生細胞染色およびソーティングにより濃縮する技術を開発した。これらの技術を用いて、HLA-A,B及び HLA-A,B,Cの片アレルノックアウト株を作製した。さらに、ゲノム編集前後の iPS細胞を血球細胞及び心筋細胞に分化させ、ゲノム編集後にのみHLA型が一致する仮想レシピエント由来の末梢血CD8陽性 T細胞と混合した結果、ゲノム編集前の細胞と比較してHLA編集株は有意にT細胞の攻撃を回避できることが示された。  さらに、古典的HLAクラス Iの中でNK細胞の抑制に最も重要なHLA-Cの片アレルと非古典的HLA(HLA-E,F,G)を残存させた”HLA-C残存細胞”を作製した。この方法では、まずHLA-A,Bを両アレル破壊後に、HLA-Cの片アレルを特異的にCRISPR-Cas9を用いてノックアウトした。このHLA-C残存株を、残存したHLA-CのみHLA型が一致する仮想レシピエント由来の CD8陽性 T細胞と混合した結果、HLA-C残存細胞はHLA編集前の細胞と比較して有意にT細胞の攻撃を回避できることが示された。続いて、仮想レシピエント由来のNK細胞と混合した結果、HLA-C残存細胞はB2M破壊細胞と比較して有意にNK細胞の攻撃を回避できることが示された。 さらに、HLAクラス IIの転写制御因子であるCIITA破壊を組み合わせて”HLA-C残存 + クラス II 欠損細胞”を作製し、仮想レシピエント由来の末梢血と混合した結果、CD8陽性T細胞、CD4陽性T細胞、NK細胞のいずれも活性化させないことが示された。          【結論、考察】  ゲノム編集を用いた二つの戦略により、iPS細胞の免疫学的適合性の向上に有効であることを示した。特に後者の”HLA-C残存 + クラス II欠損細胞”のHLA-Cアレルを適切に選択すれば、６株で日本人の９割以上を、１２株で世界人口の９割以上をカバーできる計算となるため、ゲノム編集を用いた iPS細胞ストックとして有効であると考えられる。  （論文審査の結果の要旨）  iPS細胞移植において、ドナーレシピエント間のHLA型の不一致は、T細胞による拒絶の原因となりうる。近年、B2M遺伝子の破壊によりHLAクラス Iの発現を消失させる報告があるが、クラス Iの発現低下を感知するNK細胞の活性化や、移植細胞のウイルス感染や癌化に際してT細胞の監視から逃れてしまう可能性が指摘されている。本研究では、移植細胞のT細胞とNK細胞による拒絶を回避し、かつ抗原提示能をある程度維持した iPS細胞株の樹立を目指した。まず、クラス I遺伝子座のうちHLA-A, Bの両アレルを破壊し、さらにNK細胞の抑制に重要なHLA-Cを片アレルのみ残したHLA-C残存 iPS 細胞をゲノム編集により作製した。次に血球様細胞に分化させ、残存したHLA-CのみHLA型が一致するCD8陽性T細胞及びNK細胞と共培養した結果、どちらの細胞傷害活性も回避できることが明らかになった。加えてHLAクラス IIを欠損させることで、CD4陽性T細胞の活性化も回避可能であった。本研究のHLA-C残存HLAクラス II欠損細胞を移植に用いる際、HLA-C型のみが一致していれば良く、より多くのレシピエントに移植可能な iPS細胞株の樹立に成功したものと言える。  以上の研究は HLA ゲノム編集技術により移植細胞の免疫適合性を向上できることを示す成果であり、今後の iPS細胞の臨床応用の促進に寄与するところが大きい。  したがって、本論文は博士（ 医学 ）の学位論文として価値あるものと認める。  なお、本学位授与申請者は、平成 31年 3月 6日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。 

CRISPR-Cas9を用いた個別HLA遺伝子破壊による免疫適合性の向上したiPS細胞の作製

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/242420/1/yigak04494.pdf

CRISPR-Cas9を用いた個別HLA遺伝子破壊による免疫適合性の向上したiPS細胞の作製

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