京都大学0048新制・課程博士博士(医科学)甲第21693号医科博第97号新制||医科||7(附属図書館)京都大学大学院医学研究科医科学専攻(主査)教授 中川 一路, 教授 朝長 啓造, 教授 西渕 光昭学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Koide, Rie

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Title Experimental infection of Japanese macaques with simianretrovirus 5( Abstract_要旨 )Author(s)Koide, RieCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2019-03-25URL https://doi.org/10.14989/doctor.k21693RightType Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University京都大学 博士（医科学） 氏 名 小 出 り え 論文題目 Experimental infection of Japanese macaques with simian retrovirus 5 （サルレトロウイルス5型のニホンザルへの感染実験解析）  （論文内容の要旨）  ニホンザルは、日本固有のマカク属のサルであり、様々な分野で実験用モデルとして用いられている。しかし近年、生理学研究所委託施設で飼育されていたニホンザルにおいて、原因不明の伝染性血小板減少症が多発し、多数のニホンザルが死亡した。臨床症状としては、貧血、食欲不振、不活発、鼻粘膜、歯茎および皮下出血等があり、発症個体には共通して血小板数の著減が認められた。このニホンザル血小板減少症の原因究明のために、複数の研究機関で疫学調査を行った結果、サルレトロウイルス 5型（SRV-5）と疾患の関連性が強く示唆された。しかしながら、SRV-5が本疾患の病原体であると証明するためには、実験感染による病態再現が必須である。そこで、本研究では血小板減少症ニホンザル個体からSRV-5を分離し、非感染ニホンザル個体に実験感染させることで、SRV-5と本疾患の関連性を探った。  まず、血小板減少症ニホンザルから SRV-5を分離し、分離ウイルスを基に遺伝的に単一な SRV-5感染性分子クローンを作出した。これらのウイルスをそれぞれ2頭のニホンザルに接種したところ、いずれの個体においても持続的な高ウイルス血症が接種後 8日目以降にみられた。また分離ウイルス接種 2頭中 1頭、感染性分子クローン由来ウイルス接種 2頭中 1頭において、接種後 22日目に高度の血小板減少が誘導された。明瞭な歯肉ならびに皮下出血等の出血傾向が認められたので、これらの 2頭は血小板減少症発症個体として、接種後 24日目に安楽殺させ、解剖学的解析に供した。一方、残り 2頭に対しては、免疫抑制剤（Dexamethasone）を継続的に投与して発症の誘発を試みたが、投与後 2ヶ月を経ても高ウイルス血症を維持しながら発症せず、無症候性のキャリア個体と判定し、接種後 100日目に安楽殺させ、解剖学的解析に供した。次に全身組織から核酸を抽出し、組織毎の SRV-5感染レベルを検討したところ、SRV-5は特に小腸や大腸等の消化系器官に効率よく感染していることがわかった。また、SRV-5接種ニホンザル血液から、ウイルスの再分離にも成功した。さらに、SRV-5は受容体として、ASCT2という中性アミノ酸トランスポーターを使用することを明らかにした。以上の結果から、生理学研究所委託施設で発生したニホンザル血小板減少症は SRV-5の単独感染によって引き起こされた疾患であること、SRV-5は ASCT2を受容体として細胞に感染すること、また消化系器官で顕著にウイルス RNAならびに DNAが検出されたことより、主に糞便を介して個体間の感染が広まった可能性が高いことが示唆された。  SRVは、アカゲザルやカニクイザル等の様々なマカク属のサルに感染していることが知られているが、SRV感染個体はまれに貧血や下痢、軽度の血小板減少症を起こす程度で、ほとんど無症候である。また、野生のニホンザルにおけるSRV感染例は報告されていない。生理学研究所委託施設では、アカゲザルやカニクイザルがニホンザルと一時的に隣接して飼育されていた。このことから、SRV-5はこれらのサルからニホンザルに伝播して血小板減少症を引き起こしたと推察される。本研究は、低病原性のレトロウイルスが、遺伝的に近縁ながら異種の個体に種間伝播した場合に、重篤な疫病を起こしうることを示した。本研究成果は、貴重な医療用実験動物であるニホンザルの保全に寄与し、また近年地球規模のアウトブレークが問題になっている新興ウイルス感染症の発生機構を明らかにする上で重要な知見である。  （論文審査の結果の要旨）  本論文は、生理学研究所委託施設で発生したニホンザル血小板減少症が、サルレトロウイルス 5型（SRV-5）の単独感染によって引き起こされたということを実験感染により証明したものである。血小板減少症を呈したニホンザルから分離した SRV-5、またそれを基に作出した感染性分子クローン由来のウイルスをそれぞれ 2頭のニホンザルに投与した結果、全個体において早期から高ウイルス血症がみられ、各 1頭において接種後 22日目に急激な血小板数の減少が観察された。すなわち、ニホンザル血小板減少症の原因ウイルスは SRV5であると結論づけた。また SRV-5は、中性アミノ酸トランスポーターASCT2を受容体とすること、消化系器官をはじめとした種々の組織に感染することを見出し、糞便を介して個体間感染が起きた可能性が高いことを示した。本疾病発生の経緯には、同施設内でニホンザルと一時的に隣接飼育された別種のマカク属サルからの種間伝播が考えられ、本来は低病原性のレトロウイルスが、遺伝的に近縁な霊長類種に新たに感染した場合に極めて重篤な疾病を引き起こしうることを明らかにした。  以上の研究は、貴重な医療実験用霊長類であるニホンザルの保全に貢献し、地球規模のアウトブレークが問題になっている新興ウイルス感染症の発生機構の解明にも寄与するところが大きい。  したがって、本論文は博士（医科学）の学位論文として価値あるものと認める。  なお、本学位授与申請者は、平成 31年2月4日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。  要旨公開可能日：      年   月   日 以降 

サルレトロウイルス5型のニホンザルへの感染実験解析

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/242425/1/yikak00097.pdf

サルレトロウイルス5型のニホンザルへの感染実験解析

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