京都大学0048新制・課程博士博士(医学)甲第21960号医博第4502号新制||医||1037(附属図書館)京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 平井 豊博, 教授 松原 和夫, 教授 湊谷 謙司学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Tanaka, Satona

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Title Protective Effects of Imatinib on Ischemia/Reperfusion Injuryin Rat Lung( Abstract_要旨 )Author(s)Tanaka, SatonaCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2019-05-23URL https://doi.org/10.14989/doctor.k21960Righthttps://www.annalsthoracicsurgery.org/article/S0003-4975(16)30523-9/fulltextType Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University京都大学 博士（  医  学） 氏 名     田 中 里 奈 論文題目 Protective Effects of Imatinib on Ischemia/Reperfusion Injury in Rat Lung （イマチニブの肺虚血再灌流障害に対する保護効果)  （論文内容の要旨） 背景 肺移植は末期呼吸不全患者に対する唯一の救命手段である。手術方法や周術期管理の進歩により手術成績は向上しているが、他臓器に比べると、その移植後の予後は不良である。肺移植後早期の合併症として、虚血再灌流障害が起因となる早期移植肺機能不全があるが、これは術後早期のみでなく、慢性期移植肺機能不全の危険因子であることも知られている。虚血再灌流障害の軽減は肺移植後急性期のみならず、長期予後の改善に寄与する可能性があるが、現在の治療は、適切な補液と人工呼吸管理、ステロイド投与や、体外循環など支持療法が中心で、新たな予防・治療法が望まれている。チロシンキナーゼ阻害剤である Imatinib は、慢性骨髄性白血病等の治療薬として用いられているが、Abl/Arg 阻害による血管内皮接着の維持を通じて、血管透過性を亢進させる種々の因子に対して、浮腫の形成を抑制する効果が報告された。そこで、Imatinibが肺虚血再灌流障害に対して保護効果を示すかを検討した。 方法 雄 Lewisラット（270 - 320 g）を、Sham群（n = 6）、Vehicle群（n = 7）、Imatinib群（n = 7）にわけ実験１を行った。Sham群は気管切開をおきヘパリンを投与、左開胸のみで 210分の人工呼吸管理を行った。Vehicle群、Imatinib群は、気管切開、ヘパリン投与後に左開胸を行い、左肺門を 90分クランプし肺を温虚血状態にした後にクランプを開放し、120分の再灌流を行った。Vehicle群、Imatinib群では、肺門クランプの 20分前に、溶媒のみ、Imatinib（50 mg/ml）をそれぞれ腹腔内に投与した。再灌流終了後、胸骨正中切開下に右肺門をクランプして動脈血ガス分析、肺機能検査を施行した。その後に左肺組織を採取し、湿乾重量比、組織学的評価を行った。また左肺組織ライセートを用い、Western blot 法で CrkL のリン酸化、VEカドヘリンを、ELISA法でサイトカイン、ケモカインを評価した。実験 2 として、実験 1 の Imatinib 群と同様に左肺門クランプと再灌流を行い（n = 7）、再灌流後に血漿を採取、その後血管内を生理食塩水でフラッシュして肺組織を採取し、高速液体クロマトグラフィーにてImatinibの血中濃度と肺組織中濃度を測定した。 結果 Vehicle群は、Sham群に対して平均、最大気道内圧の上昇、動的肺コンプライアンス、動脈血酸素分圧の低下を認めたが、Imatinib 群は、Vehicle 群に比べて各因子とも有意に改善していた（p < 0.05）。湿乾重量比も Vehicle群は、Sham 群に対して増加を認めたが、Imatinib 群で有意に低下していた（p < 0.05）。組織学的評価では、Imatinib 群では、Vehicle 群に比べ、血管周囲の浮腫形成と好中球浸潤の軽減を認めた。Imatinib群では、血管内皮接着分子である VEカドヘリンの発現が保たれており、Abl/Arg阻害の指標であるリン酸 化 CrkL の減少を認めた。また、Imatinib 群では抗炎症サイトカインであるIL-10が優位に上昇していた（p < 0.05）。本モデルにおいて、再灌流終了後には 28.3±6.9 μg/gの Imatinib左肺組織中濃度が得られ、肺組織中濃度は、血中濃度と正の相関がみられた（p < 0.01、r = 0.903）。 結論 腹腔内に投与した Imatinibは肺組織に到達し、ラット肺の温虚血再灌流障害に対して保護効果を発揮することを確認した。Imaitnibの血管透過性亢進の抑制効果、抗炎症効果によるものと考えられ、同剤は肺虚血再灌流障害の予防、治療に用いることができる可能性がある。  （論文審査結果の要旨） 肺移植において、虚血再灌流障害の軽減は、急性期のみならず、慢性期の移植肺機能不全の改善に寄与し、予後の改善に資する可能性がある。その一方で、肺虚血再灌流障害の治療は、支持療法が中心で新たな予防や治療法が望まれている。Imatinibは、血管透過性亢進を惹起する因子に対し、Abl/Arg阻害による血管内皮機能の維持を通じて浮腫の形成を抑制する効果が報告されている。本研究は、肺の虚血再灌流障害モデルにおいても、Imatinibは肺水腫形成を抑制し、障害を緩和するという仮説のもとに行った。ラットを左開胸後、左肺門を 90分遮断した後に開放して 120分の再灌流を行った。左肺門遮断20分前に Imatinibもしくはその溶媒を腹腔内投与した。気道内圧や動肺コンプライアンス、動脈血酸素分圧、組織学的所見は Imatinib 投与により虚血再灌流障害の影響を抑制した。また、Imatinib投与によりVEカドヘリン発現の維持、IL-10の上昇を認めた。同モデルにおける再灌流後の Imatinib 血中濃度と肺組織中濃度の測定より、同剤が肺に到達して機能していることも確認された。結論として、Imatinibは肺の虚血再灌流障害において浮腫形成の抑制と抗炎症効果を示し、障害を緩和すると考えられた。  以上の研究は「肺の虚血再灌流障害」の治療法の開発に貢献するところが多い。 したがって、本論文は博士(医学)の学位論文として価値あるものと認める。 なお、本学位授与申請者は、平成３１年４月２４日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。  要旨公開可能日：      年   月   日 以降 

イマチニブの肺虚血再灌流障害に対する保護効果

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/242911/1/yigak04502.pdf

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