長野県伊那市長谷・高遠区域における葬儀の変化

Abstract

本稿は,長野県伊那市長谷・高遠区域を事例に,社会変化に伴う葬祭方法の変遷について明らかにした.1970年代後半に土葬から火葬へと葬祭方法の転換が始まり,1980年後半までには火葬が一般化した.1990年以降になると,葬祭の場は自宅から公民館へと移転した.こうした葬祭の場が私的な場から公的な場へと変化したことで住民の葬儀に対する負担を軽減した.2000年代になると葬祭業者が参入するようになり,葬儀は地域の手を離れ,企業が提供する場が利用されるようになった.葬祭業者の参入によって地域で維持できなくなっていた葬儀は継続が可能となった.一方,墓地の立地にみられるような地縁のつながりは伝統的に重視されており,現在でも隣組組織の存在はなお住民にとって大きかった.高齢化が進展し若年層の流出も激しい山間地域にとって,こういった地縁は生活を支える上で重要な役割を果たしており,コミュニティで暮らすための基盤として重視されるべきものである

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