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シェーグレン ショウコウグン シッカン モデル マウス ニオケル エストロジェン ノ ヤクワリ
Authors
Naozumi Ishimaru
Publication date
11 June 2018
Publisher
Abstract
自己免疫疾患の発症に性差が存在することはよく知られているが、その詳細なメカニズ ムに関しては全く不明である。シェーグレン症候群疾患モデルNFS/sldマウスにおいても 雌優位に自己免疫性唾液腺炎・涙腺炎を発症することから、本研究は本モデルマウスにお ける自己免疫病変の発症におけるエストロジェンの役割を詳細に解析し、性差のメカニズ ムを解明することを目的とする。 NFS/sld雌マウスに生後3日目に胸腺を摘出(Tx) した後、卵巣摘出(Ovx)を施し、自 己免疫病変の動態、免疫調節系への影響を観察し、さらに、Tx+Ovxマウスへのエストロ ジェン,そのアンタゴニスト(タモキシフェン)やテストステロンの投与による病態の変 動を検討した。また、in vivo及びin vitroにおけるエフェクター細胞のエストロジェンに 対する反応性・エストロジェンレセプターの発現について検索した。加えて、エストロジ ェンが標的臓器に及ぼす影響を腺組織破壊という観点から解析した。 シェーグレン症候群疾患モデルNFS/sldマウスにおいて、Ovxを施すことにより、自己免 疫病変はさらに増悪することが判明した。その病変局所においてCD4陽性T細胞の浸潤が 主体を成し、各種炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-4,IL-7,TNF-α)の産生亢進が認められ た。Tx+Ovxによる変化として、T細胞系ではTxマウスに比較して脾細胞中のCD8陽性細胞 の有意な低下が認められ、B細胞系では唾液腺特異的な自己抗原(α-fodrin)に対する自己抗 体の産生が亢進していた。また、Tx+Ovxによって増悪した自己免疫病変はエストロジェ ン投与により回復し、エストロジェンが自己反応性T細胞の活性化を抑制する作用のある ことが判明した。そのメカニズムの一つとして、in vitroにおいてCD8陽性細胞がエストロ ジェンに対して有意に反応し、エストロジェンレセプターの強い発現が認められたことか ら、レセプターを介したCD8陽性細胞のサプレッサー機能をエストロジェンが制御してい る可能性が示唆された。さらに、adoptive transfer によりCD4陽性細胞が直接病態形成を調 節することが判明した。一方、標的臓器である唾液腺の組織破壊のメカニズムにFas/Fas Ligand(FasL)を介したアポトーシスが関与し、エストロジェンは唾液腺細胞のFas発現及び 浸潤Tリンパ球のFasL発現の両者に影響を与えている可能性が示唆された。本実験系から 得られた結果はヒトの自己免疫疾患発症における性差のメカニズムを解明する上で有用で あり、シェーグレン症候群の病因に基づいた治療法の開発に重要な知見をもたらすものと 考えられた
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