取得学位：博士(理学)，学位授与番号：博乙第143号，学位授与年月日：平成9年9月30日,学位授与年：199

Yanase, Nobuyuki

柳瀬 信之

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柳瀬信之氏名生年月日本籍学位の種類学位記番号学位授与の日付学位授与の要件茨城県博士（理学）博乙第143号平成9年９月30曰論文博士（学位規則第4条第２項）クンガラウラン鉱床におけるウラン系列核種の移行挙動に関するナチュラルアナログ研究（主査）山本政儀（副査）坂本浩，小村和久，中西孝，上野馨学位授与の題目論文審査委員学位論文要旨Naturalanaloguestudyisconside肥ｄｔｏｂｅｕｓｅｆＵｌｆＯｒｍｉｎｉｍｉｚｉｎｇａｎｕｎｃｅrtaintyoffUmreestimationofradionucUdemi厚ationmageospherebyatransportmodelontheviewpointofthesafelyassessmentofhighlevelradioactivewastedisposal、TT1edistributionsanddisequilibriaofuramumseriesradionuchdesmrockandgroundwaberwe肥mvesUgaLedunderthemternationalnaturalanaloguepmjectsusmgtheKoongalTauraniumdeposiLAustraliELItwasrevealedthaturanmmmigratedtothesouth-eastdilcctionduringthefOmationofsecondaryoredeposit，ｂｕｔｍｉ印aLessouthwardattheplesenttime，ａｎｄｍｏｓｔｏｆｕｒａｍｕｍｍｒｏｃｋｗａｓｆＯｕｎｄｔｏｂeassociatedwithcrystaUineironmneralsmtlleweatheredzone・ChemicalfOmofuranmmmgroundwaterwasestilnaLedtobeuranylcarboMｅｕｓｍｇｔｈｅｒｅｓｕｌｔｏｆ印oundwaberchemistry・Theareasofuraniulnleachmganddepositionwithin0.35町weredetenninedusmgthe23o、l/238UactivityratiomrockRaLeofuraniumtransportationawayfiPomtheoreregionduringl-3Myaftertheconmencementofuraniummi厚ationbyweatheringwasestimatedtobeaboutO2-0.5％/10000ｙ・TheseresultsarebelievedtobeusefUlfOrlheestimationofmi図ationbehavioroftransuramumeleｍｅ､tsmaradioactivewasterepository,andthevalidationofradionuclidetransportmodeL地層中に埋設処分した高レベル放射`性廃棄物から漏洩する放射性核種が、地質学的時間スケールで岩石中を移動し、生活環境へ到達することにより生じる人間への放射線影響の評価のためには、地層中で起きる地質学的時間スケールの放射性核種の移行挙動を解明し、移行モデルによる予測を行う必要がある。実験室での模擬実験により移行モデル式及びパラメータ値が得られてきたが、短期間の実験結果を用いた予測では、予測が長期間になるにつれて不確実`性が増大する。そこで、将来の長期予測の不確実性を低減化するためのモデルの検証とも関連して、地層中で過去に起こった地質学的時間スケールにおける核種の移行挙動を解明するナチュラルアナログ研究の必要`性がますます高まっている。これまでに、特にウラン－２３０－と超ウラン元素の化学的類似性から、ウラン鉱床を天然の放射性廃棄物類似体と見なしていくつかの研究が実施されてきたが、異なる地質条件下の種々の鉱床でのざらなる研究が求められている。著者はオーストラリアのクンガラウラン鉱床を用いた国際プロジェクトであるARAp(AUigatorRiversAnalogueProject)及びASARR(AnalogueStudymtheA11igatorRiversRegion)に参加した。クンガラ鉱床は他のプロジェクトの実験サイトに比べ、廃棄物の評価期間に近い百万年以内のウランの移行が顕著に起きているため、移行モデルの検証に最適な場所である。しかも、鉱床は還元』性の非風化帯から酸化性の地表まで分布しているため、異なった酸化還元条件の地層におけるウランの移行挙動が研究できる。ARAＰプロジェクトの研究項目は、１）核種移行のモデル化、２）クンガラにおける地質水文学、３）ウラン・トリウム系列核種の放射非平衡研究、４）コロイドと地下水研究、５）核分裂生成物に関する研究、６）超ウラン元素に関する研究であった。著者は、３）の中で主として岩石及び地下水中のウラン系列核種の分布と放射非平衡の研究をオーストラリアの研究者と共同で行い、１）に寄与した。その後、ＡＳＡＲＲプロジェクトにおいて、ウラン系列核種の分布と放射非平衡の詳細な研究を行い安全評価に用いる移行モデルの検証に寄与した。ウラン系列核種の地層中での移行挙動を研究する上では、それらの核種の岩石及び地下水中の分布に関するデータが必要である。また、移行モデルの検証を行うためにはできるだけ多くの分布に関するデータが必要である。そこで、既存の化学分離を併用したα線スペクトロメトリーに加えて、簡便迅速な測定法として、Ｇｅ検出器を用いた低エネルギーγ線スペクトロメトリーの適用を検討した。放射能濃度の比較的高いウラン鉱床の試料であることを考慮して、試料の厚みを薄くすることにより、自己吸収の補正なしで精度良〈多核種を同時に定量することを可能にした。また、放射性核種の移行挙動に影響する岩石中の存在形態を解明するために、５種類の抽出試薬で特定の鉱物相を溶解する選択的抽出法を、鉱物と試薬の関係、再現性及び再吸着の観点から検討し、ウラン及びトリウムへ適用可能にした。岩石中には過去から現在までに起きた放射性核種の移行の履歴が残っているので、岩石中の放射性核種の水平分布と深き方向の分布を調べ、放射`性核種が過去に移動した方向と移行率を推定した。四8Ｕの放射能濃度と羽oTh/238Ｕ放射能比の水平分布から、風化により溶けだしたウランは一次鉱床の南東方向に移動し二次鉱床を形成しているが、一部は南方向に移動していることが明らかとなった。Ｆｉｇ．２に示す鉱床の南東方向の断面の238Ｕの分布から、二次鉱床のウランの大部分は約，50ｍ下流までの範囲に存在し、深き方向では風化帯の５～20ｍに分布していた。同じ断面の"０ｍ/四sＵ放射能比から、二次鉱床の上流側と下流側及び－次鉱床から上流側でウランは溶出し、－次鉱床の下流側及び二次鉱床の下部の深き１８～２４ｍでウランは沈着していた。二次鉱床下部のウランの沈着が起こっている遷移帯では、地下水の羽4U/四8Ｕ放射能比を反映して岩石の234U/238Ｕ放射能比は’より小きくなっているが、他の場所では，に近かった。Fig.２の一次鉱床の濃度から、風化が始まる前に地表から２８ｍまでの深きに存在したウラン量を推定し、現在の二次鉱床のウラン量と比較したところ、風化が始まってから，～３百万年経った現在、もと一次鉱床上部に存在したと予想きれるウラン量の約－２３１－半分が二次鉱床に残っており、移行率に換算すると0.2～０５％/１万年と推定できた。一方一次鉱床下部（還元性）では、ウランの下流方向への移行は認められなかった。岩石中のウランの存在形態を明らかにするために、選択的抽出法を適用した。その結果、還元性の一次鉱床では、ＴＡＯ試薬で抽出きれるウラニルケイ酸塩であるスクロドウスカイト（Ｍｇ(UO2)2(SiO30H)2.5HzO）などのウラン二次鉱物、及び６Ｍ塩酸で抽出きれるウラニナイト（UO2）などのウラン酸化物としてウランが大部分存在し、他方、風化帯の二次鉱床（酸化性）では、Fig.３に示すように結晶質鉄鉱物を抽出する①Ｂ試薬抽出相に42～86％、鉱物表面に吸着しているウランが11～41％であることが明らかとなった。残査鉱物相にはｚ３４Ｕの濃縮が起こっており、その原因として、ウランに富む鉄鉱物から238Ｕの壊変に伴うα反跳により近接した残査鉱物にz34Thが入り込み、その羽4Ｔｈは壊変により234Ｕとなるが、風化帯では残査鉱物が鉄鉱物に覆われているため、鉄鉱物がバリアーとなって残査鉱物へ入り込んだZ34Uが地下水へ出にくくなっているためと結論づけた。全岩分析で得られた234U/238Ｕ放射能比は、ほとんどの試料で放射平衡である１に近い値を示したが、選択的抽出法の適用により微視的には放射非平衡が起こっていることが明らかとなった。地層中の放射性核種の移行モデルを検証するためには、地下水中の放射性核種の移動方向、化学形、移行速度などを知る必要がある。そこで、地下水の化学的性質とウラン系列核種の分布を測定した。鉱床から南東方向に約200ｍの距離まで、地下水中にバックグラウンドより高い濃度レベルのウランが存在し、二次鉱床の分布と対応していることが分かった。しかし、地下水中ウラン系列核種の水平分布から、現在の地下水の流れは南方向であり、地質学的時間スケールにおける地下水流方向の変化の様子が明らかとなった。地下水の化学的性質から、ウランは炭酸ウラニル錯体であると推定できた。鉱床からの地下水の流出地点の地下水中ウラン濃度５ｍｇ/m3から、地下水によるウランの移行量を計算した結果、１年間に７９のウランが鉱床から流出していると推定できた。地下水が過去１～３百万年の間同じウラン濃度で流れていたとすれば、９８～9996のウランが残っていることになるが、この結果は岩石のウラン分布から推定した二次鉱床のウラン残存量50％より多い値であった。二次鉱床の南方向に移行し蓄積しているウラン量を考慮すれば、岩石のデータからの推定値50％はより大きくなり地下水のデータからの推定値に近くなり移行率も小きくなると推論できる。地下水の四4U/2,8Ｕ放射能比は、Fig.４に示すように２０ｍより浅い風化帯では１より小きく、３０ｍより深い非風化帯では１より大きく、234U/238Ｕ放射能比が１より大きいか小きいかは試料を採取した深き、すなわち岩石の風化の度合いと関係していることが分かった。このことと、地下水の流出方向の下流に位置するＰH88,38～４０ｍの234U/酒8Ｕ放射能比が１より小きいことから、この付近では風化が深くまで進んでおり、鉱床からの地下水の出口になっていると推論できた。以上の研究により、クンガラウラン鉱床では、過去に一次鉱床上部から南東方向に移動したウランは二次鉱床を形成したが、現在その一部は南方向へ移動していることが、また、ウランは、岩石中では結晶質鉄鉱物に取り込まれた形態で、地下水中ではウラニル炭酸塩錯体－２３２－であった。二次鉱床形成時のウランの移行率は0.2～0.5％/１万年と推定できたが、二次鉱床の南方向のウラン残存量を考慮すれば移行率はより小きくなると推論できる。このように本研究で得た、クンガラ鉱床におけるウランの移行挙動情報と、ウラン系列核種の水平及び深き方向の濃度分布の情報は、ウランの長期間の地層中における移行モデル及びモデルパラメータの検証と、ウランと化学的性質が類似している超ウラン元素の長期間の地層中での移行挙動の類推を可能とし、高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全性評価に資すると考える。】rＩｌｌｈｎｌＰ皿ⅢＥ｝二己のロ０ＵＵＨ８ｂ３【】３４、「Fig.１CrosssectionoftheKoongarraoredeposit．Fig2Contourmapof238Uactivity(Bq/g)forrockalongthesouth-eastcrosssectionClosedcirclesandsolidlmesshowsamplmgpointsanddlillholes,respectively．1.61０６1.4５４３（Ｕ（Ｕ〔Ｕ１，司ニヘワロ）ロの一○ｍ』貢の。□目８ｃｏｉＢ……し…………;－－２１８０。一一凸二）一シ一一◎・コロミコマの“；ｑｏ８ｉｏｄ:gのＦｉ－－量見ｏｉ２ｔｆｏｇｃei-o-8i鍵-…６●：1０２ Ｊ：□ＤＤＨ58,9.12ＤＤＨ58,18.2ＤＤＨ５８，２１２ＤＤＨ58,24.3Drillholeanddepth(、） 0.6 Weathered ＝「＿【０１０２０３０４０５０６０７０８０Depth(、）Fig4Relationshipbetween234U/238Uactivityratioanddepthofgroundwatercollected．Fig.３DistributionofuraniuminextractedphasesfOrrocksamplesatdifferentdepthsmtheweatheredzone．－２３３－、｡●●●●●●●~●~￣「●●●●■■■■００■q□､●■●：．ｕ・、-.-■○●■００■□０●ＤＣＰ●５０９００００００．■●｜□、●ロロ●０Ｏ０Ｃ０●●●．●■◆ＤＤＢ●■■●●①●や●⑤●●句●●●●□Ｉ・■一■００００．■□■■・・・・０》０．二■・・・？■Ｄ０ｂ０Ｏ－■・ＤＤＤＰ０■一。・０００６６．０．６６．（・ＩＯＣ０００．．．．９．０・・０．千・・Ｃ０ＯＧ０・Ｏ０Ｃ６Ｄ０十・■■ＰＧ＄●●。６００００●ＯＧ００二■・Ｃ６０●ｑ甲００：ＢＣ００６００。。●６００６００ＱＣ００００●ＯＧ●□■００■■□●・●■■●００■●）□０ＣＤ●●●０９□●□０ｄｏ●８》８》■■■００６■・■■、■■００■・》・■■■Ｏ００Ｂ０■０５０■Ｏ０００ＢＢＤ００■、□０．，□０，』ＣＯ■・ＤＢ００叩］［”・Ｂｂｂ（０．．，●ＤＰ□・ＣＯＤ■、。‐；；…；．…，ｏ：…．○◆の■■●●￣＝⑤●ｐ■⑤Ｆ￣●｡■￣■￣￣I■￣ｏ○○。ＧＱＰ００一・Ｌ・印▲･Ｉ■己８、亀。。○匂■ＩＯＣ●００●ＯＧ●●００・●ＣＵｏＣ０Ｏ０Ｏ０Ｃ０Ｏ００ＯＯ０，，０００００．０００●●■中…………。．④9１恥－．．０．．…Ｉ０Ｐ０・Ｄ００ＢＤ００００Ｄ０ＦＤ００００００■ＯＱ０００００Ｌ０Ｂ０ＤＤＤ０Ｄ０６０００．００●・００．．００◇００００．０．●●。●●ＦｃＣ■合凹白●●●●●一一二J.;､蕊.J1係Ｐ．。ｉｉｉｉｏｉｏｌ！Tran-sition Unweathered学位論文審査結果の要旨平成8年４月より主査が論文作成の指導に当り，平成8年１０月２７曰に論文が提出されてからは審査委員全員が個別に学位論文および学位審査書類を検討した。平成9年４月８日に第１回の合議を行ない，さらに同年７月３日の口頭発表後の第２回審査会において最終審査を行なった。高レベル放射性廃棄物の処分は国際的な問題であり，原子力発電を行なっている諸国では，高レベル放射`性廃棄物を地下深部の地層中に処分し，将来にわたって生物圏から安全に隔離しようという地層処分の考え方に到達している。このような処分法の安全性を評価するためには，短期的な室内実験や地下実験施設での核種移行実験に加えて，天然バリアでの長期にわたる核種移行の研究を行う必要がある。本論文は，約16億年前に形成されたオーストラリアのクンガラウラン鉱床を天然の廃棄物類似体（ナチュラルアナログ）と見なして，放射`性物質であるウランの安定性を評価するために，ウラン及びトリウム系列核種の簡便な迅速測定法を考案し，岩石中のウランの存在状態，岩石および地下水中の放射性核種の測定により水平・鉛直方向の分布を検討し，長期にわたるウランの地球化学的挙動の基礎付けを行なったものである。本論文で得られた成果は大別して次の3点よりなる。（１）Ｇｅ検出器を用いた低エネルギーＹ線スペクトロメトリーにおいて,試料の厚みを薄くすることにより自己吸収の補正なしで精度よく多核種を同時定量する方法を考案し，さらに，鉱物と試薬の関係，再現性の観点から5種類の抽出試薬で特定の鉱物相を溶解する選択的抽出法を詳細に検討しウランに適用して存在状態を明かにした。（２）鉱床の水平・鉛直方向から採取した岩石，約200試料の放射性核種濃度の測定からまずウラン鉱床の全体像を科学的に描像し，風化が始まってから100-300万年経た現在，一次鉱床上部の酸化帯のウランは一次鉱床の南東方向に0.2-0.5％／1万年と極めて遅い移行率で移動して二次鉱床を形成したこと，ここでの鉄鉱物の存在がウランの遅延に大きく関与していることを明かにした。一方，還元帯のウランは全く移動していないことを見出し，ここではウランの大部分がウラニルケイ酸塩などのウラン二次鉱物および酸化物として存在していることを明かにした。（３）地下水の化学組成やウラン系列核種濃度の測定から，ウランは炭酸ウラニル錯体として安定に存在すること，さらにウラン系列核種の放射非平衡関係より現在の地下水流方向が南方向に変化したこと，地下水の2:MU/238U比が岩石の風化度合いの指標になること等を見出した。以上，本論文は，クンガラ鉱床を用いたナチュラルアナログ研究の国際プロジェクトの一員として申請者自身が分担して得た成果をまとめたものであり，ウランの長期間の地層中における移行モデルとパラメータの検証，さらにウランと化学的性質が類似している超ウラン元素の長期間の地層中での移行挙動の推定に大きく貢献するものである。その内容は，ウランの地球化学の基礎的視点からみて一般性に富む多くの知見を得ており，博士（理学）の学位を授与するに充分に相当するものと認める。-２３４－

クンガラウラン鉱床におけるウラン系列核種の移行挙動に関するナチュラルアナログ研究

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クンガラウラン鉱床におけるウラン系列核種の移行挙動に関するナチュラルアナログ研究

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