13301甲第4161号博士（工学）金沢大学博士論文本文Ful

Hashimoto Toru

橋本 徹

Kanazawa University Repository for Academic Resources

北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートの性能評価と実用化に関する研究

13301甲第4161号博士（工学）金沢大学博士論文要旨Abstract 

 学 位 論 文 要 旨  北陸産分級フライアッシュを使用した コンクリートの性能評価と実用化に関する研究  A Study on Performance Assessment and Practical Realization of   the Concrete Using Classified Fine Fly Ash in the Hokuriku District           金沢大学大学院自然科学研究科 環境科学専攻 環境創成講座     学  籍  番  号 1323142012   氏      名 橋 本  徹  主任指導教員名 鳥居 和之    Abstract  In the Hokuriku District, a large number of concrete structures have been suffering from a combined damage caused by alkali-silica-reaction (ASR) and/or the chloride-induced corrosion of reinforced concrete structure. The problem-solving approaches have considered both, the repair and retrofitting for deteriorated structures in one hand, and the use of   preventive countermeasures on the other hand. In the latter case, the standard use of fly ash cement with the replacement of more than 15% has been now recommended in all ready-mixed concrete mixtures from the economical and environmental point of view in this region. In addition, this standard use is effective for both “Local Production for Local Consumption” and “Energy Security in the Hokuriku District”.  Recently, the production technique of very fine fly ash around 7 microns at average particle size has been successfully established at the Nanao-Ohta coal burning power station and Tsuruga coal burning power station in Hokuriku electric power company.  It is enable to produce a highly-durable concrete, which is also related to produce a environmentally- friendly concrete matching with the regional demand.  Accordingly, a joint-collaborative industry-academia-government research committee, which is organized by the electric power company, the industrial association of ready-mixed concrete companies, the nation and local government and the universities, has been set up in January 2011.  This study multilaterally verified that whether the concrete using classified fine fly ash in the Hokuriku District should be desterilized in the real world or not, as part of activities of this committee. In particular, this study verified the quality of classified fine fly ash in the Hokuriku District, the manufacturing quality of the concrete using this fly ash, the durability of the concrete using this fly ash, and the utilization of real structures.  As a results, the quality of classified fine fly ash in the Hokuriku District was better than   traditional one, both the manufacturing quality and the durability of the concrete using this fly ash were better than the concrete used widely, and the utilization of real structures was no problem on workability and quality. In conclusion, this study confirmed that the concrete using classified fine fly ash in the Hokuriku District should be desterilized in the real world，on the base of these verification results.            1. 研究の背景と目的 北陸地方が抱える深刻な ASR 問題を考慮すると，北陸地方では，現在の全国一律の ASR 抑制対策ではこの地域の ASR の抑制は困難であり，コンクリートへの混合セメントなどの使用を標準化することが必要である。また，北陸地方にはフライアッシュを産出する石炭火力発電所はあるが，高炉スラグ微粉末を産出する製鉄所はないという「地産地消の観点」，東日本大震災以降の北陸地方のエネルギー事情から，石炭火力発電の運転に伴い発生する石炭灰の処理などが今まで以上に切迫した課題となるという「エネルギーセキュリテイーの観点」，および，金沢大学と北陸電力とが共同で実施した基礎研究の結果，北陸産のフライアッシュをコンクリートに混和することで，この地域のコンクリート構造物の主たる劣化原因である ASR と塩害の両方を抑制できるという「コンクリート構造物の長寿命化の観点」の 3 つの観点から，図－1.1 に示すように，「北陸地方のコンクリートに，フライアッシュセメントまたは混和材としてのフライアッシュの使用を標準化する」という対策は，この地域にとって極めて有効な対策であるといえる。この対策を実現させるためには，電力会社をはじめ，国・地方自治体，生コンクリート工業組合などの理解と協力が不可欠であり，関係者が一体となり，地域の問題を地域で解決するためのプロジェクトとして，産学官連携による「北陸地方におけるコンクリートへのフライアッシュの有効利用促進検討委員会（委員長：金沢大学 鳥居教授）」（以下，フライアッシュ委員会）が 2011 年（平成 23 年）1 月に設立された。 本研究の目的は，このフライアッシュ委員会の活動の一環として，フライアッシュ委員会で蓄積された膨大なデータによる多面的な検証を行うことである。具体的には，北陸産分級フライアッシュの品質の検証，このフライアッシュを使用したコンクリートの製造品質および耐久性の検証，そして，このフライアッシュを使用したコンクリートで施工した実構造物による検証，および，これらの検証結果を踏まえた総合評価である。                図－1.1 北陸の地域特性を反映した対策のイメージ  ・北陸地方にはフライアッシュを産出する石炭火力発電所はあるが、高炉スラグ微粉末を産出する製鉄所はない。・従って、フライアッシュの活用は地産地消に繋がる。北陸地方のコンクリートに、フライアッシュセメントまたは混和材としてのフライアッシュの使用を標準化北陸の地域特性【地産地消の観点】【エネルギーセキュリテイーの観点】・東日本大震災以降の北陸地方のエネルギー事情から、石炭火力発電の運転に伴い発生する石炭灰の処理などが今まで以上に切迫した課題となっている。【ｺﾝｸﾘｰﾄ構造物の長寿命化の観点】・基礎研究の結果、北陸産のフライアッシュを混和することで、この地域のｺﾝｸﾘｰﾄ構造物の主たる劣化原因であるASRと塩害の両方を抑制できる。2. 北陸産分級フライアッシュの品質の検証 北陸産分級フライアッシュの製造のポイントは，「品質管理体制の強化」と「分級装置の導入」の 2 つの対策である。この対策が，コンクリート用フライアッシュの JIS 規格（JIS A6201）にどのように反映されているのか，七尾大田火力発電所と敦賀火力発電所の品質管理データの分析を行うとともに，炭種や燃焼条件が同じになるように，同一サンプルを用いた分級効果確認試験を実施し，これらの結果を総合的に評価することにより，北陸産分級フライアッシュの品質を検証した。 その結果，北陸産分級フライアッシュの品質は，フレッシュコンクリートの流動性や硬化コンクリートの耐久性に関わる粉末度，密度，フロー値比，活性度指数の 4 項目において，明確な品質の向上が認められ，かつ，その他の指標へも悪影響がないことを確認できた。従って，北陸産分級フライアッシュは，「品質管理体制の強化」と「分級装置の導入」という 2 つの対策により，従来よりも高品質なフライアッシュになっていることを検証できた。また，導入した分級装置による分級効果は，粉末度（ブレーン比表面積）をフライアッシュ原粉の値より 1,000cm2/g 程度高くすることに加え，物理的性質の変化として，平均粒径が分級前の約 1/3 と細かく均一となることにより，密度やフロー値比を向上させることや，化学的性質の変化として，分級前より二酸化けい素などのガラス質成分が増加することにより，活性度指数を向上させる効果があった。   3. 北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートの製造品質の検証 実際の生コンクリート工場において，北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートの配合を室内試験および実機試験により決定し，この配合を用いたコンクリートが問題なく製造できることを確認した。また，施工性や強度発現性の観点から，北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートの製造品質が，汎用コンクリート（普通セメントを使用したコンクリートおよび高炉セメントを使用したコンクリート）に対し同等以上であるかどうかを検証した。さらに，強度発現性については，北陸産分級フライアッシュとコンクリートの強度発現との関係を調べるため，W/C を一定とした室内試験を実施し，北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートの強度改善メカニズムの解明を試みた。 その結果，北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートの製造品質は，施工性や強度発現性の観点から，Ｎに対する初期強度発現を除いて，汎用コンクリートよりも品質的に同等以上であることを検証できた。なお，初期の強度発現は，Ｎより小さいが，型枠の取り外し時期などの実質的な問題がない範囲であった。また，この強度発現は，フライアッシュのポゾラン反応性に関して，従来からいわれているコンクリート内部組織の緻密化だけでなく，粒径 10μm 以下の北陸産分級フライアッシュがセメントペーストとともに粗骨材界面を十分に充填することにより，材齢 7 日以降の長期にわたり，ITZ が改善される効果もあることが示唆された。一方，北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートは，スランプロスや空気量ロスが経過 1 時間以降に大きくなる傾向があるため，経過 1 時間以内での施工が推奨された。   4. 北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートの耐久性の検証 コンクリート構造物の耐久性を著しく低下させる有害な「ひび割れ」を誘発する要因として，収縮性能，水和発熱性能，ASR 抑制性能，遮塩性能，中性化抑制性能，凍害抵抗性能の 6 項目により，汎用コンクリート（普通セメントを使用したコンクリートおよび高炉セメントを使用したコンクリート）との各種比較試験（室内試験）を実施し，北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートの耐久性が，汎用コンクリートに比べ，同等以上であるかどうかを検証した。 その結果，表－4.1 に示すように，北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートの耐久性は，収縮性能，水和発熱性能，ASR 抑制性能，遮塩性能の 4 項目に対し品質的に優れ，中性化抑制性能，凍害抵抗性能の 2 項目に対し品質的に同等であることを確認できた。従って，北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートは，汎用コンクリートに比べ，同等以上の耐久性および使用性を有することを検証できた。    比較項目 試験項目 性能評価 初期段階の「ひび割れ」に関わる項目 (1)収縮抑制性能 ・乾燥収縮試験 ・品質的に優れている ・自己収縮試験 (2)水和発熱性能 ・簡易断熱上昇試験 ・品質的に優れている ・完全断熱上昇試験 劣化機構の過程で「ひび割れ」に関わる項目 (3)ASR抑制性能 ・モルタルバー法 （JIS A1146） ・品質的に優れている ・モルタルバー法 （デンマーク法） (4)遮塩性能 ・塩化物イオン浸透深さ ・品質的に優れている ・電気泳動試験 ・鉄筋腐食試験 (5)中性化抑制性能 ・中性化深さ測定 ・品質的に同等 (6)凍害抵抗性能 ・凍結融解試験 ・品質的に同等     表－4.1 耐久性に関しての汎用コンクリートとの比較結果 5. 北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートの実構造物による検証 富山県，石川県，福井県および国交省の「試験施工」において，汎用コンクリートとの実構造物での比較試験を実施し，その施工性，強度発現性および耐久性（初期ひび割れ，水和発熱性能）の観点から，北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートの実構造物による検証を行った。また，様々な構造物や施工時期をとおして，北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートでの「モデル工事」を実施し，試験施工と同様の観点から，北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートの実構造物への適用に問題がないかどうかを検証した。 その結果，北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートは，その施工性，強度発現性および耐久性の観点から，実構造物への適用に問題がないことを検証できた。   6. 結 論 北陸の地域特性を踏まえ，「地産地消」，「エネルギーセキュリティー」および「コンクリート構造物の長寿命化」の 3 つの観点から，「北陸地方のコンクリートにフライアッシュの活用を標準化するべきである」との理念にもとづき，北陸地方において設立されたフライアッシュ委員会の活動の一環として，「北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートを実社会において活用すべきかどうか」について多面的な検証を実施した。検証の手順としては，まず，北陸産分級フライアッシュの品質が，その製造の分級過程などにより物理的・化学的性質が改善され，コンクリート品質に対し，従来よりも高品質になっていることを検証した。次に，このフライアッシュを使用したコンクリートが，実際の生コンクリート工場において製造ができ，その製造品質が汎用コンクリートに対し同等以上であることを検証した。さらに，このフライアッシュを使用したコンクリートが，耐久性に関する各種比較試験において，汎用コンクリートに対し同等以上であることを検証した。最後に，このフライアッシュを使用したコンクリートを様々な種類の実構造物に適用し，施工面・品質面において問題がないことを検証した。  以上の検証結果を踏まえ，本研究では，北陸産分級フライアッシュの品質，このフライアッシュを使用したコンクリートの製造品質，耐久性および実構造物への適用性の観点から，「北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートを実社会において活用すべきである」との結論を得た。   

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