Abstract

(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)では、2002年から伊豆・小笠原・マリアナ島弧において、大陸地殻の生成過程を明らかにすることを目的に構造調査を進め、現在の島弧地殻のボリュームより多くの玄武岩マグマが必要で島弧地殻を生成する過程でマフィックな島弧地殻の一部をマントル内に戻していること(Takahashi et al., 2007, 2008; Tatsumi et al., 2008)、火山フロントと背弧側の地殻の厚さ分布には相関があり過去のリフティングが検出されたこと(Kodaira et al., 2009)などがわかってきた。前弧域の地殻に関しては、厚い地殻と薄い地殻が存在すること(Takahashi et al., 2011)、地磁気異常から島弧的な構造があること(Yamazaki and Yuasa, 1998)がわかっているが、地殻構造から実証されていなかった。前弧域の地殻構造を求め、地殻進化の影響をどの程度受けているのか、前弧域の島弧成長を明らかにするために、(独)海洋研究開発機構の深海調査船「かいれい」を用いて人工地震探査を行った。 地震探査の測線は、新黒瀬からスミス海脚、第二東鳥島海丘、大町海山を通って、小笠原トラフに至る。得られた速度構造から前弧域は25km程度の地殻の厚い部分と10~15km程度の薄い部分があることが明らかになった。厚い地殻は、北緯32.5度付近、スミス海脚、第二東鳥島海丘、大町海山の下に分布する。新黒瀬側は厚い地殻を持たない。大町海山の内部には異常に厚い下部地殻が分布する。薄い地殻が分布するところでは、堆積層が厚く地殻の厚さの半分近くを占める。大町海山以外の地殻が厚く分布するところでは、P波速度6km/sの速度コンターが上に凸、7km/sの速度コンターが下に凸の形状を示す。火山フロントに沿った地殻構造では、むしろ6km/s以下の速度を持つ層が厚いことが示されている(Kodaira et al., 2007)。これは、前弧域下の島弧地殻は、火山フロント下と比較して未分化な物質を多く含むことを示唆おり、過去の掘削結果とも整合する(e.g., Taylor, 1992)。前弧海盆下の島弧地殻の分布は、地磁気異常の空間分布(Yamazaki and Yuasa, 1998)とよく合致する。新黒瀬周辺で見られる地磁気異常は、本研究から明らかになった地殻が薄く地殻全体が盛り上がっている形状と合致する。伊豆小笠原島弧の本州弧への衝突が新黒瀬の浅海部を作っているものと示唆される。SCG66-03発表要旨 / 日本地球惑星科学連合2012年大会(2012年5月20日~5月25日, 幕張メッセ国際会議場) / 日本惑星科学連合の許諾に基づき本文ファイルを掲

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