京都大学0048新制・課程博士博士(理学)甲第20891号理博第4343号新制||理||1623(附属図書館)京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻(主査)講師 市川 正敏, 教授 山本 潤, 教授 前野 悦輝学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDGA

Ohmura, Takuya

京都大学0048新制・課程博士博士(理学)甲第20891号理博第4343号新制||理||1623(附属図書館)京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻(主査)講師 市川 正敏, 教授 山本 潤, 教授 前野 悦輝学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDFA

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TitleNear-wall Dynamics of Active and Passive Particles at LowReynolds Number( Abstract_要旨 )Author(s)Ohmura, TakuyaCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2018-03-26URL https://doi.org/10.14989/doctor.k20891Right学位規則第9条第2項により要約公開; 許諾条件により要旨は2018-04-01に公開; Ohmura, T., Ichikawa, M., Kamei, K. I.and Maeda, Y. T., "Oscillation and collective conveyance ofwater-in-oil droplets by microfluidic bolus flow." AppliedPhysics Letters, 107(7), 074102 (2015).DOI:10.1063/1.4928753Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University  （ 続紙 １ ）                             京都大学 博 士（ 理 学 ） 氏名 大村 拓也 論文題目  Near-wall Dynamics of Active and Passive Particles at Low Reynolds Number （低レイノルズ領域におけるアクティブ・パッシブ粒子の壁面近傍ダイナミクス） （論文内容の要旨）液体中を移動するマイクロメートルサイズの粒子は、周囲の液体からの粘性抵抗と、周囲の壁や別の粒子などとの流体を介した長距離相互作用によって運動の様相が左右される。この様な低レイノルズ領域での流体ダイナミクスはストークス方程式で記述される。一様流中を流れる単一粒子の場合などは解析解を導き出せる一方で、任意の境界を設定すると粒子運動は途端に複雑になる。加えて、複数粒子の相互作用や壁面との接触を考える場合、そのダイナミクスを解析的に記述することは困難になっていく。そのため自然とシミュレーションや実験が研究の主体となる。このような背景のもと、大村氏は、標準的な流体理論を単純に当てはめることでは説明できない興味深い運動現象を自身の実験で発見した。更に、詳細な実験と流体数値計算を用いてそのメカニズムを明らかにした。 第１章では、流される粒子であるパッシブ粒子や自己推進するアクティブ粒子の具体例を紹介し、低レイノルズ領域における上記粒子の運動を表現する基礎的な流体理論について説明している。 第２章ではパッシブ粒子が示した周期運動の研究結果が述べられている。これまで、マイクロチャネル内を流される均一な液滴の１次元配列が、流体相互作用による２次元の波動伝搬を示すことが知られていた。本研究では、マイクロチャネル中を大小交互に１列で流れる液滴の時間発展を調べた。まずは、小液滴（２０μｍ）と大液滴（１４０μｍ）を生成して交互に１列で流すことのできるマイクロ流体デバイスを新たに開発した。作製した実験装置を用い、マイクロチャネルを流れる小液滴が２つの大きな液滴の間を往復運動する現象を発見し、その性質を定量的に測定した。次に非線形的な運動のダイナミクスの特徴をつかむ為に流体数値計算を行った。計算の結果、小液滴往復運動は、２つの大きな液滴と上下の流路壁で囲まれた空間内に生成される３次元回転流によって説明できることがわかった。 第３、４章では、アクティブ粒子として遊泳微生物の一種である繊毛虫を用いた研究が記載されている。第３章では、固液境界面、つまり壁面付近における繊毛虫の遊泳運動について調べた。繊毛虫は体表面全体に繊毛と呼ばれる器官をもつ微生物である、その多数の繊毛を一斉にかくことで遊泳する。繊毛虫遊泳に対応する流体モデルに関しては、壁面から旋回して遠ざかるか衝突したとしても反射するという理論計算による研究が報告されている。しかしながら本研究の実験では、繊毛虫は壁面と衝突しても壁から離れることなく壁面上をスライドするという新奇な現象が確認された。より詳細に細胞運動を観測したところ、壁面と細胞との接面と非接面において、駆動力を生み出す繊毛の動きが異なっていることがわかった。この駆動力の非対称性を組み込んで流体数値計算を行った結果、流体モデルで実験結果を再現することに成功した。さらに遊泳体にかかるトルクの考察から、スライド運動の再現には遊泳体の形状が重要であることを見出した。つづく第４章では、発展的課題として繊毛虫の流れに対する遊泳応答が調べられている。マイクロチャネル内に繊毛虫を入れて流れを与えた実験を行い、やはり壁付近におけるダイナミクスを第３章同様に明らかにした。 最後に第５章では、以上の研究の総括と今後の展望が議論されている。      （続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨）本論文では、低レイノルズ領域において流される粒子や自身で遊泳する粒子が壁面付近で示す新奇な現象に焦点をあて、実験とシミュレーションからそのメカニズムの解明にあたっている。大村氏が自身の実験で発見した特異な現象について、定量的に調べる為の実験装置の設計と開発、実験画像の解析、現実の実験系に則した計算手法の改良と計算モデルの開発、シミュレーションによる再現などを行っている。 第２章では、マイクロチャネル中を流れる微小液滴が示す往復運動のダイナミクスを明らかにした。層流条件における往復運動に見えるが、それが壁と前後液滴によって形成される回転流による、周期的な粒子運動であることを発見した。定量実験のためにマイクロ流体デバイスの設計と作成を行い、液滴サイズを周期制御できる流路を新たに開発した。これらは微小流体工学分野の実験を独自の視点で進展させており高く評価できる。また本現象について毛細血管中の血流との相似性を指摘しており、医工学分野におけるモデル実験としても興味深い。 第３章では、繊毛虫が壁面近傍で示すスライド運動のダイナミクスを明らかにした。関連分野では、遊泳微生物を模した自発遊泳粒子の流体力学モデルをつくり、その性質を数値計算などで調べる事で、遊泳微生物の性質を流体力学的に明らかにしようとする研究の流れがある。大村氏はこれらの流体理論だけでは説明できない現象を自身の実験の中に見つけ、実験・数値計算を駆使して本質的なメカニズムを明らかにし、モデルで対応するパラメータを特定したという点に研究としての特徴がある。このメカニズムは理論やシミュレーションからだけでは発想できないものであり、実験とシミュレーションの両方を行う大村氏ならではの成果であると高く評価できる。なお、繊毛虫が壁面付近に凝集する現象は１００年ほど前の報告から経験則的に知られていたが、観察や生物学的実験からその理由や機構に迫る研究は無い事からも、流体力学や物理学として生物が見せる行動の一側面の機構を明らかにした点が評価できる。第５章で主張している様に、これら遊泳微生物が壁付近で見せる、生き物的だと思える動きが、単純に力学的な要件からだけでも決まるという着想は本論文ならではであり、多様な微生物遊泳に対する研究への発展も期待させるものである。 本論文は、生物的とも思いがちな非自明な現象について、定量測定と流体数値計算を組み合わせる事で、流体力学など物理学の枠組みでシンプルに説明する事に成功した。さらに、それぞれの研究内容に対して物理学への寄与や他分野への応用が明確に記載されるなど、十分な論述がなされた論文となっている。よって、本論文は博士（理学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成３０年１月１５日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行った結果、合格と認めた。 なお、本論文は、京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し、公表に際しては、（平成○年○月○日までの間）当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。  要旨公表可能日： ２０１８年  ４月  １ 日以降    

低レイノルズ領域におけるアクティブ・パッシブ粒子の壁面近傍ダイナミクス

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/232226/1/yrigk04343.pdf

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