京都大学0048新制・課程博士博士(医学)甲第21256号医博第4374号新制||医||1029(附属図書館)京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 中山 健夫, 教授 小川 修, 教授 川村 孝学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Funakoshi, Taro

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Title Chemotherapy in cancer patients undergoing haemodialysis: anationwide study in Japan( Abstract_要旨 )Author(s)Funakoshi, TaroCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2018-05-23URL https://doi.org/10.14989/doctor.k21256RightFinal publication is available at http://esmoopen.bmj.com/Type Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University京都大学 博士（ 医学 ） 氏 名 船 越 太 郎 論文題目 Chemotherapy in cancer patients undergoing haemodialysis: a nationwide study in Japan (慢性維持透析中に発症したがん患者における抗がん薬治療の国内実態調査) （論文内容の要旨） 慢性透析患者におけるがんの有病割合は一般母集団より高いと報告されてお り、がんは本邦の慢性透析患者の主な死亡原因である。抗がん薬治療は進行がんに対する標準治療として確立されているが、透析患者は一般母集団と比べ薬物動態が異なること、予後が悪く他病死のリスクが高いため透析患者を対象とした臨床試験が行われていないことから、透析患者における抗がん薬の適切な投薬量や安全性について十分なエビデンスがない。さらに、本邦の透析患者における抗がん薬治療は、その診療実態すら把握されていない。そこで、維持血液透析中のがん患者における抗がん薬治療の診療実態を明らかにするために、腎臓内科と腫瘍内科の連携がとれており、協力が得られた血液透析可能な施設（Onconephrology Consortium）で診療録調査を行った。 本邦で 2010 年から 2012 年の間に新たにがんと診断された維持血液透析患者のうち、Onconephrology Consortium（20施設）で治療方針が決定された患者を対象とした。透析患者で頻度の高いがん種（腎臓、大腸、胃、肺、肝臓、膀胱、膵臓、乳房）について、カルテ情報をもとに患者背景や治療内容、予後に関する情報をレビューする症例集積研究を実施した。507例の透析がん患者が登録され、原発部位は、腎臓癌 161例、大腸癌 84 例、胃癌 73 例、肺癌 64 例、膀胱癌 37 例、肝臓癌 35 例、乳癌 27例の順であった。初回治療として外科的手術が 396 例に施行されており、そのうち周術期補助化学療法が施行されたのは 30例で、乳癌（17例）と大腸癌（6例）の頻度が多かった。切除不能がんに対する緩和的化学療法は 44例に施行されており、腎臓癌（18例）、肺癌（9例）、大腸癌（7例）の頻度が多かった。使用された抗がん薬は、殺細胞性抗がん薬が 34 例、分子標的治療薬が 24 例、内分泌療法薬が 15 例で、殺細胞性抗がん薬ではフッ化ピリミジン薬（15 例）と白金製剤（8例）の使用頻度が高かった。投与方法に関しては、透析患者においても用量調整が不要とされている 5-FU でも 3 例（33%）が透析症例であることを理由に減量投与されていた。また、白金製剤については、減量の程度や透析のタイミングが施設間で異なっていた。周術期補助化学療法を行った 30例の臨床経過については、観察期間中央値 31.5ヶ月（範囲 11.7—60.9ヶ月）の時点で 7例が抗がん薬治療終了後に死亡されており、そのうち 6 例は感染症や突然死などのがん以外による原因で死亡していた。3年生存割合は 79%（95%信頼区間:64-94%）であった。切除不能がんに対して緩和的化学療法を行った 44例の臨床経過については、観察期間中央値 14.1ヶ月(範囲 0.1-52.2ヶ月)の時点で 28例が死亡しており、そのうち 9例は感染症や心不全などのがん以外による原因で死亡していた。また、抗がん薬による治療関連死亡を 3 例で認めた。生存期間中央値は 13 ヶ月（95%信頼区間：9.5-24.4ヶ月）で、12例は 2年以上の長期生存を得ることができた。維持血液透析中に抗がん薬治療を行ったがん患者では、感染症や心不全などのがん以外による死亡原因の割合が高かった。 透析がん患者に対して抗がん薬治療を行う際には、治療効果や有害事象、生命予後を考慮し、適応を慎重に考える必要がある。本研究は、透析がん患者における抗がん薬治療の問題点を明らかにし、今後の透析がん患者の臨床研究の礎になると期待される。また、透析がん患者に抗がん薬治療を行う際に、臨床判断の指標として大きく貢献すると期待できる。 （論文審査の結果の要旨） 慢性透析患者において、がんは死因の大きな原因であるが、診療の実態は不明である。本研究は、慢性透析患者における抗がん薬治療の実態を明らかにした多施設共同観察研究であり、申請者はプロトコール作成や実施および結果解析において主要な役割を担った。 本研究は、維持血液透析中に新たにがんと診断された 570 例の患者を対象に、治療内容や予後に関する情報について、診療録をもとにレビューする症例集積研究として実施された。透析がん患者に対して抗がん薬治療を行った 74 例において、死亡原因として心不全や感染症など、がん以外による死亡原因の割合が高いことが示された。また、腎機能正常患者と薬物動態が大きく異なる透析患者において、白金製剤や 5-FU といった殺細胞性抗がん薬の適切な投与方法が確立していないことが判明した。これらの結果から、透析がん患者に対して抗がん薬治療を行う際には、治療効果や有害事象、生命予後を考慮し、適応を慎重に考える必要があると考えられた。また、安全で効果的な抗がん薬治療の開発にむけて、透析がん患者を対象とした薬物動態研究の実施が望ましいと考えられた。 本研究は、透析がん患者に抗がん薬治療を行う際の臨床判断の指標として貢献し、今後の透析がん患者の治療開発に寄与するところが大きい。  したがって、本論文は博士（医学）の学位論文として価値あるものと認める。  なお、本学位授与申請者は、平成30年4月10日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。 要旨公開可能日：      年   月   日 以降 

慢性維持透析中に発症したがん患者における抗がん薬治療の国内実態調査

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/232469/1/yigak04374.pdf

慢性維持透析中に発症したがん患者における抗がん薬治療の国内実態調査

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