京都大学0048新制・課程博士博士(工学)甲第21113号工博第4477号新制||工||1696(附属図書館)京都大学大学院工学研究科材料化学専攻(主査)教授 田中 勝久, 教授 三浦 清貴, 教授 作花 哲夫学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDGA

Kamakura, Ryosuke

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Title Fabrications and optical properties of plasmonic arrays withoutnoble metals( Abstract_要旨 )Author(s)Kamakura, RyosukeCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2018-03-26URL https://doi.org/10.14989/doctor.k21113Right学位規則第9条第2項により要約公開Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University 京都大学 博士（工学） 氏名  鎌 倉 涼 介 論文題目 Fabrications and optical properties of plasmonic arrays without noble metals （貴金属を用いないプラズモニックアレイの作製と光物性）  （論文内容の要旨）  本論文は、プラズモニクス材料として従来から知られている Au や Ag などの貴金属の代替となる材料を探索することを目的として、酸化インジウムスズ（ ITO）、窒化チタン（TiN）、窒化ジルコニウム（ZrN）、アルミニウム（Al）に着目し、これらに微細加工を施すことで微視的な周期構造を作製して、周期構造に起因する光回折と局在型表面プラズモンとが結合した協同モードに基づく光学特性の高機能化を試みたもので、序章、終章および４章で構成されている。   序章では、研究の背景として金属微粒子に観察される表面プラズモン共鳴（ surface plasmon resonance, SPR）の基礎と応用について概観し、特に、この現象が金属表面近傍に著しい電場増強をもたらすこと、光のエネルギーを回折限界以下の領域に閉じ込められるためナノ領域での光学特性の向上が可能となること、特性は金属の種類や微視的構造によって制御できることを述べ、プラズモニクス材料の研究の意義を明らかにしている。また、SPR の研究に用いられる材料は現状では主に Au や Ag といった貴金属に限定され、これらの物質は可視域において優れたプラズモニクス特性を示し、液相法によるナノ粒子の作製が比較的容易であるという利点を有するものの、熱的・機械的特性は高強度のレーザーを必要とする応用などには不十分であり、半導体製造プロセスに適合した加工性に乏しく、さらには紫外域での応用が困難であるといった短所があることから、貴金属の代替材料の探索が必要であることを強調するとともに、本研究で対象とする ITO、TiN、ZrN、Al のプラズモニクス材料としての特徴と優位性を述べている。一方で、これらの物質の短所（可視域における光学損失が高い、金属的挙動を示す波長範囲が狭い）にも触れ、このような欠点を補う方法として局在型表面プラズモンと光回折がカップリングした状態である協同モードが有効であることを示し、プラズモニクス材料として周期的アレイ構造を使うことの意義を説明している。 第１章では、金属的挙動が現れる波長範囲が貴金属と比べて狭いものの赤外域において低い光学損失を示し、また、分子の吸着能が貴金属とは異なるといった特徴を持つ ITO を対象に、基礎的なプラズモニクス特性を明らかにするとともに、表面増強赤外吸収 (surface-enhanced infrared absorption, SEIRA)の機能を評価している。赤外域における ITO の協同モードを実現するために ITO マイクロシリンダーアレイ（周期間隔：3 m、シリンダーの直径：2 m）をシリカガラス基板上に作製するとともに同じ構造を持つ Au マイクロシリンダーアレイを作製して、それらのプラズモニクス特性を比較している。その結果、 ITO アレイと Au アレイはともに中赤外域（ 4-7 m）において協同モードの励起を反映した反射率の入射角依存性を示すことを明らかにしている。また、中赤外域における ITO アレイの協同モードの有用性を検証するために、種々の振動モードを有する高分子膜を ITO アレイと Au アレイ上に塗布し、その赤外吸収増強度を比較している。結果として、ITO アレイと Au アレイは同程度の赤外吸収増強度を示すことを見いだしている。また、協同モードに寄与する回折の周波数と分子振動の振動数の差に基づいて増強度を整理できることを提案している。   京都大学 博士（工学） 氏名  鎌 倉 涼 介 第２章では、Au や Ag よりも優れた熱的・機械的・化学的安定性を示し、半導体製造プロセスに適合した微細加工性も有する TiN を対象に、プラズモニクス特性ならびに協同モードを利用した蛍光体の発光の増強について調べている。TiN は可視から近赤外領域において SPR の励起が可能であるが光学損失が高いため、プラズモニクス特性の評価が主に近赤外域に限られていることから、光学損失を抑制し、TiN の可視～近赤外域での潜在的な機能を明らかにする目的で、TiN ナノシリンダーアレイをサファイア基板上に作製し、透過率の波長および入射角依存性、蛍光体としてローダミン 6G（R6G）を用いたときの発光強度への協同モードの影響を調べ、TiN ナノシリンダーアレイでは可視～近赤外領域における協同モードの励起が可能であることを明らかにするとともに、TiN の SPR の励起波長が R6G を含有する発光層の光吸収・発光の波長と一致していないにもかかわらず、アレイがない場合と比較して 2.8 倍の可視発光の増強が得られることを見いだしている。  第３章では、上記の TiN と同様に優れた熱的・機械的・化学的安定性を示す ZrN を対象にプラズモニクス特性を評価している。ZrN は TiN を上回る機能を持つプラズモニクス材料であることが第一原理計算などから明らかにされているが、その光学特性を実験的に評価した報告は少ないことに鑑み、異なる周期間隔を有する ZrN ナノシリンダーアレイを作製し、R6G を含有する発光層と組み合わせることで、ZrN の SPR と協同モードの可視発光への影響を調べている。作製した ZrN ナノシリンダーアレイは可視域において SPR の励起を示し、これが発光層の光吸収および発光の取り出し効率の向上に寄与するためアレイがない場合と比較して約 4 倍の発光増強が実現すること、また、協同モードを利用することで発光増強が約 10 倍まで上昇することを明らかにしている。この増強度はこれまでに報告されている Au や Ag を用いたナノ粒子アレイに匹敵することから、ZrN は可視域において貴金属の代替材料として有望であると結論している。  第４章では、Al を対象とした実験結果を述べている。Al は紫外域において貴金属より優れたプラズモニクス特性を有し、有機蛍光体の可視発光の増強に効果的であることが報告されているが、その発光強度は実用的な発光素子への応用にはまだ不十分である。本研究では Al ナノシリンダーアレイを黄色蛍光体である Ce3+添加 Y3Al5O12（YAG:Ce、厚さ : 200 m）上に作製することで、協同モードを利用した新規光源の実現を試みている。結果として、Al ナノシリンダーアレイを用いることにより、青色発光ダイオードを光源とした YAG:Ce の発光増強度が約 5 倍にまで増加するとともに、発光に強い指向性が現れることを明らかにしている。加えて、後方散乱を抑制するために基板背面側に誘電体多層膜を設置すると、発光増強度が 9 倍まで増大することを見いだしている。ここではインコヒーレントでありながら指向性の強い高輝度の白色光が得られており、従来型の光学部品を用いた指向性光源とは異なる新しい原理での光源となりうると結論している。   終章は結論であり、本論文で得られた成果について要約している。       氏 名 鎌 倉 涼 介 （論文審査の結果の要旨）  本論文は、プラズモニクス材料として従来から研究されている Au や Ag といった貴金属の代替材料となりうる物質として酸化インジウムスズ（ ITO）、窒化チタン（TiN）、窒化ジルコニウム（ZrN）、アルミニウム（Al）を取り上げ、これらの物質の微細加工により周期的アレイ構造を実現し、構造に起因する光回折と局在型表面プラズモンとがカップリングした協同モードを利用することにより高機能の新規プラズモニクス材料を開拓することを目的として研究を行った結果をまとめたものであり、得られた主な成果は次のとおりである。   １．透明導電性酸化物として知られる ITO を用いて、直径が 2 m のシリンダーが 3 mの間隔で並んだアレイ構造の作製に成功した。アレイ上に高分子膜を成膜して赤外吸収増強（SEIRA）特性を調べ、ITO マイクロシリンダーアレイは同様の条件で作製した Auマイクロシリンダーアレイに匹敵する赤外吸収増強度を示すこと、協同モードに寄与する回折の周波数と分子振動の振動数に依存して増強度が変化することを明らかにした。 ２．TiN ならびに ZrN から成るナノシリンダーアレイを作製し、協同モードの励起を実現した。TiN ナノシリンダーアレイではローダミン 6G（R6G）を含むポリメチルメタクリレート膜の可視発光が協同モードに基づいて 2.8 倍まで増強されることを見いだした。また、ZrN ナノシリンダーアレイでは可視域において局在型表面プラズモンの励起が可能であり、R6G との組合せにより、その発光強度が約 10 倍まで増強されることを明らかにした。  ３．局在型表面プラズモン共鳴が紫外域に現れる Al を用いてナノシリンダーアレイを作製し、青色発光ダイオードならびに蛍光体の一種である Ce3+添加 YAG と組合せることにより、インコヒーレントでありながら指向性の強い高輝度の白色光を発する光源の開発に成功した。   以上、本論文では、従来から知られている貴金属とは異なる新しいプラズモニクス材料を開拓することを目的に、ITO、TiN、ZrN、Al を対象として周期的アレイ構造を構築し、赤外吸収の増幅、蛍光体の発光の増強、指向性を持つ白色光源の実現に成功したものであり、学術上、実際上寄与するところが少なくない。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成３０年２月１６日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。 なお、本論文は、京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し、公表に際しては、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。     

貴金属を用いないプラズモニックアレイの作製と光物性

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貴金属を用いないプラズモニックアレイの作製と光物性

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