京都大学0048新制・論文博士博士(農学)乙第13181号論農博第2860号新制||農||1061(附属図書館)学位論文||H30||N5103(農学部図書室)(主査)教授 小杉 緑子, 教授 北山 兼弘, 教授 舟川 晋也学位規則第4条第2項該当Doctor of Agricultural ScienceKyoto UniversityDFA

Marryanna, Lion

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TitleEffects of spatio-temporal distribution of soil moisture on alowland dipterocarp forest at Pasoh Forest Reserve inPeninsular Malaysia( Abstract_要旨 )Author(s)Marryanna, LionCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2018-03-26URL https://doi.org/10.14989/doctor.r13181Right学位規則第9条第2項により要約公開; 1. Temporalvariations in stable isotopes in precipitation related to therainfall pattern in a tropical rainforest in Peninsular Malaysia. LMarryanna, Y Kosugi, M Itoh, S Noguchi, S Takanashi, MKatsuyama, M Tani & S Siti-Aisah. Journal of Tropical ForestSciences Vol 29 (3): 349-362, July 2017.https://doi.org/10.26525/jtfs2017.29.3.349362 2.Evapotranspiration and water sources of a tropical rainforest inPeninsular Malaysia. L Marryanna, Y Kosugi, S Takanashi, SNoguchi, M Itoh, M Katsuyama, N Matsuo & S Siti-Aisah.Hydrological Processes 31(24):4338‒4353.https://doi.org/10.1002/hyp.11360.Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University - 1 - （ 続紙 １ ）                             京都大学 博士（  農 学  ） 氏名  Marryanna Lion 論文題目 Effects of spatio-temporal distribution of soil moisture on a lowland dipterocarp forest at Pasoh Forest Reserve in Peninsula Malaysia （土壌水分の時空間分布が半島マレーシアパソ森林保護区低地フタバガキ林に与える諸影響） （論文内容の要旨） 今日熱帯雨林において、気候変動や温暖化に伴う降水量および降水パターンの変化は喫緊の問題である。降雨パターンの変化は土壌水分を通して、蒸発散、林分動態、その他様々な森林機能に影響を与えると考えられる。それゆえ、気候変動の影響を評価するためには、土壌水分がこれらの森林機能に与える影響についての詳細な情報が必要である。本研究は、半島マレーシアパソ森林保護区の低地フタバガキ林（熱帯雨林）において、土壌水分および水文過程の時空間変動が、蒸発散およびその水供給源や、林分動態に与える影響を調べたものである。 2章では、降水中の酸素（δ18O）および水素（δ2H）安定同位体比指標の時間変動が報告された。降水中の安定同位体比の日および季節変動が、モンスーンシーズンの違い、降水パターン、およびより大きなスケールでの降水トレンドとの関係や、近隣のGlobal Network of Isotopes in Precipitation (GNIP)モニタリングステーションでの値との比較で解析された。安定同位体比のモンスーンシーズンによる違いはなく、降水量、降雨強度、降雨持続時間との相関がみられた。長期平均的な月別トレンドでみると降水量効果は明確に検出され、近隣のGNIPステーションで見られるパターンとも類似した。降水量効果は日スケールの降水量で見た場合にはばらついた。小規模な対流性の降雨におけるd値の上昇は見られなかったことから、本試験地周辺において、陸域から蒸発散した水蒸気を再利用した降水が起こっているという証拠は得られなかった。δ18Oの変動は60日先行降雨指数とよく相関した季節変動が見られたことから、本試験地周辺ではより大きな地域スケールの降水が卓越していると考えられた。 3章では、4年間にわたる蒸発散調査に基づき、本試験地の蒸発散特性とそれを支える水供給源が考察された。乾湿様々な土壌水分条件下において森林が蒸発散を行うための水供給源を同定するために、渦相関法による蒸発散量測定に加えて、降水、植物体、土壌、および渓流水の酸素水素安定同位体比情報が用いられた。植物体、土壌のサンプリングは湿潤時、通常時、乾燥時、強乾燥時の4度行われた。2012年から2015年の4年間における年間蒸発散量は1,182±26 mmと非常に安定しており、日蒸発散量は強乾燥時においても若干の低下にとどまった。湿潤時には蒸発散のための水は0-0.5 mの表層土壌から主に供給される一方で、乾燥時には50-90 %の水がより深い土層から供給されていた。またこの水は最低でも4か月以上前の降水までその起源を遡るものであった。安定同位体比の結果から、植物体中、土壌中、渓流水中の水の起源はすべて異なるものであった。植物体中の水はしばしば土壌水と異なったが、これは土壌中に残留する水で土粒子に強く結びついた吸着水の割合が多かったためと考えられた。植物のサイズによる吸水深度の違いは特に見られなかった。一方で、木部における貯留水の存在が示唆された。乾燥時における本森林における蒸発散は、降雨時の早い流 - 2 - 出によって失われる水を除く、植物が利用できる水資源のほとんどを使って、維持されていると考えられた。 4章では、年間を通じて観測された土層1mまでの土壌含水率の空間分布と林分動態との関係が調べられた。土層表層における土壌水分の空間分布は地形および土壌の物理構造によって決まっており、乾燥期間における残余含水率が低い場所、即ちより大きな孔隙径分布を持つ地点で表層の含水率が低くなる傾向にあった。またこのような地点ではより深い土層の含水率が高い傾向があった。このような場所では、胸高断面積合計が大きく、乾燥時の表層土壌含水率と現存量との間にはっきりとした負の相関がみられた。これは、孔隙サイズや分布がもとの粘土質土壌よりも大きくなり森林土壌化が進んだ表層土壌を樹木が好むためと考えられた。またこのような森林土壌の発達には、樹木根の侵入によるフィードバックも幾分働いているのではないかと考えられた。この相関とは独立して、フタバガキ科樹木・および超出木種に分類される樹木の個体数が1m程度の深い土層の含水率と負の相関を示したが、これは深根性の樹木が深層で乾燥した好気的な環境を好むためと考えられた。また枯死率や樹木個体数はどの層の土壌含水率とも特に相関は見られなかった。 これらの結果は、従来の数値モデルにおいて想定されている単純な関数では土壌水分の影響を正しく評価することができないということを示しており、気候変動が熱帯雨林に与える影響を評価する際に、実際のフィールド観測結果に基づかない単純なモデリングや数値実験は結果を誤る可能性があることを強く示唆することとなった。本研究によって得られた情報は、水政策決定や森林保護政策など様々な問題に対処するための環境モデリングにとっても重要な意義を持つものである。                注)論文内容の要旨と論文審査の結果の要旨は１頁を３８字×３６行で作成し、合わせ て、３,０００字を標準とすること。 論文内容の要旨を英語で記入する場合は、４００～１,１００wordsで作成し 審査結果の要旨は日本語５００～２,０００字程度で作成すること。   - 3 - （続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨）  気候変動が熱帯雨林にどのような影響を及ぼすかを評価するために、今日様々な数値モデルを用いた解析が行われているが、降水量および降雨パターンの変化が土壌水分の変動を通して様々な生態系機能に与える影響についての現地調査に基づいた詳細な情報は不足している。本研究は、半島マレーシアパソ森林保護区の低地フタバガキ林（熱帯雨林）において、土壌水分および水文過程の時空間変動が、蒸発散およびその水供給源や、林分動態に与える影響を調べたものである。 評価できる点として以下の３点を挙げることができる。 １．降水中の酸素（δ18O）および水素（δ2H）安定同位体比の情報から調査対象とする半島マレーシア熱帯雨林における降水の起源を示すとともに、降水および、植物体内水、土壌水、渓流水中の安定同位体指標の時間変動に関するデータベースを提供した。 ２．4年間にわたる蒸発散調査に基づき、半島マレーシア熱帯雨林の蒸発散特性とそれを支える水供給源を明らかにした。調査対象森林における日蒸発散量が非常に安定的であり、強乾燥時においても若干の低下にとどまることを示した。また、土層内の水収支および降水・植物体内水・土壌水・渓流水中の酸素・水素安定同位体比の結果から、安定した蒸発散活動は、強乾燥時には植物が利用できる水資源のほとんどを使って維持されていることを示した。 ３．年間を通した様々な時期の土層1 mまでの土壌含水率の時空間分布と、枯死率・属毎の本数・胸高断面積合計等との相関を調べた結果、乾燥ストレスと枯死率等の林分動態との単純な関係は見られず、むしろ空間的に乾燥した場所を樹木が好む傾向があることを明らかにした。 以上のように本論文は、土壌水分の時空間分布が半島マレーシアパソ森林保護区低地フタバガキ林に与える諸影響を実証的に明らかにしたものであり、森林水文学、森林生態学、土壌学の発展に寄与するところが大きい。 よって、本論文は博士（農学）の学位論文として価値あるものと認める。   なお、平成３０年２月９日、論文並びにそれに関連した分野にわたり試問した結果、博士（農学）の学位を授与される学力が十分あるものと認めた。  また、本論文は、京都大学学位規定第１４条第２項に該当するものと判断し、公表に際しては、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。    注）論文内容の要旨、審査の結果の要旨及び学位論文は、本学学術情報リポジトリに掲載し、公表とする。 ただし、特許申請、雑誌掲載等の関係により、要旨を学位授与後即日公表することに支障がある場合は、以下に公表可能とする日付を記入すること。  要旨公開可能日：   年   月   日以降（学位授与日から３ヶ月以内）  

土壌水分の時空間分布が半島マレーシアパソ森林保護区低地フタバガキ林に与える諸影響

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/232153/1/ynogr02860.pdf

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