京都大学0048新制・課程博士博士(工学)甲第21085号工博第4449号新制||工||1691(附属図書館)京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻(主査)教授 清野 純史, 教授 高橋 良和, 准教授 古川 愛子学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDFA

Angga, Fajar Setiawan

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Title Development of High Seismic Performance Integrated BridgePier Connected by Hysterical Damper( Abstract_要旨 )Author(s)Angga, Fajar SetiawanCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2018-03-26URL https://doi.org/10.14989/doctor.k21085Right許諾条件により本文は2019-03-26に公開Type Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University 論文題目 Development of High Seismic Performance Integrated Bridge Pier Connected by Hysterical Damper  （履歴型ダンパーを用いた高耐震性能橋脚の開発） （論文内容の要旨）  橋脚は橋梁全体を下部から支える主要な構成要素の一つである。橋脚に破壊が生じた場合、橋梁構造全体が崩壊してしまうため、新しい構造体で置き換える必要性が出てくる。地震は、その橋脚にとって最も損害を与える可能性の高い要因の一つである。この現象は、「strong-column weak-beam」を適応した構造体系の橋脚ではなく、従来の「weak-column」を適応した構造体系の橋脚で発生する。従来の柱部材の設計概念では、橋梁の底部に塑性ヒンジが形成される。大きな地震が発生した際には、橋脚の強度と靭性が十分であれば、塑性ヒンジに亀裂や剥落が生じて、残留変形が発生する。一方、構造物の強度と靭性が不十分であれば、橋脚に破壊が生じて、橋梁構造全体が崩壊してしまう。塑性ヒンジは、地震動を減衰させるためのエネルギー発散を行うために重要な部分である。しかし、柱部材の塑性ヒンジ構造は、残留変形の発生も伴う。柱部材の残留変形は、地震後の構造物の復旧時間に大きな影響を与え、経済的混乱を引き起こす交通閉鎖の原因にもなる。 そこで本研究では、こうした問題を解決すべく新たな橋梁構造システムとして、履歴型ダンパーを有する複数の支柱からなる高耐震性能橋脚の開発を行う。一体化された橋脚は、細長い柱状構造物から構成され、大小さまざまな弾性変形に対応する。変形能力限界内では、履歴型ダンパーは、十分にエネルギーを発散し、地震動による振動を消散させる役割を果たしている。大きな地震の場合でも、柱部材は弾性体に近い挙動をとるため、橋梁の損傷が軽減され修復が容易になる。そのため、補修コストも削減される。これによって、橋梁は地震が発生した場合でも、比較的短期間に機能することができる。 2011 年に東日本大震災における支承の損傷は、地震の揺れもさることながら、上部構造の伸縮による劣化が原因で起きた可能性も指摘されている。このような支承の損傷を防止するためのアイデアの一つとして、橋脚と上部構造を接続する支承を取り外し、橋脚と上部構造を直接結び付けることが挙げられる。履歴型ダンパーの中に微小な隙間を設けることにより、上部構造の伸縮によって発生する変形を許容する高い柔軟性を実現することが期待される。また、この隙間により、変形量が小さい時の履歴型ダンパーの作用を遅らせることができる。せん断パネルダンパー（SPD）の場合は、隙間の存在により頻繁な横方向、例えば小さな地震、風、熱膨張、上部構造のクリープや収縮等による変形要因の下で、SPD 応力を減少させることができる。SPD 応力の低下は、高サイクル疲労現象の N 値を増加させる。その結果、構造物寿命が改善され、ライフサイクルコストを削減することにも繋がる。 このような背景の下に、以下に各章で実施した事項および得られた結果について述べる。  第一章では、耐震性能の高い橋脚の重要性について総合的に述べた上で、高耐震性能を有する橋脚を開発するという本研究の目的について述べている。 第二章では、数値解析とエネルギー散逸の最適化について議論している。本研究は、周期的な荷重の下での摩擦減衰機構を有する鉄筋コンクリート部材を対象としている。この構造は、プレストレスコンクリートボルトを利用した締め付け及び摩擦装置で接続された三つのコンクリート部材でできている。この橋脚には、ダンパーを柱の高さに沿って分散配置しており、ダンパーが集中して配置された橋脚よりも強固な性質を示すことが期待できる。緩みが原因であるダンパーが働かないときでも、他のダンパーの作用によって外力に抵抗することができる。本研究では、この橋脚をファイバー要素断面とリンク要素を備えた摩擦装置を用いてモデル化し、非線形有限要素解析を実施する。弾性状態における最適なエネルギー散逸を、多数の拘束力の組合せを用いて拘束力を変化させ、各摩擦装置における増加する拘束力の規則的なパターンを適用することによって調べる。ヒステリシスループの比較に基づく調査によると、摩擦装置の摩擦係数およびすべり変形値が数値解析における重要なパラメータであることが分かった。数値解析及び実験のヒステリシスループと曲率分布の比較は良好な一致を示した。弾性状態における最適なエネルギー発散を、二つの方法を用いて調査した。最後に、拘束力のパターンと大きさによって、ヒステリシスループの形状と柱部材の高さに沿った曲率分布が大きな影響を受けることが分かった。 第三章では、橋脚の構造について詳細に説明している。摩擦ダンパーと複合鉄筋コンクリート部材を有する一体型の橋脚構造は、従来の橋脚構造システムに代わるものである。従来、水平方向での微小な変形が繰り返し起きると、支承が損害を受けることが課題となっていたが、今回、支承を取り外した橋脚構造の実現に成功した。ファイバー要素モデルを用いて、非線形静的及び動的数値解析を行う。バイリニアとストッパー材料の理想的な並列結合を施すとともに、より良い構造物の費用対効果を得るために、柱位置の異なる限界状態と鉄筋構成の異なる降伏強度とを用いた構造シミュレーションを行った。同解析及びシミュレーションによると、提案された構造物は、小さい変形範囲での水平荷重条件下だけでなく、大きな地震荷重下でも優れた性能を有することが分かった。 第四章では、数値解析を行うことによって、せん断パネルダンパー（SPD）で連結された一体型の鋼管橋脚のエネルギー発散および耐震性能の向上を図った。この橋脚の構造は、阪神高速道路によって開発され、利用されているものである。SPD は、強度と剛性の均一な分布を持ち、一定の間隔で橋脚の上部構造の高さに沿って設置されている。鋼管柱の下端と上端との接続は固定されている。本研究では、構造物のエネルギー発散量の増加の検討を、二つの異なる構造構成を有する四つのシナリオによって行った。甚大な残留変形を防止するために、大きな地震が発生した際の構造物の限界状態は、構造物の剛性が 90％に達し、水平方向の変形限界に達した時とすることを提案した。提案された変形限界において、最適化を行うと、初期設計構造構成の最大 272％までエネルギー発散を増加させることができる。レベル 2 相当の大きな地震動条件下においても、最良のエネルギー発散性を有する構造応答は、提案された性能基準の変形限界を下回っていた。 第五章は、隙間を含むせん断パネルダンパー（SPDG）の実験と数値解析について述べたものである。実験では、低剛性下での挙動が隙間範囲内の小さな変形留まることが達成された。SPDG のメカニズムとパラメータを、簡易ばねモデルと FEM モデルを含む数値解析により検証した。また、ばねモデルの妥当性は動的解析によって、FEMモデルの妥当性は静的プッシュオーバー解析を行うことによってそれぞれ検証した。剛性および強度係数は、実験および解析のヒステリシスループの骨格を理論値に一致させることによって決定した。FEM シミュレーションにより、SPDG のウェブパネルの応力分布をモニタリングすることによって、隙間メカニズムと強度係数の確認を行った。ばねモデルのヒステリシスループは実験結果とよく整合していた。 第六章では、複数の鋼管柱を備えた一体化された橋脚の SPDG を用いて実験と数値解析について述べている。ここでは、第四章で最も高い耐震性能を示したモデルを用いて実験と解析を行った。隙間を追加することによって、小さな変形における構造の柔軟性を改善し、上部構造の伸長に適応する事が期待できる。また、摺動面の摩擦効果も数値解析による検討の対象とした。提案された構造の挙動と地震学的性能は、静的解析と動的解析によって検証を行った。本研究では、SPDG の特性は実験と数値解析研究に基づいて設定している。その結果、提案された構造が期待される挙動を示し、耐震性能を有することが示された。また摩擦部により、レベル 1地震動下では SPD 応力を低減することができることも分かった。さらに、隙間を追加したことにより、エネルギー消費性能が向上し、耐震性能を向上させることに成功した。 第七章は結論であり、本研究で得られた成果を要約している。        氏 名 Angga FAJAR Setiawan （論文審査の結果の要旨） 1995 年の阪神大震災以来、日本道路協会 (JRA) によって決定された橋梁設計のためのレベル２地震の地震係数は非常に大きくなっている。また、 2011 年の東日本大震災の後、地震そのものが橋梁の支承の損傷の原因ではなく、日常的な水平荷重が原因である可能性も指摘されている。このような大きな地震荷重に対しては、耐震性能が高くかつライフサイクルコストの低減にもつながる橋脚の実現が望まれている。  本研究では、新たな橋梁構造システムとして、履歴型ダンパーで接続された、複数の支柱からなる高耐震性能橋脚の開発を行うとともに、履歴型ダンパーにおける隙間の影響についての検討を実施した。 本研究で行った事および得られた成果を以下に示す。  １．摩擦ダンパーにより接続された鉄筋コンクリート柱の数値解析とエネルギー散逸の最適化について検討した。その結果、摩擦装置の摩擦係数およびすべり変形値が数値解析における重要なパラメータであることを見出した。 ２．摩擦ダンパーと複合鉄筋コンクリート部材を有する一体型の橋脚構造を提案した。その構造によって水平変形に適応する柔軟な剛性を生み出すことができることを確認した。また、提案された構造物は、小さい変形範囲での水平荷重条件下だけでなく、大きな地震荷重下でも優れた性能を有することが分かった。  ３．せん断パネルダンパー（SPD）で連結された一体型の鋼管橋脚の耐震性能の向上について検証した。その結果、限界状態変形については、消散エネルギーおよび減衰比がそれぞれ 272%および 110%増加し、変形限界量が 63%増加した。レベル 2 相当の大きな地震動条件下においても、最適なエネルギー吸収能を有する構造応答は、提案された性能基準の変形限界を下回っていた。  ４．摩擦力の効果を考慮に入れた、隙間を含むせん断パネルダンパー（ SPDG）を新たに考案した。そして、SPDG の実験と数値解析を行った。小さな変形において、SPDGの十分な柔軟性を確認することができ、また履歴ループを支配するパラメータを算出することができた。 ５．複数の鋼管柱を備えた一体化型橋脚に SPDG を用いた実験とその数値解析を行った。せん断パネルダンパーに隙間を追加することによって、小さな変形における構造の柔軟性を改善し、上部構造の伸長に適応できることがわかった。   以上より、本論文は履歴型ダンパーを有する複数の支柱からなる高耐震性能橋脚という新たな橋梁構造システムの開発に関して、学術上、実際上寄与するところが少なくない。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成３０年１月２４日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。  なお、本論文は、京都大学学位規程第 14条第 2項に該当するものと判断し、公表に際しては、（平成 31 年 3 月 25 日までの間）、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。  

履歴型ダンパーを用いた高耐震性能橋脚の開発

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/232018/1/ykogk04449.pdf

履歴型ダンパーを用いた高耐震性能橋脚の開発

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