京都大学0048新制・課程博士博士(工学)甲第21126号工博第4490号新制||工||1698(附属図書館)京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻(主査)教授 村上 正浩, 教授 杉野目 道紀, 教授 松田 建児学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDGA

Nakamuro, Takayuki

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TitleNew Reactions Using Diazo Intermediates Generated fromAzole Compounds( Abstract_要旨 )Author(s)Nakamuro, TakayukiCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2018-03-26URL https://doi.org/10.14989/doctor.k21126Right学位規則第9条第2項により要約公開; 許諾条件により要約は2019-03-01に公開Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University 京都大学 博士（工学） 氏名      中室 貴幸 論文題目 New Reactions Using Diazo Intermediates  Generated from Azole Compounds  (アゾール類から生成するジアゾ中間体を利用する新反応 )    カルベン種は多様な反応性を有する化学種である。カルベン種は一般的にジアゾ化合物から脱窒素を伴って生成するが、ジアゾ化合物の調製法ならびに安定性に問題があった。一方、アゾール類であるトリアゾール、テトラゾールは合成が簡便で取扱いが容易な化合物であり、環鎖互変異性によりジアゾ中間体を平衡的に与える。本論文では、アゾール類をジアゾ化合物の前駆体として利用した合成手法の開発について論じている。序章では本論文の背景および成果の要旨について述べた後に、本章にて検討結果を論じている。各章の概要を以下に示す。    第１章  N-スルホニル -1,2,3-トリアゾールからのホウ素アザエノラート種の発生と、続くアザアルドール反応について論じている。アルデヒド由来のエノラート種は自己縮合の問題により調製が困難であり、例えば嵩高いケイ素置換基による立体的保護といった工夫が必要であった。これに対して申請者は、トリアゾールへのロジウム触媒によるヒドロホウ素化反応を利用することで、アルジミン由来のホウ素アザエノラート種が立体選択的に生成することを見出した。つづいて、この化学種にアルデヒドを作用させると、対応する交差アルドール付加生成物を立体選択的に生成する。またトリアゾールの調製に遡り、末端アルキン化合物からのワンポット合成へと応用している。   第２章 トリアゾールからのイミノ置換スピロペンタン誘導体の合成と、続く熱的異性化反応によるトランスシクロアルケンの合成に関して論じている。中員環のトランスシクロアルケンは大きな歪み構造を有し、それに基づく様々な応用研究が行われている。申請者は、トリアゾールとメチレンシクロプロパンの不斉シクロプロパン化により得られるイミノ置換スピロペンタン誘導体が、熱的に異性化反応を起こし、立体特異的にトランスシクロアルケン化合物へと変換されることを見出した。すなわち、二つの歪んだシクロプロパン環の開裂を駆動力として、トランスシクロアルケン化合物が生成する。この新規異性化反応の妥当性を実験・DFT 計算の両面から確認している。   第３章 NH-テトラゾールから生成するドナー/アクセプター型の新規α-アゾロジウムカルベン錯体の反応性について論じている。申請者は、NH-テトラゾールのスルホニル化により環鎖互変異性が促進され、系中でジアゾ中間体が生成することを見出した。つづくキラルロジウム触媒の作用により、対応するロジウムカルベン錯体が得られた。この錯体はスチレンとの不斉シクロプロパン化反応、つづく開環反応によって、生理活性物質によくみられる 3,5-ジアリール-2-ピラゾリン化合物へと高立体選択的に変換された。    2  京都大学 博士（工学） 氏名      中室 貴幸   第４章 p-スチリル置換トリアゾールの不斉環化三量化反応について論じている。申請者は、トリアゾールの環鎖互変異性現象が反応活性種の徐放に適していると考え、連続的なシクロプロパン化反応による環状化合物の合成を設計した。p-スチリル置換トリアゾールにロジウム触媒を作用させると、C3-対称性の環化三量化体が光学的に純粋な形で得られることを見出した。この環化三量化反応はトリアゾールから発生させたジアゾイミンに特異的であり、従来のカルベン前駆体であるジアゾエステルの場合では多量化反応が優先することがわかった。また、ベンゼン環上に重水素を導入することにより、水素と重水素の配列に基づいた C3-対称性炭化水素化合物を合成した。   第５章 第４章の結果に基づいて、ビニル基置換チオフェニル基を有するトリアゾールのキラルロジウム触媒下での反応性について論じている。５員環のチオフェン環を核として用いれば、様々なビニル基とトリアゾール基の置換様式が可能となる。詳細な検討の結果、お互いのなす結合角が大きな場合は不斉環化三量化反応、小さな場合には不斉環化二量化反応がそれぞれ優先的に進行することがわかった。また、二量体の生成物については、室温において環反転に基づくラセミ化を起こすことがわかった。そこで光学収率の経時変化の追跡により、環反転挙動に関する物理的パラメータを算出している。  第６章 炭素同位体に基づく光学活性炭化水素化合物の合成とその解析について論じている。炭素は有機化合物の主骨格を成す重要な元素であり、天然存在比 1.1％で炭素 13 が安定同位体として存在している。また、炭素同位体に基づく不斉現象は理論的に予測されており、近年炭素同位体異性に基づくキラルアルコールを用いた不斉増幅反応が報告されている。しかし、炭素同位体異性に基づく光学活性炭化水素化合物の合成及び絶対立体配置の決定に関する研究例はなかった。申請者は、炭素同位体に基づく光学活性炭化水素化合物をトリアゾールの不斉環化三量化反応と、続く脱ホルミル化反応により合成した。環化三量化反応の際のキラルロジウム触媒の使い分けにより鏡像異性体を作り分け、それらを振動円二色性 (VCD)と DFT 計算によって解析した。      3   氏 名   中室 貴幸  （論文審査の結果の要旨）   本論文は、アゾール類をジアゾ前駆体とした新規分子変換手法の開発についてまとめたものであり、得られた主な成果は次のとおりである。   第１章 トリアゾールへのヒドロホウ素化反応を利用した、ホウ素アザエノラートの立体選択的合成反応を開発した。合成したエノラート種は立体選択的なアザアルドール反応へと展開できる。また、反応系がクリーンである利点を活かして、4 つの反応を同一反応容器内で連続的に進行させることが可能となった。 第２章 スピロペンタン骨格の歪み解消を駆動力とし、光学活性トランスシクロアルケン誘導体を合成する新たな手法を見出した。本反応は、[3,3]-シグマトロピー転位様の六員環遷移状態を経由することにより、基質の立体情報が生成物に転写されることがわかった。 第３章 NH-テトラゾール骨格から、新規金属カルベン錯体の調製が可能となった。この手法を応用し、生理活性物質の骨格によく見られる光学活性ピラゾリンを合成した。反応の中間に生成する光学活性シクロプロパン誘導体が協奏的に開環することで不斉情報が保持される。 第４章 ビニル置換トリアゾールの環化三量化反応により、 C3-対称性の環状化合物を光学的に純粋な形で合成できることを見出した。トリアゾールの環鎖互変異性現象によって系中に存在するジアゾ活性種の濃度を低く保つことにより、反応性が制御されている。 第５章 ビニル置換トリアゾールの環化多量化反応はチオフェン環においても有効であり、その結合角に応じて生成する環サイズを制御することが可能であった。また、環反転に基づくラセミ化反応が室温で起こることを明らかにした。 第６章 炭素同位体に基づく、光学活性炭化水素化合物をビニル置換トリアゾールの環化三量化反応を利用して合成した。得られた化合物を VCD によって解析し、炭素同位体に基づく不斉現象を分光学的に直接観測した。  以上、本論文はアゾール類からのジアゾ活性種の創生とその反応について述べたものである。入手容易な基質から高付加価値の有機化合物を与える反応であり、学術上、実際上寄与するところが少なくない。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成３０年２月１３日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。   なお、本論文は、京都大学学位規程第 14 条第 2 項に該当するものと判断し、公表に 4   氏 名   中室 貴幸  際しては、（平成 31 年 2 月 28 日までの間）、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。  5   

アゾール類から生成するジアゾ中間体を利用する新反応

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アゾール類から生成するジアゾ中間体を利用する新反応

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