京都大学0048新制・課程博士博士(工学)甲第21097号工博第4461号新制||工||1693(附属図書館)京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻(主査)教授 伊藤 禎彦, 教授 田中 宏明, 准教授 西村 文武学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDGA

Vu, Kiem Thuy

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Title Searching appropriate conditions for sustainable operation ofsoil aquifer treatment( Abstract_要旨 )Author(s)Vu, Kiem ThuyCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2018-03-26URL https://doi.org/10.14989/doctor.k21097Right学位規則第9条第2項により要約公開Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University 京都大学 博士（工学） 氏名 Vu Kiem Thuy 論文題目 Searching appropriate conditions for sustainable operation of soil aquifer    treatment（土壌浸透処理の持続的運転のための条件探索） （論文内容の要旨）  世界的に水資源が不足する地域があり、今後拡大することが確実となっている。これに対応する方法のひとつとして、下水処理水を直接または間接的に水道水源として活用する研究や取り組みが進められている。これを背景として本研究では、土壌浸透処理を組み込んだ下水処理水の間接的飲用再利用システムを取り上げている。土壌浸透処理プロセスは、下水処理水の追加的処理あるいは水の安全性を高める方法として有益であるが、土壌層内において物理的･化学的･生物的なクロッギング（詰まり）が起き処理が継続できなくなるという問題点がある。本研究は、物理的･化学的･生物的理由によるクロッギングの進行過程を追跡するとともに、その制御性を検討し、土壌浸透処理の持続的運転のための条件や方法を提案したものであって、6 章からなっている。  第 1 章は序論であり、世界的な水資源不足の問題を概観した後、下水処理水の間接的飲用再利用システムの意義を述べている。ついで、下水処理水の間接的飲用再利用システムの構成要素として頻用される土壌浸透処理プロセスを示し、その技術的課題を整理している。以上をもとに、本研究の目標を示すとともに本論文の構成を示している。  第 2 章は文献考察であり、まず、土壌浸透処理プロセスによる化学物質や微生物の除去機構に関する知見を整理している。次いで、土壌層内において物理的･化学的･生物的なクロッギングが起き処理が継続できなくなる現象に着目し、その原因に関する知見を整理するとともに未解明な点をまとめている。さらに、クロッギングが進行する過程をモデル化する手法を整理し、それらを土壌浸透処理プロセスの持続可能な運転管理手法として活用する必要があることを指摘している。以上をふまえて、本研究の役割と意義を明確にしている。  第 3 章では、実験室内に設置した土壌カラムを用いてクロッギングが進行する過程を定量的に把握した。カラム内に充填したのは砂であり、通水期間は 8 ヶ月である。試料水としては、標準活性汚泥法処理水、嫌気—無酸素—好気処理法（A2O）処理水など複数の種類の下水処理水を用いて比較している。間隙率などの物理的因子、有機物量などの化学的因子、従属栄養細菌数などの生物的因子を測定しつつ、物理的･化学的･生物的なクロッギングが現れる順序などを把握している。結果として、浮遊物質の負荷量が 20 mg/cm2 を超えると物理的なクロッギングが起きることを指摘した。  第 4 章では、京都市下水処理場内に設置したパイロットスケールの土壌浸透処理プラントを用いた検討を行っている。本プラントは、層厚 2.37 m であり、A2O 処理水を流入水とし、5年間継続して運転したものである。土壌層内に蓄積した重金属、有機物、微量汚染物質、バイオマスなどを測定するとともに、表層部と深層部で比較を行っている。この結果、表層部と深層部では、異なる細菌コミュニティが形成されており、その基質代謝機構も異なることを見いだしている。さらに、A2O 処理水は、汚染物質の濃度が低いことから土壌浸透処理に導く流入水として適切であることを指摘した。  第 5 章では、上記の実験および測定結果を用いて、物理的･化学的･生物的なクロッギングが生起する過程を記述する数学モデルを構築した。本モデルは鉛直方向の一次元浸透モデルであるが、これを水平方向の地下浸透流の流動も記述できるように拡張した。まず、クロッギングが起きにくい条件として流入水中全有機炭素が 5 mg/L 以下であることを指摘するとともに、バイオマス量については少なすぎると土壌層内の生物分解作用が弱まることから 1〜3 mg/Lの範囲が妥当であるとした。一方、検討した範囲では溶存酸素と硝酸態窒素の濃度は大きく影響しないことを示した。さらに、構築したモデルを京都府桂川流域に適用した。すなわち、京都市下水処理場で処理された水を桂川流域において地下浸透させ、一定距離を流下させた後で揚水するというものである。浸透水量や浸透距離を変化させたさまざまなシナリオを比較検討した。この結果、A2O 処理水は土壌浸透処理を長期に行うために適した流入水であるが、クロッギング速度を 0.02 cm/日/m 以下にするには、その注入速度を 200 cm/日以下とする必要が京都大学 博士（工学） 氏名 Vu Kiem Thuy あると指摘した。また、土壌浸透処理層内に生息する微生物は有機物除去能からみて大きな役割を果たしておらず、むしろクロッギングを引き起こすだけであるとし、持続的に運転するためには土壌浸透処理層内微生物の量をコントロールすることが重要であるとした。この観点から、流入水の水質を適切に管理することが最重要であることを指摘している。  第 6 章は結論であり、本論文で得られた成果について要約している。                                      氏 名 Vu Kiem Thuy （論文審査の結果の要旨）  世界的に水資源が不足する地域があり、今後拡大することが確実となっている。これに対応する方法のひとつとして、下水処理水を直接または間接的に水道水源として活用する研究や取り組みが進められている。これを背景として本研究では、土壌浸透処理を組み込んだ下水処理水の間接的飲用再利用システムを取り上げている。土壌浸透処理プロセスは、下水処理水の追加的処理あるいは水の安全性を高める方法として有益であるが、土壌層内において物理的･化学的･生物的なクロッギング（詰まり）が起き処理が継続できなくなるという問題点がある。本研究は、物理的･化学的･生物的理由によるクロッギングの進行過程を追跡するとともに、その制御性を検討し、土壌浸透処理の持続的運転のための条件や方法を提案したものである。得られた主な成果は以下の通りである。 １． 実験室内に設置した土壌カラムを用いてクロッギングが進行する過程を定量的に把握した。試料水としては、標準活性汚泥法処理水、嫌気—無酸素—好気処理法（A2O）処理水など複数の種類の下水処理水を用いて比較している。間隙率などの物理的因子、有機物量などの化学的因子、従属栄養細菌数などの生物的因子を測定し、結果として、浮遊物質の負荷量が 20 mg/cm2 を超えると物理的なクロッギングが起きることを示した。 ２． 京都市下水処理場内に設置したパイロットスケールの土壌浸透処理プラントを用いた検討を行っている。本プラントは、層厚 2.37 m であり、A2O 処理水を流入水とし、5年間継続して運転したものである。土壌層内に蓄積した重金属、有機物、微量汚染物質、バイオマスなどを測定するとともに、表層部と深層部で比較を行っている。この結果、A2O 処理水は、汚染物質の濃度が低いことから土壌浸透処理に導く流入水として適切であることなどを指摘した。 ３． 上記の実験および測定結果を用いて、クロッギング生起過程の数学モデルを構築するとともに、地下浸透流の流動も記述可能とした。まず、クロッギングが起きにくい条件として流入水中全有機炭素が 5 mg/L 以下であることを指摘するとともに、バイオマス量については少なすぎると土壌層内の生物分解作用が弱まることから 1〜3 mg/L の範囲が妥当であるとした。一方、検討した範囲では溶存酸素と硝酸態窒素の濃度は大きく影響しないことを示した。さらに、構築したモデルを京都府桂川流域に適用し、さまざまなシナリオを比較検討した。この結果、A2O 処理水は土壌浸透処理を長期に行うために適した流入水であるが、その注入速度は 200 cm/日以下にする必要があると指摘した。  本論文で得られた成果は、クロッギングの進行過程からみて土壌浸透処理プロセスの持続的な運転条件を定量的に提示したもので、下水処理水の間接的飲用再利用システムの構築に大きく貢献するものであり、学術上、実際上寄与するところが少なくない。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成 30 年 2 月 20 日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。  なお、本論文は、京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し、公表に際しては、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。  

土壌浸透処理の持続的運転のための条件探索

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土壌浸透処理の持続的運転のための条件探索

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