京都大学0048新制・課程博士博士(エネルギー科学)甲第20728号エネ博第356号新制||エネ||70(附属図書館)京都大学大学院エネルギー科学研究科エネルギー基礎科学専攻(主査)教授 坂口 浩司, 教授 萩原 理加, 教授 佐川 尚学位規則第4条第1項該当Doctor of Energy ScienceKyoto UniversityDFA

Shaotang, Song

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TitleA study on the on-surface synthesis of novel carbon-basednanoribbon structures( Abstract_要旨 )Author(s)Shaotang, SongCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2017-09-25URL https://doi.org/10.14989/doctor.k20728RightType Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University    （ 続紙 １ ）                             京都大学 博士（エネルギー科学） 氏名 SONG SHAOTANG 論文題目 A study on the on-surface synthesis of novel carbon-based nanoribbon structures （新規炭素ナノリボンの表面合成に関する研究） （論文内容の要旨）   本論文は、「新規炭素ナノリボンの表面合成に関する研究」についての結果をまとめたもので、６章からなっている。  第１章は序論で、一次元ナノ炭素細線であるグラフェンナノリボンの特徴や従来研究で明らかになった点や問題点、また本研究の目的について以下の様に論じている。グラフェンナノリボンは、幅やエッジ構造により電子状態が大きく変化する半導体であることが理論的に予測されており、太陽電池、熱電変換素子、スーパーキャパシタ等のエネルギー変換・貯蔵材料への応用が期待されている。前駆体分子を金属表面で化学反応を起こさせグラフェンナノリボンを合成する表面ボトムアップ合成法は、幅やエッジ構造の制御が可能であり、大きな注目を集めている。表面ボトムアップ合成法を用いて、これまでにアームチェア型エッジ構造を持つグラフェンナノリボンの合成は報告されているものの、異なる炭素キラル軸を持つアセン型グラフェンナノリボン等の異なる種類のグラフェンナノリボン合成には成功していない。本論文では、新しい前駆体分子を設計、有機合成し、坂口らが開発した２ゾーン化学気相成長法を用いて、従来に無い新しいグラフェンナノリボンの表面合成と共に成長機構について明らかにすることを目的とした。 第２章では、実験の詳細や方法論について論じている。２ゾーン化学気相成長法についての装置構成や原理・特徴、走査トンネル顕微鏡をはじめとする分析装置、本研究で用いた前駆体分子の有機合成法やその同定について論じている。 第３章では、従来困難であったアセン型グラフェンナノリボンの表面ボトムアップ合成に関する研究結果について論じている。剛直性と柔軟性を併せ持つ Z 文字型の化学構造を有するポリフェニレン分子（Z型前駆体分子）を設計、有機合成した。２ゾーン化学気相成長法を用いて、真空中で気化させた Z型前駆体分子を加熱した石英管を通して Au(111)基板に噴霧したところ、250 ℃の温度で鎖内ホモキラル型、且つ金属表面に吸着した特殊な平面構造を持つ前駆体高分子を形成することを見出した。このホモキラル・平面構造を持つ前駆体高分子は、更なる基板加熱により、375 ℃で交互脱水素縮環高分子、450 ℃で不完全縮環したグラフェンナノリボン、500 ℃で完全縮環したアセン型グラフェンナノリボンへと高効率で変換することを、走査型トンネル顕微鏡を用いた原子分解能を持つ化学構造計測により明らかにした。この高効率成長の原因を明らかにするため、密度汎関数法を用いて Au(111)表面上での Z型前駆体分子のコンフォーメーションに関する第一原理計算を行ったところ、本来、アキラル（鏡像対    称）構造を持つ Z型前駆体分子は、250 ℃の Au(111)表面上で一個のラジカル基が基板表面の金原子と相互作用することによりキラル（鏡像非対称）構造へと変化することを明らかにし、この特殊な前駆体分子の構造がホモキラル高分子の形成、高効率脱水素縮環反応によるアセン型グラフェンナノリボンへの変換を引き起こす原因であることを明らかにした。更に Au(111)基板上に生成したアセン型グラフェンナノリボンをシリコン基板上に転写して電界効果トランジスタを作成し電気特性を調べたところ、本材料は、ホール移動度が 0.26 cm2V-1s-1、オンオフ値が 88を示す優れた半導体特性を示すことが明らかとなった。 第４章では、幅広いグラフェンナノリボンの新規合成法について論じている。ターフェニル前駆体分子を用いて２ゾーン化学気相成長を行ったところ、250 ℃で Au(111)基板上にターフェニル前駆体分子が重合した前駆体高分子が生成した。従来報告されている超高真空蒸着法での作製よりも非常に高密度で、且つ平行配列した構造を取ることが明らかになった。この構造では、ターフェニル前駆体高分子間距離が 0.1 nmと短く、600 ℃の加熱により効率良い分子内及び分子間脱水素反応を引き起こし、ボトムアップ表面合成を用いたグラフェンナノリボンとしては最大の分子幅 7.2 nm を持つアームチェア型グラフェンナノリボンの合成に成功した。また反応機構として、500 ℃までの基板温度では前駆体高分子が Au(111)表面上に強く吸着した状態で起こる静的脱水素縮環反応が、550 ℃以上の基板温度では前駆体高分子がAu(111)表面上を拡散して鎖間で反応する動的脱水素縮環反応が起こることを明らかにした。 第５章では、グラフェンナノリボンの新規二次元構造について論じている。クリセン基を持つ前駆体分子を有機合成し、２ゾーン化学気相成長を行ったところ、250 ℃で Au(111)基板上でクリセン分子が単結合した前駆体高分子が形成した。更に 450 ℃の加熱により分子内脱水素縮環したキラル型グラフェンナノリボンが生成し、続いて鎖の先端同士で結合したグラフェンナノリボンの二次元構造が形成することを明らかにした。 第６章は結論である。本研究で得られた結果の意義や関連研究分野における位置について論じている。第３章で明らかにしたアセン型グラフェンナノリボンの成長機構は、生物触媒に見られる分子変形、キラル、自己組織化、高効率化学反応等の特性を示す表面触媒反応の初めての例であり、生物模倣型表面反応の概念を創出した。また同材料は、優れた半導体的性質を示すことから、エネルギー変換・貯蔵に利用できる機能性ナノ材料としての利用が期待される。また、第４、５章で明らかにしたグラフェンナノリボン鎖同士の脱水素縮環反応を利用した従来に無い広い幅を持つアームチェアエッジ型グラフェンナノリボンや鎖先端同士で連結したグラフェンナノリボンの２次元構造は、新しいナノ炭素構造であり、新しい物性が期待される。以上から、本研究で明らかにされた現象は、エネルギー変換・貯蔵を目指す材料研究分野において大きく貢献する成果であると結論された。      （続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨）  本論文は、エネルギー変換・貯蔵材料として期待される新規炭素ナノリボンの表面合成に関する研究について纏めたものであり、得られた主な成果は次の通りである。  １．剛直性と柔軟性を併せ持つ Z文字型のポリフェニレン分子（Z型前駆体分子）を設計、有機合成し、坂口らが開発した２ゾーン化学気相成長法を用いて、これまで困難であったアセン型グラフェンナノリボンの表面合成に成功した。各成長温度において走査型トンネル顕微鏡による原子分解能を持つ化学構造計測と密度汎関数法を用いた第一原理計算により、以下の機構でアセン型グラフェンナノリボンが Au(111)基板上で成長することを明らかにした。自由空間でアキラル（鏡像対称）構造を持つ Z 型前駆体分子は、250 ℃に加熱した Au(111)表面上で、前駆体分子内で生成した二個のラジカル基の内一個が基板表面の金原子と相互作用することによりキラル（鏡像非対称）構造へと変形し、右手系分子、左手系分子毎に各エナンチオマーがコンフォーメーションを識別して自己組織化すると共に排他的重合反応を起こし、特殊な平面構造を持つホモキラル型前駆体高分子へと成長した。この特殊な高分子構造は、500 ℃までの基板加熱により連鎖的に脱水素縮環反応を効率良く誘発し、アセン型グラフェンナノリボンに高効率で変換することが明らかになった。以上の成長機構は、生物触媒に見られる分子変形、キラル、自己組織化、高効率化学反応等の特徴を示す表面触媒反応の初めての例であり、生物模倣型表面反応の概念を創出した。更にアセン型グラフェンナノリボンの電界効果トランジスタを作製し電気特性を調べたところ、本材料は、優れた半導体特性を示すことが明らかとなった。 ２．ターフェニル誘導体を前駆体分子として用い、２ゾーン化学気相成長法により 250 ℃に加熱した Au(111)基板上で高密度に平行配列したポリパラフェニレン高分子を形成させ、更に 600 ℃の加熱により分子内及び分子間脱水素縮環反応を誘発させ、ボトムアップ表面合成として得られたアームチェアエッジ型としては過去最大の幅 (7.22 nm)を持つグラフェンナノリボンの合成に成功した。また詳細な反応機構について明らかにした。 ３．有機合成したクリセン誘導体を前駆体分子として用い、２ゾーン化学気相成長法により 250 ℃に加熱した Au(111)基板上に前駆体高分子を形成させ、450 ℃の加熱により分子内脱水素縮環したグラフェンナノリボンが生成し、続いて鎖の先端同士で結合したグラフェンナノリボンの二次元構造が形成することを明らかにした。 以上の結果は、エネルギー変換・貯蔵を目指す機能性ナノ材料研究に大きく貢献する。よって、本論文は博士（エネルギー科学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成 29年 8月 25日実施した論文内容とそれに関連した試問の結果合格と認めた。 論文内容の要旨、審査の結果の要旨及び学位論文の全文は、本学学術情報リポジトリに掲載し、公表とする。ただし、特許申請、雑誌掲載等の関係により、要旨を学位授与後即日公表することに支障がある場合は、以下に公表可能とする日付を記入すること。 要旨公開可能日：     年   月   日以降 

新規炭素ナノリボンの表面合成に関する研究

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