京都大学0048新制・課程博士博士(工学)甲第20397号工博第4334号新制||工||1672(附属図書館)京都大学大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻(主査)教授 安部 武志, 教授 作花 哲夫, 教授 陰山 洋学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDGA

Miyahara, Yuto

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Title Studies on Bifunctional Oxygen Electrocatalysts withPerovskite Structures( Abstract_要旨 )Author(s)Miyahara, YutoCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2017-03-23URL https://doi.org/10.14989/doctor.k20397Right学位規則第9条第2項により要約公開Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University（  続紙  １  ）  京都大学 博士（  工   学） 氏名 宮原 雄人 論文題目 Studies on Bifunctional Oxygen Electrocatalysts with Perovskite Structures  （ペロブスカイト構造を有する二機能性空気極触媒に関する研究）  （論文内容の要旨）  本論文は、金属－空気二次電池の空気極触媒としてペロブスカイト構造を有する酸化物および酸塩化物を用いたときの酸素還元反応（ORR）および酸素発生反応（OER）についての研究をまとめたものであり、序論および２部５章で構成されている。第１部はモデル電極を用いた研究成果であり、第２部では新規な触媒を作製した研究成果をまとめている。   序論では、金属－空気二次電池がリチウムイオン電池よりも高い理論エネルギー密度を有することを示し、特に亜鉛を負極に用いた亜鉛－空気二次電池を研究する必要性について述べている。また、これまでの研究報告を俯瞰することにより、金属－空気二次電池の解決すべき重要な課題は、１）空気極の ORR と OER の反応機構を基礎的に明らかにすること、２）新規な空気極触媒を探索することであることを示し、本研究の目的と意義を述べている。   第１章では、合剤電極で空気極触媒活性を有することが知られている LaMnO3、La0. 8Sr0. 2MnO3および La0. 8Sr0. 2CoO3について、パルスレーザー堆積法によりペロブスカイト酸化物薄膜電極を作製し、対流ボルタンメトリー法により空気極触媒活性を評価している。まず、得られた酸化物薄膜の電子伝導性をフェリシアン化物イオンの還元反応により定性的に評価し、電極として十分な電子伝導性を有することを明らかにしている。ORR 活性評価で得られた電流はいずれの酸化物薄膜においても非常に小さく、ペロブスカイト酸化物自体の ORR 活性は低いことが明らかとなった。すなわち、合剤電極における ORR 経路は、炭素上で酸素が 2 電子還元を受けて、中間体として生成する過酸化水素イオンをペロブスカイト酸化物上で不均化分解するものであることが示唆された。これに対して、薄膜電極の OER 活性は合剤電極と大きく変わらず、活性序列も一致したことから、合剤電極における OER 経路の第一段階はペロブスカイト酸化物上で進行することを結論づけている。   第２章では、高い電子伝導性を有する La0.8Sr0. 2CoO3単結晶電極を用い、これを基本指数面で切り出すことにより、ORR および OER に対する触媒活性の指数面依存性について調べている。これにより、ORR 活性には有効な特定の指数面は存在しないが、OER活性は指数面に依存することを見出している。OER 活性の序列は各指数面でのコバルト表面密度の序列とは一致しないことから、含酸素官能基－指数面間の結合エネルギーが関与していることが示唆された。また、単結晶電極表面に炭素を固定化させて ORR活性を調べた結果、ORR 活性は大きく向上することを明らかにしている。すなわち、ペロブスカイト酸化物の ORR活性発現には担体として用いられる炭素の触媒的寄与が重要であることを明らかにしている。   第３章では La0. 8Sr0. 2CoO3 単結晶電極を用いて ORR および過酸化水素還元反応（PRR）、OER 活性変化について調べている。電位走査のサイクル数に伴い、OER 活性は変化しなかったのに対し、ORR および PRR 活性は経時変化を示した。特に、PRR 活性は 100 サイクル後にはほとんど活性を示さなかった。電位走査前後における単結晶電極の X 線光電子分光およびラマン分光、X 線回折測定の結果、ORR および PRR 活性京都大学 博士（  工   学） 氏名 宮原 雄人 の経時変化は単結晶電極表面における酸素空孔の増大に起因することと結論づけている。   第 ４章 では 、コバ ル ト系 ペロ ブスカ イ ト酸 塩化 物であ る Sr2CoO3Cl お よびSr3Co2O5Cl2 を作製し、空気極触媒活性を合剤電極により調べている。遷移金属カチオンの価数が活性に大きな影響を与えることから、同じ結晶構造およびコバルト価数を有する LaSrCoO4 と活性の比較を行った結果、いずれの酸塩化物も ORR、OER 活性が大きく向上することを見出している。これにより、ペロブスカイト酸化物の塩化物イオン置換が空気極触媒活性の向上に効果的であることを示した。また、酸塩化物の OER活性は炭素の有無に影響されないことから、導電助剤の炭素を含まない場合でも、本触媒は利用可能であることを明らかにしている。さらに、塩化物イオン置換の効果を明らかにするため密度汎関数理論に基づく第一原理計算を行った結果、酸素 p バンドのエネルギー準位中心が LaSrCoO4と比較してフェルミ準位に近く、遷移金属－酸素の軌道の重なりが大きくなり、活性が向上したことを結論づけている。   第５章では、Sr2CoO3Cl に Fe ドープを行い、さらなる活性の向上および Fe 添加効果について調べている。ORR 活性に関して、20%程度の Fe 添加までゆるやかであるものの Fe の増加に伴い ORR 活性は減少すること、および Fe 全置換体である Sr2FeO3Cl はORR 活性を有しないことを見出している。一方、OER 活性は Fe20%置換体であるSr2Co0.8Fe0. 2O3Cl で最大となり、その活性はこれまでに最も OER 活性が高いことで知られている触媒を上回っていた。これは、サイクリックボルタンメトリーおよび XPS測定の結果から、Fe 置換量の増加に伴い Co イオンの酸化還元電位が高電位へシフトすること、および酸素欠損が減少することに起因することと結論づけている。    （続紙 ２ ）  氏 名 宮原 雄人 （論文審査の結果の要旨）  本論文は、金属－空気電池の空気極触媒としてペロブスカイト構造を有する酸化物および酸塩化物を用いたときの酸素還元反応（ORR）および酸素発生反応（OER）についての研究をまとめたものであり、得られた主な成果は次のとおりである。    １．LaMnO3、La0.8Sr0.2MnO3および La0.8Sr0.2CoO3について、パルスレーザー堆積法によりペロブスカイト酸化物薄膜電極を作製し、対流ボルタンメトリー法により空気極触媒活性を評価した。その結果、ペロブスカイト酸化物自体の ORR 活性は低いが、OER活性は高いことを明らかにした。   ２．La0.8Sr0.2CoO3単結晶電極を用いることにより、ORR 活性には有効な特定の指数面は存在しないが、OER 活性は指数面に依存することを見出した。また、ペロブスカイト酸化物の ORR 活性発現には担体として用いられる炭素の触媒的寄与が重要であることを明らかにした。   ３．La0. 8Sr0. 2CoO3単結晶電極を用いて ORR および過酸化水素還元反応（PRR）、OER活性変化について調べた結果、電位走査のサイクル数に伴い、OER 活性は変化しないのに対し、ORR および PRR 活性は経時変化を示した。特に、PRR 活性は 100 サイクル後にはほとんど活性を示さなかった。これらより、La0. 8Sr0. 2CoO3 触媒の ORR 活性が経時変化する要因を明らかにした。   ４．コバルト系ペロブスカイト酸塩化物である Sr2CoO3Cl および Sr3Co2O5Cl2 を作製し、空気極触媒活性を調べた結果、これらの酸塩化物の OER 活性は非常に高いことを示した。また、密度汎関数理論に基づく第一原理計算より、遷移金属―酸素間の軌道の重なりの増大が活性向上の要因であることも見出した。   ５．Sr2CoO3Cl に Fe ドープを行い、ORR および OER 活性について調べた結果、Feをドープすることにより、ORR 活性は少し低減したが、OER 活性は大きく向上することを明らかにした。   以上、本論文では、ペロブスカイト構造を有する酸化物の空気極触媒特性について、モデル電極を構築することにより、酸化物自体の触媒特性を明確にし、さらに、酸塩化物の触媒特性を調べることにより、新規な空気極触媒の設計指針を示しており、新規な学術的知見をともなっている。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成２９年２月１７日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。   なお、本論文は、京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し、公表 に際しては、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。  要旨公開可能日：  H29  年 ４ 月 １ 日以降  

ペロブスカイト構造を有する二機能性空気極触媒に関する研究

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/225622/1/ykogk04334.pdf

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