京都大学0048新制・課程博士博士(工学)甲第20410号工博第4347号新制||工||1674(附属図書館)京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻(主査)教授 北川 進, 教授 松田 建児, 教授 杉野目 道紀学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDGA

Kitao, Takashi

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Title Controlled Assembly Structures of Conjugated PolymersMediated by Coordination Nanospaces( Abstract_要旨 )Author(s)Kitao, TakashiCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2017-03-23URL https://doi.org/10.14989/doctor.k20410Right学位規則第9条第2項により要約公開Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University（ 続紙 １ ）  京都大学 博士（工学） 氏名 北尾 岳史 論文題目 Controlled Assembly Structures of Conjugated Polymers Mediated by Coordination Nanospaces  （配位ナノ空間を用いた共役高分子の集積構造制御） （論文内容の要旨）  本博士論文は、多孔性金属錯体が有するデザインされたナノ空間を用いた、共役高分子の集積構造制御についての研究をまとめたものである。 共役高分子は、伝導性や蛍光など、共役系に由来した興味深い光電子物性を示すことから、有機太陽電池や有機 EL など様々な電子デバイスへの応用が期待されている。共役高分子の物性は、ポリマー鎖内、ポリマー鎖間での相互作用、さらにはポリマー鎖の配向の秩序性が大きな影響を与える。ポリマー鎖が無秩序に絡まりあったバルク状態では、これらすべての要素が複雑に絡まりあうため、平均化された物性を示す。共役高分子鎖の配向、本数、次元性を精密に制御することができれば、共役高分子の光電子物性を制御、向上させるだけでなく、バルクでは見られなかったような隠れた特性を引き出すことが可能となる。 金属イオンと有機配位子の自己集積反応によって構築される多孔性金属錯体は、その構成要素を適切に選択することで、細孔サイズや次元性、また表面環境を自在に設計できる。本博士論文では、このデザインされたナノ空間を共役高分子の拘束場として用いることで、共役高分子の集積構造を分子レベルで制御し、その結果、様々な興味深い物性を発現させることに成功した。また、単一分子よりもさらに困難な異種分子の集積構造制御にも取り組んだ。p 型と n 型共役高分子は、それらを組み合わせることで電荷分離など、単独では発現しない機能を示すことから、現在の光電子デバイスの核となるものであり、その構造制御は非常に重要である。本博士論文では、多孔性金属錯体を用いることで、p 型 n 型分子の界面構造および集積構造の制御に成功した。  本論文は序章と本編六章から構成される。第一章、第二章では、一次元ナノ細孔に共役高分子を拘束し、集積本数に依存した特異な光電子物性を明らかにした。第三章では、三次元ナノ細孔に導電性高分子を拘束することで、多孔性と伝導性を併せ持つハイブリッド材料の合成を示した。第四章では、精密に設計されたナノ空間を利用することで、通常では取りえない新規 p-n 型接合界面の創製に成功した。第五章では、機能性の多孔性金属錯体を用いることで、ホスト・ゲスト相互作用を利用した創発機能について述べる。第六章では、多孔性金属錯体を鋳型とすることで、高配向性のポリマー粒子を合成した。以下にその概要を示す。  ポリシランはケイ素が一次元で連結した構造をもち、蛍光性や高い電気伝導性をもつ機能性ポリマーとして知られている。ポリマーの物性は主鎖上にσ電子が非局在化したσ共役に由来するためコンフォメーションに大きく依存する。第一章では、細孔サイズの異なる二種類の多孔性金属錯体にポリシランを導入し、単分子鎖状態でのポリシランのコンフォメーション、およびそれに伴う物性変化について考察を行った。また、細孔内に拘束されたポリシランは、バルクとは異なり光安定性が向上することを種々の測定によって明らかにした。 京都大学 博士（工学） 氏名 北尾 岳史 第二章では、ポリマー鎖の本数に依存した共役高分子の光電子物性を明らかにした。本章では、π共役高分子である無置換ポリチオフェンに着目した。無置換ポリチオフェンはポリマー鎖間の相互作用が強いため、融点を持たず溶媒に全く溶けないため、集積構造を制御することは不可能であった。そこでポリチオフェン鎖をナノ空間に拘束することで、細孔表面や細孔の形といった、多孔性金属錯体の骨格構造を反映した特異な集積構造をとることを明らかにした。さらに、ポリマー鎖の集積本数によって蛍光、キャリア移動特性が変化することを見出した。  第三章では、三次元細孔を有する多孔性金属錯体に、導電性高分子として知られるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を拘束することで、多孔性と伝導性の両方を兼ねそろえたナノハイブリッド材料を合成した。ポリマー鎖を細孔内に取り込むことで、PEDOT へのガス分子のアクセスが容易になり、得られた複合体は NO2のセンシング材料として高い性能を示した。  第四章と第五章では、異種分子の集積構造制御について取り組んだ。p 型と n 型の半導体はそのヘテロ界面において、電荷分離が起こるため、詳細な電荷ダイナミクスを明らかにするために界面構造を制御することは重要である。しかし、通常、異種分子の界面はランダムであり決まった構造をとらない。第四章では、一次元ナノ細孔に、有機太陽電池における代表的なドナーアクセプターの組み合わせとして知られるポリチオフェンとフラーレンを拘束することで、選択的にエンドオンの界面構造を作り出すことに成功した。第五章では、アクセプターとして知られる酸化チタンナノワイヤーを骨格に有する多孔性金属錯体を用い、その細孔内でポリチオフェンを合成することで、ドナーとアクセプターが分子レベルで交互に並んだ構造体を作り出し、電荷分離状態の長寿命化に成功した。  第六章では、一次元細孔を有する多孔性金属錯体を鋳型とすることで、プロセス性のない無置換ポリチオフェンの異方性粒子の合成を行った。ポリチオフェン粒子の電子線回折測定から、ホスト錯体の除去後もポリマー鎖の配向が保持されていることが分かった。ポリマー鎖を配向させることで、溶液重合のものよりも 3 桁高い伝導度を示し、本手法がプロセスできないポリマーの特性を向上させる手法として有用であることが分かった。  （続紙 ２ ）  氏 名 北尾 岳史 （論文審査の結果の要旨） 共役高分子の集積構造制御は、その物性を制御、向上させる上で重要であるため、様々な手法を用いて精力的に研究が行われている。本博士論文は、配位ナノ空間を用いることで、共役高分子の分子レベルの集積構造制御及び物性制御について研究した成果をまとめたものであり、得られた主な成果は次の通りである。  (1) ナノ空間を精密に設計することで、高分子鎖の本数を単分子鎖から数本鎖まで精密にコントロールし、共役高分子の光電子物性の制御、向上に成功した。また、本研究で明らかになった低次元集積体が示す光電子物性は、分子ナノワイヤーなど、ナノデバイスの設計指針となることが期待される。さらに制限されたナノ空間における、共役高分子の特異な光反応性を明らかにした。  (2) 複合体という観点から、錯体ナノ空間への導電性高分子の拘束が、多孔性と伝導性を併せ持つナノハイブリッド材料の創製へとつながることを見出した。細孔内の導電性高分子には、ガス分子が容易にアクセスできることから、得られた複合体は実用レベルに達する高いセンシング機能を有することが分かった。  (3) 多孔性金属錯体を用いることで、単一分子よりもさらに困難な異種分子の集積構造制御を行った。多孔性金属錯体の一次元細孔に p 型 n 型分子を拘束することで、通常では取りえないエンドオン構造を選択的に作り出すことに成功した。界面構造を分子レベルで精密に制御した例はほとんどなく、本研究によって得られた知見は、太陽電池などの光電子デバイスの設計指針として有用であると考えられる。また、n 型の多孔性金属錯体を用いることで、ドナーとアクセプターが分子レベルで完全に交互に並んだ構造体を作りだし、1ms と非常に長寿命の電荷分離状態を作り出すことに成功した。  本論文は錯体ナノ空間を用いた共役高分子の集合状態と物性の制御を論じており、その成果は、今後の材料設計に関し基礎的な知見を与えるものであり、学術上、実際上寄与するところが少なくない。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成２９年２月１５日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。 なお、本論文は、京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し、公表に際しては当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。  要旨公開可能日： ２０１７年 ４月 １日以降 

配位ナノ空間を用いた共役高分子の集積構造制御

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配位ナノ空間を用いた共役高分子の集積構造制御

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