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Somatosensory and auditory change detection system in humans
Authors
Koya YAMASHIRO
ヤマシロ コウヤ
山代 幸哉
Publication date
30 September 2009
Publisher
Abstract
ヒトが生存していくためには感覚系に発生したあらゆる変化を素早く察知し、その変化に注意を向け、発生事象の詳細を吟味し、適切な行動へのドライブを発生させる脳内ネットワークが必要不可欠である。そして、このネットワークの最重要部分は個体の意識を必要としない自動処理であると推察される。近年、機能的磁気共鳴画像法(fMRI、以下fMRI)を用いた研究により、各感覚系において変化に対して活動する脳部位が報告されている。しかしながら、変化に対する脳活動の時間的動態についてはいまだに明らかにされていない。 彼らの研究室では、優れた時間分解能を有する脳波・脳磁図を用いてヒトの感覚情報処理機構について精力的に研究を行ってきた。その結果、ヒトの感覚情報処理は各感覚系に共通して刺激後約20~30msでピークを迎える初期活動と刺激後約100ms程度でピークを迎える後期活動にわけられることを明らかにした。さらに、初期活動の振幅は刺激頻度の変化にほとんど影響を受けない一方で、後期活動の振幅は刺激頻度が増すと減少し、刺激頻度が減ると増大することを確認した。これらの結果は、後期活動が初期活動のように刺激に対して1対1で反応するような単純な情報処理過程ではなく、より複雑な認知的過程を反映している可能性を示唆している。そこで、彼らは「後期活動は変化に対する自動応答である」との仮説を立てた。そして、後期活動が変化に対する自動応答だとすると後期活動は文字通りの刺激の変化のみならず突然の刺激の呈示(ON、以下ON)あるいは刺激の消失(OFF、以下OFF)に対しても誘発されるはずである。この仮説を証明するために脳波・脳磁図を用いて実験を行った。 第1実験として、刺激のパラメーターを容易に変えることができる体性感覚をターゲットに実験を行った。刺激には一定時間持続(1~3s)する3種類の刺激内間隔時間(ISI、以下ISI)10、20、50msに設定したトレイン電気刺激を用いた。刺激は右手手背に呈示し、その刺激のONとOFFにトリガーをかけ脳波を記録した。実験は後期活動が変化に対する自動応答として誘発されるという仮説を証明するために、刺激に注意を向ける条件とビデオに集中してもらい刺激に注意を向けない条件でそれぞれ行った。結果、注意・非注意時に関わらずON・OFF刺激に共通して刺激後100ms付近に陽性と陰性の脳活動(P100・N140)が誘発された。刺激が一定時間呈示され続けているにも関わらずP100・N140は刺激のON・OFF時にのみ誘発され(同じ刺激の連続は変化として検出されない)、さらに物理的な刺激が存在しない場合(OFF)にも誘発されることから、これらの反応が刺激自体に対する脳活動ではなく変化に対する脳活動を反映していることが示唆された。さらに、ON反応におけるP100・N140は3種類のISI条件で潜時が綺麗に揃っていたのに対して、OFF反応におけるP100・N140の潜時はISIに依存して延長していた。つまり、ISI50msの刺激の場合は50msごとに刺激が呈示されており、この刺激パターンを脳が記憶している。したがって、OFF反応においては次の刺激がこないことを脳が変化として検出できるのは刺激が終わってから約50ms経過してからである。その結果、刺激の実際のOFFポイントでなく、そのポイントから約50ms遅れてP100・N140が誘発されたと推察される。これらの結果から、後期活動は短期記憶により保持された変化前の事象と最新の事象との比較により誘発される皮質の自動応答であることが示唆された。 実験2では、後期活動の信号源について検討するために脳波より優れた空間分解能を有する脳磁図を用いて実験を行った。刺激は実験1と同様にトレイン電気刺激(ISI20ms)を用いて、刺激のONとOFFにトリガーをかけた。本実験においても被験者にはビデオを見てもらい、刺激を無視するように教示した。結果、実験1と同様にON・OFF刺激に共通して刺激後100ms付近に脳活動(P100m)が誘発された。この活動の信号源はON・OFF刺激に共通して第二次体性感覚野付近に推定された。先行研究において、第二次体性感覚野は体性感覚に起こった変化に対して活動する脳部位として報告されており、彼らの結果はこの報告とも一致した。これらの結果から、後期活動は主に高次感覚野の活動により構成されることが示唆された。 先行研究において各感覚系に共通する初期活動・後期活動が誘発されたことから、実験3では、聴覚においても後期活動が変化に対する自動応答を担っているかどうかを検討することを目的とした。実験は1000Hz純音の継続音と1000Hz純音によって構成される2種類のトレイン音(ISI:50、100ms)を用いて行った。本実験においても被験者にはビデオを見てもらい、刺激を無視するように教示した。結果、聴覚においてもON・OFF刺激に共通する100ms付近の脳活動(N1m、以下N1m)が誘発され、ON反応におけるN1mの潜時は3つのISI条件で綺麗に揃っていたのに対して、OFF反応におけるN1mの潜時は体性感覚実験と同様にISIに依存して延長していた。また、この活動の信号源はON・OFF刺激に共通して左右の上側頭回付近に推定された。先行研究において、上側頭回は聴覚に起こった変化に対して活動する脳部位として報告されている。これらの結果から、聴覚においても後期活動は主に高次感覚野の活動により構成され、変化に対する自動応答を反映する脳活動であることが示唆された。 以上、変化検出機構(後期活動)は短期記憶により保持された変化前の事象と最新の事象との比較により自動的に駆動され、その活動の責任部位は各感覚野の高次領域であることが示唆された
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