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thesis
触覚フィードバックを用いた体性感覚の操作
Authors
栗原 洋輔
Publication date
21 September 2016
Publisher
Abstract
人間が自らの肉体に対して持つ興味は大きい.多くの人間は体力的・知能的・美的な面で他の人間よりも優れた肉体を欲すると考えられ,また様々な特殊な体を持つ空想上のキャラクターに憧れ人間とは異なる構造の身体に興味を持つ物も多いであろう.だが身体機能の向上のためには通常長期間の継続した訓練を必要とし,人間とは異なる身体への変身は不可能であるといえる.科学技術の発展に伴い肉体形状および運動機能への物理的な介入方法が広まりつつあるが,未だに身体的リスクと金銭的コストが高く,複雑な装置を必要とするため誰もが気軽に利用できるものではない.このような背景から本研究では,人間の肉体そのものに介入するのではなく,肉体が生成する感覚である体性感覚を肉体外部から操作することで肉体の主観的特性を操作することを目標とする.主に身体表面の感覚を刺激するアクチュエータとして広く使われているボイスコイル型振動子は,様々な触感の呈示を簡便なセットアップで実現できる.したがってこれを身体運動に同期させて駆動する振動フィードバックシステムを開発し,運動に伴って発生する身体内部の感覚を操作することを試みる.体性感覚の操作に関する本研究は2 つの戦略によって構成される.一つは体性感覚の「増強」である.これは自己身体運動を把握する能力を高め,より鮮明に,あるいは詳細に運動状態を知覚させる量的な操作である.一方で,もう一つの戦略は体性感覚の質的な操作である「変調」である.これは身体自体の硬さや重さといった特性を変化させることであり,結果として身体を構成する材質・構造を主観的に変調することになる.これら2 つの戦略に沿った具体的な手法を,体性感覚の増強に関して2 件,変調に関しても2件設計した.体性感覚の増強に関しては,第一にロータリスイッチの回転に伴うカチカチとした触覚・力覚フィードバック「カチカチ感」に着目した.これを肘関節に付与して運動時の体性感覚を鮮明化し,腕立て伏せ姿勢の教示を試みた(第3 章).第二に,自動車運転におけるアクセルペダルの操作を補助するため,ペダルの角度が一定値変化する度に瞬間的なクリック振動を呈示することで,ペダル角度の把握能力向上および操作性向上を試みた(第4 章).体性感覚の変調に関しては,第一に様々な材質の衝突振動を再現する減衰正弦波モデルに着目し,これを身体運動に同期させて呈示することで身体材質感の変調を試みた(第5 章).これによりロボットやゴム人間といった特殊なキャラクターの体性感覚の再現を目指した.第二に,ロボットキャラクターのみに着目し,実際のロボットに生じる振動加速度を記録・モデリング・再生する手法によりロボットの内部構造に起因する体性感覚まで再現することを試みた(第6 章).またロボット感体験の総合的なリアリティ向上のため高品質な視覚・聴覚刺激を組み合わせたバーチャルリアリティゲームを開発した.また体性感覚の操作をより広範囲で行うため,既存の触覚ディスプレイの問題点を考察し,身体広範囲に均等な触覚刺激を呈示する触覚ディスプレイを開発した(第7 章).最後に本研究全体のまとめと結論を述べ,今後の展望を示す(第8 章).電気通信大学201
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Last time updated on 09/02/2018