奈良絵本「大織冠」について : 個人蔵本の翻刻と釈文

Abstract

Publisher奈良" 「大織冠」は、幸若舞の語り台本を読物に転用した舞の本の一つである。大織冠すなわち藤原鎌足の次女紅白女は、唐の太宗皇帝の后となり、興福寺金堂の釈迦如来のために宝物を贈る。ところが、一番の重宝である宝珠を海底の竜王に奪われてしまい、大織冠がそれを取り返すという壮大な物語である。  写本のほか、版木、奈良絵本、絵巻などが多数伝存するが、本稿で紹介するのは、三冊本の奈良絵本の上冊のみの端本である。まず、その本文の翻刻と釈文を作成し、版本二種(古活字版と寛永丹緑本)、および奈良絵本三種と校合する。次に、これら五件のうち挿絵を伴う四件と、挿絵の挿入箇所および描かれている場面の内容を比較する。その結果、本文は古活字版と大差ないが、挿絵には他本と同じものがある一方、本作品だけに見られる独自の場面もあることが明らかになった。

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