Kawai Masato

河合 正人

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自然観察会に参加してみませんか？ : 自然系博物館からの手紙著者 河合 正人雑誌名 阡陵 : 関西大学博物館彙報巻 54ページ 10-11発行年 2007-03-31URL http://hdl.handle.net/10112/00023974ヽ自然観察会に参加してみませんか？-―自然系博物館からの手紙—関西大学栂物館のなんでも相談会に、私が関わるようになったのは2004年の夏からで、先樅学芸員で元大阪市立自然史栂物館館長の宮武頼夫氏の誘いを受けたのがはじまりだった。私も自然系膊物館にいた者で、やはり昆虫を専門分野としている者なのだが、それが歴史物を中心とした、特に考古辿物を専門的に扱う l載物館、つまり文科系の婢物館に関わるのはどういう目的があるのだろうか？またはどのような意味があるのだろうかと考えてみた。開かれた大学、地域住民に密着した大学を目指す一つの方向性として、子供たちもなじめる機会を持とうということで、昆虫を主に扱う宮武氏、そして私にお呼びがかかったのだろうか？自然と文化の組み合わせということになると、迎和感を持たれるかもしれない。対象物が全く異なる感じがするのは確かである。しかし、自然観察会となると少し違ってくる。自然観察と一口に言ってもその対象や方法は様々で、自然物を研究対象として、みんなでいろんな角度から観るものから、入門的にゲームを楽しんだり、工作や料理を通して自然物に触れる試みのものまでいろんな形態の自然観察会がある。珍しい生き物や景色を見る観劇ツアー観察会風景- 10 -河合正人的な観察会もあって、 これもそれなりに文化を見る ことができるものではあるが、通＇常は何かの分野の専門的な範囲を詳しく見るものが多く、一見、人間が作り 出す「文化」の産物とは縁がなさそうに見える ことが多い。 しかし自然観察というものは、何も深山幽谷の地や離島巡りをするものばかりではなく、身近な所の普通の生き物の生活を見たり、日常の現象を「主体的な目」で見ることからはじめられるものである。自然観察会は極近所の身近な場所でもできる。昆虫とか雑草とかを観察の対象にすると観察場所がぐっと身近になってくる。昆虫やいわゆる雑草類は生活のサイクルが早く、生存を他の植物や樹木に依存しているものや、日照や水の流れのちょっとした変化に影器を受けるものが多いが、それは環境の変化に対する反応が早いという ことである。そして昆虫を対象にするとエサやすみ家と しての樹木も対象になる。自然現境、時には景観をわかりやすく示してくれるものとしては樹木の分布も重要であるが、これらはその地域の産業に結びついた産業の誕生に関与することも多かったはず。観察テーマも人間の歴史や産業の影響力との関係が浮かび上がってくる。自然環境が人間の文化に与える影特は決して小さくはない。 どんな作物が生産されるのか、作物の競争相手は何か、どんな材木が供給できるのか、古い時代の工業製品に対してはその土地の樹木、水、土質、地形の影響は極めて大きかった。現在のように物質 ・小肖報共に流通機能が発達し、価値観の平均化が早まると見えてきにくいが、元々は産業の発達と自然現境は縁の深いものがあったはずで、自然観察の視点は歴史を見る眼と決して無関係ではない。私は昆虫を対象にした自然観察会を行うことが多い。そこでは先ずは見つけた虫の名前を調べ、またその時の様子や周りの、状況と比べ合わヽせて、大きな特徴を説明しようとするが、そこに続くテーマとして「どんなものを食べているのか」「どんな所に住んでいるのか」 「どんな地域に住んでいるのか」を説明したり、みんなで考えたりする。もう少し具1本的には 「どんな植物を食べているのか」「どんな虫を捕まえたり、寄生していた りするのか」「巣はどうやって作っているのか」 「成虫ならば、幼虫時代はどんな虫だったのか」「幼虫ならば、どんな成虫になるのか （成虫ならばおなじみの虫であることが多い）」「どんな気候を好むのか」「明るいところが好きなのか、暗いところが好きなのか」と、こんなことが話題になる。明るいところかI音いところかの選別は主に草原性か森林性かの:tm定でもある。川や池に縁のある昆虫もいて、生活の一時代を水中で過す昆虫もいる。それらは魚の餌になりやすいのかなりにくいのか、時には魚を餌にする肉食性の昆虫もいて魚介類との関係、また草食性ならば水叫畔物の知冬栄衰退との相互関係も大事な観察ポイントになる。水域にいる昆虫の問題では、昔は多かったのか？今は増えているのか減っているのか？川の様子の変化で増えているのか減っているのか？水田との関連はどうなのか？池、特にため池との結びつきは強いのか？森林のものならば、林がなくなれば絶滅するのか、逃げ出してどこかに生活の一部を変えて住み瘤 くのか、これが家屋などを利用して人間生活の中に入って くるものも居る。林を構成する樹種が雑木林的であるのか針葉樹等の単純な林に変わってきているのかで、糸Il々 と生 き残っているのか、近縁の別の種類に置き換わってしまっているのかを見る。草原性であれば、安定した深い草地で森林に移ろうとするような丈の高い草の上方を生活空間にしているのか、直射光が直接地表には届かないような草地の地表で生活しているのかどうかが問題になる。また、噛に耕されたり、最近のように大きな工事や住宅化が繰り返されて、裸地化することが多い、つまり撹乱の多い草地に適応しているのか否か？そんなことを見ながら現れる虫たちの頗ぶれを整理し、どんな環境を観察してきたのかをまとめる。これは私たち自然系の観察会の場合には生き物の生活だけを意識することが多いの- 11 -だけれど、実は人間の生活の影聰をずい分考察していることでもある。大阪府下一斉ドングリ祭りという佃しが、毎年、秋に行われる。吹田自然観察会という団体を中心に、大阪の各地で活動している自然愛好会の団体がそれぞれの活動地でドングリに関するいろんな工夫の行事をやるという一種の自然愛好派のお祭りである。ドングリのなる木がある林を観察会の地に選んで樹木を観察し、 ドングリを拾い集める。そして、 ドングリを使った工作やゲームで子供たちと遊び、またドングリを使ってク ッキーを焼いたり染色をしたりと、 ドングリとドングリのなる木を生活の中に生かしていた時代を思い起こすことを含めた総合的な自然観察会である。自然愛好会系のドングリ祭りの主体はドン グリのなる木の観察、そしてドン グリのなる木に集まる虫やドングリを食べる小動物の観察が主だが、 ドングリを使った生活の体験もある。実行団体の中には、 ドングリを主な食糧にしていたといわれる縄文時代に思いを馳せ、火起こしや縄を絢う作業まで試みる団体 もある。もっと一般的な自然観察会の具体的な内容はどんなものがあるのでしょうか？先ずは自然観察会に参加してみましょう 。ドングリで作ったネズミの家族

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