三村, 明弘

三輪, 秀明

小倉, 啓介

岡部, 美由紀

森, 秀夫

浦芝, 敬

谷口, 一磨

金田, 香央里

Japanese

Global Institutional repository of Nara Medical University

第12回奈良県臨床細胞学会ワークショッブ講演会テーマ 「尿細胞診断」日時 ：平成30年1月20日（土）午後1時～5時場所 ：奈良県立医科大学「当院における自然尿細胞診ー異型細胞判定の検討とその結果－J［はじめに］泌尿器細胞診報告様式が2015年に臨床細胞学会より発刊され、泌尿器の報告様式の統一化がはかられた。新しい報告様式では、 検体の適性、不適正をはかった後に、4段階の判定①陰性②異型細胞③悪性疑い④悪性に分けて判定することになっている(Tablel）。Table 1 泌原器細胞診新報告様式隠盟際開閉E盟国伝言函44 lnadequ<te (Inadequate） 不明Nega"ve foe maHgnan<y～5% (Negative) Atypical cells (Atypical) 15%程度Suspicious foe malignancy 70～95%程度(Suspにious)Malignant (Malignant) 95%～ 原因を故著し再検精査不要だが、他の検査で異常があれば再検原細胞診再検査あるいは経過観察再検と膜脱鏡検査を吉めた精査院院鏡検査を吉めた精査（泌尿器細胞診新報告械式解説書より）大阪労災病院中央検査部二村明弘岡部 美由紀金田 香央里小倉 啓介浦芝敬谷口一磨同 病理診断科森 秀夫三輪 秀明その中で異型細胞判定は、良悪鑑別困難を示す判定である。断定できない理由としては、異型細胞数が極めて少ない、異型細胞の細胞形態が不良（細胞変性）、細胞異型が弱い等が考えられている。そして大切なこととして、決して、 wastebasketのカテゴリーにしてはいけないとされている。しかし、 実際はその細胞形態は明らかになっておらず、そのためついついwastebasket的扱いとなってしまうこと もある。今回我々は、当院での異型細胞判定を見直し異型細胞判定となった細胞形態を分類し、検討を行ったので報告する。［対象および方法12014年10月～2015年9月までに、異型細胞判定とした自然尿細胞診124例を対象とした。検討項目は、①異型細胞判定における臨床背景。②異型細胞判定が全体に占める割合。異型細胞判定に占める尿路上皮癌の件数、および組織型。③異型細胞判定とした細胞の傾向。奈良県臨床細胞学会ワークショップ［結果］①異型細胞判定における臨床背景は、腸脱癌Folow-up ・ 46件、治療後（腸脱内注入療法・放射線療法） 16件、水腎症 ・尿管狭窄.14件、持続性血尿・ 13件、勝脱腫蕩の疑い・ 11件、糖尿病.6件、治療中（勝脱内注入療法） . 5件、IgG4関連疾患 ・4件、前立腺肥大・ 3件、腎炎・ 2件、結石 ・2件、健診・ 2件であり、特定の臨床背景は認められなかった （Table2）。② 異型細胞判定が全体に占める割合は6%。異型細胞判定に占める尿路上皮癌の件数は53件(43%）。組織型は、低位異型度尿路上皮癌（以下LGUC）が15件（12%）、高異型度尿路上皮癌 （以下HGUC）は27件 （22%）であった。また、腫療の組織型は不明であるが、勝脱鏡にて腫蕩を認めた症例が11件（9 %）認められた(Table3）。Table2 0異型細胞判定における臨床背景。（全124件）勝脱癌Follow-up治療後（勝脱肉注入療法・放射線療法）水腎症・尿管狭窄持続性血尿勝脱腫蕩の疑い糖尿病治療中（跨脱肉注入療法）lgG4関連疾患前立腺肥大腎炎結石健診件件件件件件件件件件件件ropuau『『3咽AFUF3aa守句3『，ι？・句4n吟44唱44A’ATable 3 当院における泌尿器新報告様式の結果(2014年10月～2015年9月・自然尿細胞診検体1928件、尿路上皮癌256件）HGUC'Jスウ%尿細胞診判定 件数（%） 癌件数（UCリス何）判定不能 5 (0.2) 3 陰性 1651(86%) 61(4~也1軸）異型細胞 124(6%) 53(43%2軸）悪性疑い 62(3%) 53(85%90軸｝悪性 86(4%) 86(100%10軸｝③ 異型細胞判定とした細胞の傾向は、 6タイプにわけられた （Photol6）。タイプlは、小型円形核細胞を主とするタイプでその細胞形態的特徴は、 NICは50%以上、核形不正軽度、核クロマチン軽度増量、核は好中球大核であった。タイプ2は、小型核形不整細胞を主とするタイプでその細胞形態的特徴は、 N/Cは30%以上、核形不正高度、核クロマチン濃染、核は好中球大核であった。タイ プ3は、 大型円形核細胞を主とするタイ プでその細胞形態的特徴は、N/Cは30～90%、核形卵円形、核クロマチン軽度増量、核は好中球の2倍以上の核であった。タイプ4は、大型変性異型核細胞を主とするタイ プでその細胞形態的特徴は、N/Cは30～90%、核形不正、核クロマチン濃染、核は好中球の2倍以上の胞縮会員aTR1 形円型咽－a＋E01市仁叫閃悪hHV1 nvTE Photo2 Type2.小型核形不正細胞良性良性45 奈良県臨床細胞学会ワークショップPhoto3 Type3.大型円形核細胞Photos Types.異型扇平上皮細胞核であった。タイプ5は、 異型扇平上皮細胞を主とするタイ プであった。そして、タイプ6は、 1～5の混合型であった。そしてこれら6タイプの出現率は、タイプ1は45例（36%）、タイプ2は27例 （22%）、タイプ3は23例 （19%）、タイプ4は6例 （5 %）、タイプ5は7例（6 %）、 タイ プ6は16例（13%）でタイプ1とタイ プ2が半数を占めていた。6タイプの組織型の内訳は、タイプ1は良性・ 29例、 LCUC・ 12例、HGUC・ 4例。タイプ2は良↑生.18例、LCUC・ 1例、 HGUC・8例。タイプ3は良性.16例、LCUC・ 0例、HGUC ・ 7例。タイ プ4は良性・ 5例、LCUC・ 1例、 HGUC・ 0例。タイプ5は良性 ・5例、LCUC ・ 0例、 HGUC・ 2例。タイ プ6は良f生・9例、 LCUC・ 1例、 HGUC・6例であった。タ46 Photo4 Type4.大型変性核細胞悪性 ， 良性， ． ’ ． ’‘ ‘ Photo6 TypeG. 1～5の混合． イプ1は良性とLGUCの鑑別が必要なタイ プであるのに対して、それ以外は良性とHGUCの鑑別が必要なタイプであることが判明した （Table4）。Table4 0異型細胞判定とした細胞の傾向（出現率）良性 HGUC LGUC 1.小型円形核細胞 45例（36%) 29伊l 4~］ 12例2.小型核形不正細胞 27例（22%) 18伊j 8例 1例3.大型円形核細胞 23例（19%) 16伊j 7例 。例4.大型変性核細胞 6~］ （5%) 5例 o~J l~J s.異型扇平上皮細胞 7例（6%) 5伊j 2~］ o~J 6.1～5の混合 16例（13q也） 9伊l 6例 l~J 124例 82~］ 27例 15例奈良県臨床細胞学会ワークショップ［考察］泌尿器細胞診報告様式2015では、 尿細胞診判定は①陰性②異型細胞③悪性疑い④悪性に分けて判定するこ とになっている。① 「陰性」は、良性と考えられる細胞からなり、悪性を示唆する細胞がみられない場合となっている。② 「異型細胞」は、異型細胞が出現しているが悪性疑い以上に診断できず、かっ、陰性とも断定できない場合となっている。③ 「悪性疑い」は， 悪性が疑われる細胞が出現しているが、異型の程度、出現細胞数や細胞変性（形態不良）等により悪性と断定できないものが含まれるとなっている。そして、④「悪性Jは、悪性と断定できる細胞が出現している場合であり、少なくとも10個以上悪性と考えられる細胞がみられるこ とが望ましいとなっている。また、それに加え、基本となる細胞の見方についても記載されている。異型細胞を評価する方法では、細胞の判定基準は大きく、 ①核クロマチン増量 ・核濃染、②N/C比大、③核形不整、 ④核偏在 ・突出、⑤核腫大、の5項目に注目するこ ととしている。これら 5項目は高異型度尿路上皮癌の判定には有力な項目であるとされていて、それぞれの項目ごとにさらに2段階の基準がもうけられている。 つまり①核クロマチン増量 ・核濃染では、一般に、中層型扇平上皮細胞あるいは正常尿路上皮細胞の核よりも濃いものを増量 （濃染）として認識し、好中球の核と同等かそれよりも濃いものを、高度増量（高度濃染）とする。②NIC比大では、 N/C比は、細胞質（細胞）全体の面積と核面積の比であり、 一般に50%以上あればN/C比大とされ、70～75%以上あれば高度のN/C比大とする。 ③核形不整で、は、正常の核（辺縁滑らかで円形）からの逸脱所見で、核の辺縁不整が見られれば、核形不整ありとし、 立体不整と歪な核形態が認められれば高度不整とする。④核偏在・突出では、核が細胞膜に接している場合を核偏在と し、 核突出（核偏在により核が本来の細胞膜の輪郭から外方に突出する所見）は高度の核偏在とする。ただし、細胞質内空胞による核偏在は含まない。⑤核腫大では、好中球、正常尿路上皮細胞、 あるいは中層型扇平上皮細胞の核より も大きいものを核腫大とし、 好中球の2倍以上の大きさを認める場合は高度腫大とする。となっているがどの所見がどの程度ある場合に、どの判定になるのかは不明な点もある。特に異型細胞判定はその判定自体が、異型細胞が出現しているが悪性疑い以上に診断できず、かつ、陰性とも断定できない場合とされている。今回の検討でも明らかとなったが、その臨床的背景に何か特別なものはな く、また出現細胞形態も数タイプが存在するため、判定者間差が大きくなる判定と考えられる。施設ごとに異型細胞判定を精査し、その傾向を知ることは大切なことではあるが、婦人科のベセスダシステムのように意義不明な異型細胞判定を標本全体の何%にするかを決めることも大切ではないかと思われた。今回の検討で当院における異型細胞判定は自然尿細胞診全体の6%であった、泌尿器細胞診報告様式2015では、 異型細胞判定の出現頻度については明確にはなっていないが、 10%前後が妥当ではないかと考えられ、 今後検討されるべき事項であると思われた。［参考文献11)泌尿器報告様式2015.5.2016：公益社団法人日本臨床細胞学会2）新報告様式に沿った 泌尿器細胞診カラーアトラス .1.2016：武藤化学株式会社47 

第12回奈良県臨床細胞学会ワークショップ : 講演会テーマ「尿細胞診断」

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第12回奈良県臨床細胞学会ワークショップ : 講演会テーマ「尿細胞診断」

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