制度:新 ; 報告番号:甲3353号 ; 学位の種類:博士(経済学) ; 授与年月日:2011/3/15 ; 早大学位記番号:新567

Shirai Koji

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博士論文概要書白井　洸志　本論文では、近年のミクロ経済学における主要な分析ツールの一つである lattice programming及びその数学的一般化について、それらがミクロ経済学の理論上の問題に貢献しうることを示す。尚、本論文は申請者による学術論文、An existence theorem for Cournot-Walras equilibria in amonopolistically competitive economy（第 3章）, Comparative statics and welfare variations（第 4 章）, On the existence of a submodular utility function（第 5 章）を中心に構成されている。また、第 4 章で用いられる数学の一部は申請者自身により、学術論文 A generalization ofmonotone comparative staticsにより提示されたものである。　論文は導入（第 1章）及び結語（第 6章）を除き、以下のように展開される。まず、第 2章においては論文中で用いられる数学上の主要部分について、最も基礎的な部分から記述する。経済学における lattice programmingの応用として最も重要なものとしては、比較静学単調性の理論が挙げられる。そこでは、最適化問題における目的関数の定義域が latticeとよばれる構造を持ち、かつ目的関数そのものが特定の性質（例えば supermodularity、the single-crossing property等）を満たす場合には外生パラメーターの変化及び実行可能領域の変化に従って、解が単調に変化することが知られている。また、非協力ゲーム理論においては最適反応の単調性を保証することで、純粋戦略ナッシュ均衡の存在性、ならびにパラメーター単調性といった応用上重要な結果が得られる（2.1節、2.2節）。　また、比較静学の単調性についてはゲーム理論の他にも decision theoryにおいてその重要性が指摘され、多くの研究がなされている。ところが、最も標準的な消費者の効用最大化問題については、lattice programmingにおける基本定理（Milgrom and Shannonの定理）が直接的には適用できない。そこで本論文では、その問題を回避するためのテクニックを提示する（2.3節）。その中には申請者自身による結果も含まれている。続いて、第 3章においては、2.1節及び 2.2節で提示した、比較静学単調性の理論を通じたナッシュ均衡の存在定理を、不完全競争下の一般均衡理論に援用する。当該分野においては、長年に渡って一般均衡の存在問題が議論されており、中でも既存の存在証明においては不完全競争主体の最適反応に直接的に仮定を課すことが要求されることが問題視されてきた。また、Arrow-Debreuによる完全競争下における存在証明と同等の一般性の下では均衡の存在性が保証されないことは既に反例により知られている。その一方、多くの応用研究において、不完全競争を組み込んだ一般均衡モデルが用いられていることも事実である。すると、消費者及び企業の選好ないしは技術にたい1して如何なる仮定を課せば均衡の存在性が保証されうるのかという点は、一般均衡理論の性質上、重要な問題といえる。特に、lattice theoryを経由する方法では、既存の存在証明において問題となっている、最適反応の凸値性が必要とされない点は重要である。結果として、本論文では消費者の需要が適切な形で集計可能であれば、仮に企業の生産技術が凸性を満たさなかったとしても、一般均衡の存在性が保証されることを示すに至った。次に、第 4章においては、分析対象は decision theory, 特に消費者需要の比較静学単調性に移される。また、そこでの主要な数学ツールは 2.3節に記述されるものである。具体的には、微分可能性や内点解の仮定を用いることなく、消費者需要の所得単調性の十分条件を提示し、さらにそれが余剰変分の所得単調性に関する必要十分条件となることを示す。また、ここでの結果は財の分割不可能性及び価格体系の非線形性も許容している。さらに、余剰変分単調性は間接効用関数の性質を用いて特徴づけられ、結果として、直接効用関数の性質、間接効用関数の性質、そして余剰変分単調性が同値命題として提示される。とくに、消費集合の凸性と価格体系の凸性及び submodularityが保証される限りにおいては、凹かつ supermodularな効用関数がここでの条件を全て満たすことも合わせて証明される。　最後に、第 5 章においては、比較静学単調性以外にも lattice theory が経済理論の中で有益に応用されうることを示す。具体的には、財の分割不可能性の下での顕示選好理論において、supermodularity 及び submodularity が重要な役割を果たすことを示す。そこでは、有限個の価格-消費データが効用最大化の帰結として見なしうることと、それが submodularな効用関数を最大化した帰結と見なしうることが同値であることが証明される。Chambers and Echeniqueによる先行研究においては、有限消費集合上では、データが効用関数によって合理化されることと、それがsupermodularな効用関数で合理化されることの同値性が示されている。本来、supermodularityと submodularityは互いに対になる性質であるが、本論文の結果は先行研究に矛盾するものではない。むしろ、有限集合上では、supermodular効用関数によるデータの合理化と submodular効用関数によるデータの合理化は互いに同値で、いずれもデータの合理化そのものと等価であることを示唆している。2

Lattice programming, its generalization, and applications to microeconomics

制度:新 ; 報告番号:甲3353号 ; 学位の種類:博士(経済学) ; 授与年月日:2011/3/15 ; 早大学位記番号:新5671textthesi

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