京都大学0048新制・課程博士薬学博士甲第1709号薬博第138号新制||薬||74(附属図書館)4756UT51-61-I182京都大学大学院薬学研究科製薬化学専攻(主査)教授 田中 久, 教授 宇野 豊三, 教授 大崎 健次学位規則第5条第1項該当Kyoto UniversityDA

Hojo, Yasuji

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Title Studies on Interaction of Thiol Ligands with Organomercuryand Chromium( Abstract_要旨 )Author(s)Hojo, YasujiCitationKyoto University (京都大学)Issue Date1976-03-23URL http://hdl.handle.net/2433/221144RightType Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University氏 名学 位 の 種 類学 位 記 番 号学位授与の日付学位授与の要件研 究 科 ･専 攻学位論文題 目???????? ? ???? ???13? ? ? ?? ?? ? ? ? ?【?????和 51年 3 月 23日位 規 則 第 5条 第 1項 該 当薬 学 研 究 科 製 薬 化 学 専 攻StudiesonlnteractiorlofThioILigarLdswithOrgarLOmerCuryarLdChromium(チオール配位子と,有機水銀およびクロムとの相互作用に関する研究)(主 査)論文調査委員 教 授 田 中 久 教 授 宇 野 豊 三 教 授 大 崎 健 次論 文 内 容 の 要 旨種々の有害金属の中で,有機水銀とクロムは多数の中毒例と高い毒性の故に特に注目されており,これらの金属による中毒の機構の解明,すぐれた解毒剤の開発が要望されている｡そのためにはこれらの金属の錯生成反応を種々の角度から研究することが必要であるが,現在までのところその研究は少なく,特に生体内でのこれらの金属の挙動,毒性における特徴などを考察する上で有用な研究はほとんど見 当 らない｡有機水銀は典型的なb煩金属に属し,Pearsonの酸一塩基の概念によれば softな金属であり,従って生体内においても softな donor原子である硫黄を含む配位子との反応が重要である｡一方クロムは従来よりhardな金属に分類されており,そのことから硫黄との親和性は小さいと予想されるのであるが,生体にとって有害な Cr(ⅤⅠ)の毒性には生体内 SH配位子との反応が重要であり,還元されて生ずる Cr(ⅠⅠ)が毒性に寄与するとの示唆もなされている｡有機水銀にはペニシラミンが,クロムには EDTA,アスコルビン酸が,解毒剤として用いられてきたが,これらは必ずしも満足すべきものではなく,またその解毒機構も知られていないO他方, これらの金属は有害金属として注目されているだけでなく,203Hg,197Hgおよび 51Cr標識化合物として診断用に繁用されており,新しい放射性診断薬の開発のためにもこれらの金属の錯体化学の研究は望まれているところである｡ また Cr(ⅠⅠⅠ)は近年 SH基との相互作用を通してインシュリンの作用を媒介することが見出されたことにより,必須微量元素と見なされるようになり, この方面でも Cr(ⅠⅠⅠ)とSH 配位子との反応は興味がもたれる｡ 以上の諸点から著者はこれらの金属とSH基を有する錯形成剤との反応を詳しく検討することは有意義であると考え,比較のため硫黄以外の donor原子を有する錯形成剤も含めて,その水溶液中での錯生成反応を解析し,生成する錯体の構造を推定し,さらに生体高分子に結合したこれらの金属の,種々の錯形成剤による除去反応を検討し,次に列挙するような知見を得た｡(1) 毒性の点で大きな相違のあるメチル水銀 (MeHg)とフェニル水銀 (PhHg)について,ペニシラミンなどの錯形成剤との反応を,錯体の合成,元素分析,IR,NMR,pH 摘定法により検討し,S-N 型お- 382-よび S-S型配位子は金属対配位子-1'･1(S配位)および 2:1(S-N または S-S配位)錯体を形成し,S-0型および N-0型配位子は 1:1錯体 (各々SおよびN単座配位)のみを形成することを見出した.また PhHgとペニシラミンとの 1:1錯体は二量体であること,安定度定数の序列は MeHg-S>PhHg-N>PhHg-S>MeHg⊥N≫MeHg-0,PhHg-0 となること,RHg(R-Me,Ph)-Sおよび ｣ヾ 結合は各々7E-backbondingおよび o･一配位結合を含むこと,硫黄に対する有機水銀の親和性は無機水銀のそれよりもかなり小さいことなどが明らかとなった｡(2) 五種の有機水銀 (MeHg,EtHg,n-PrHg,PhHg,クロルメロドリン)と六種のポリメチレンジアミン (NH2(CH2)nNH2,n-2-6,12) と`の錯体の安定度定数を pH滴定の結果から計算するとともに,単離した錯体の構造を NMRにより推定した｡有機水銀はキレート性配位子 (n-2,3)とは 1:1キレート 2:1錯体および 2:1加水分解型錯体を,非キレート性配位子 (n-4-6,12)とは 1:1非キレート錯体 (N単座配位)および 2.･1錯体を形成した.錯体の安定度定数は配位子の塩基性および金属の電子吸引性に依存することを見出した｡(3)-モグロビンに結合した四種の有機水銀 (MeHg,EtHg,PhHg,クロルメロドリン)の各種キレート剤による除去の反応を,平衡透析法により検討した.除去率は SH キレ-ト斉TJ',NH2キレート剤の各群において,それらの有機水銀錯体の安定度定数と正の相関関係を有していた｡同一の安定度定数をもつ場合,SH キレート剤の金属除去率は NH2キレート剤のそれよりもはるかに高く,このことから金属除去の機構として-モグロピソの SH基とSH キレート剤との間の金属交換を推定した｡金属の SH キレート斉抑こよる除去率は金属のSH錯体が同一の安定度定数をもつ場令,EtHg>MeHg>PhHgの順に減少したが NH2 キレート剤の場合には有機水銀の種類による除去率の相違は見られなかった.(4)Cr(ⅠⅠⅠ)および Cr(ⅤⅠ)とSH キレート剤との反応を IR,電子スペクトル,pH滴定法により研究した結果,Cr(ⅠⅠⅠ)はペニシラミンとは 1:2単量体キレート(S⊥N-0配位)を,チオ乳酸とは 1:3単量体キレート(S-0配位)を形成することを見出した｡これらの錯体の安定度定数を計算して他の配位子のそれと比較することにより,Cr(ⅠⅠⅠ)に対する配位原子の親和性は S>N>0の順に減少することがわかった｡ このことは,Cr(ⅠⅠⅠ)イオンが従来の説とは異なってb塀金属の性格を有することを示すものであり,また Cr(III)-S結合の共有結合性も吸収スペクトルの解析により示唆された.Cr(ⅤⅠ)もCr(ⅠⅠⅠ)も同様にペニシラミンと反応してCr(ⅠⅠⅠ)-ペニシラミン1:2キレ-トを形成したが,その速度はCr(ⅤⅠ)からの方が圧倒的に大きかった｡この Cr(ⅤⅠ)の反応に必要な金属対配位子の比は 1:3であり,速度式は Rate-k[Cr(ⅤⅠ)][ペニシラミン]となった｡ この反応は,反応活性な中間原子価 Cr(Ⅴ)-のペニシラミンの配位と,その迅速な還元によって説明することができた｡(5)Crの各種タンパク質-のとりこみと, タンパク質からの除去反応をゲル炉適法により検討した.Cr(ⅤⅠ)のタンパク質へのとりこみ率は-モグロビン>血清アルブミン> ミオグロビンの順となり, これはタンパク質中の SH基含有率の順と一致した｡-モグロビンに結合した Crは SH キレート剤によってのみ迅速かつ大量に除去され,また Crのシステインによる除去反応において,-モグロビンー Cr-システインという三重錯体の存在を検出した｡以上の知見は,有機水銀およびクロムの生体内挙動を理解し,かつこれらの解毒剤を開発する上に,意-383-義ある資料を提供するものと考えられる｡論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨有機水銀およびクロムは現在有害金属として注目されているにもかかわらず,これらの金属の生体内での挙動の解明,毒性における特徴の考察,解毒に有効な薬剤の開発などに役立つ基礎的研究はほとんどされていなかった｡著者はこの点に着冒し,まずこれらの金属と生体成分との反応,解毒剤と考えられる錯形成剤との反応,生体内での挙動のモデルとして意義ある反応などを錯体化学的方法で検討することが重要と考え,主として低分子および高分子のチオール配位子との反応を解析し,多くの知見を得て,結合の様式,反応機構,生成する錯体の構造および安定度,生体成分に結合した金属の除去への錯形成剤の効果などを解明した｡その結果から従来より硫黄との親和性が強いとされていた有機水銀についてそのことが確認された｡一方硫黄との親和性が弱いとされていたクロムは,チオール配位子と安定な錯体を生成することを見出し,両金属ともに硫黄との結合がその生体内での挙動に重要な意義を有することが示された｡また毒性において大きく異る有機水銀と無機水銀,クロム (Ⅵ)とクロム (Ⅲ)の反応性の相違が明らかとなった｡以上のように本研究は有機水銀およびクロムの生体内挙動の解明,解毒剤の開発に意義ある基礎的資料を提供したものである｡よって,本論文は薬学博士の学位論文として価値あるものと認める｡-384-

チオール配位子と, 有機水銀およびクロムとの相互作用に関する研究

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/221144/1/yyakk00138.pdf

チオール配位子と, 有機水銀およびクロムとの相互作用に関する研究

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