京都大学0048新制・課程博士博士(医学)甲第20081号医博第4174号新制||医||1018(附属図書館)33197京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 湊谷 謙司, 教授 福田 和彦, 教授 浅野 雅秀学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Ohsumi, Akihiro

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TitleProtective effect of pre-recovery surfactant inhalation on lungsdonated after cardiac death in a canine lung transplantationmodel( Abstract_要旨 )Author(s)Oh umi, AkihiroCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2017-01-23URL http://hdl.handle.net/2433/218007RightType Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University京都大学 博士（  医  学） 氏 名 大 角 明 宏 論文題目 Protective effect of pre-recovery surfactant inhalation on lungs donated after cardiac death in a canine lung transplantation model （イヌ心停止ドナー肺移植モデルにおいて摘出前サーファクタント吸入は保護効果を持つ) （論文内容の要旨） 終末期呼吸器疾患に対して肺移植は確立された治療手段となっているが、増加する待機患者数に対するドナー臓器不足は世界的にも深刻な問題となっている。その対応策の一つとして、近年、諸外国において心停止ドナーからの肺移植プログラムが開始され、脳死肺移植と遜色ない成績が複数報告されている。心停止ドナーからの臓器移植では温虚血に伴う障害の評価が肝要で、移植前の修復が望まれる。当教室のこれまでの研究により、温虚血後のドナー肺においてサーファクタント機能が低下していることが示唆された。今回、ラット体外肺灌流モデルを用いて、温虚血障害を受けたドナー肺がサーファクタント補充により回復し得るかを検討した。 ビーグル犬に対して KCl を用いて心停止を導入し、室温で安置した。ビーグル犬を生理食塩水の吸入を行う生食群（n = 7）とサーファクタント群（n = 5）の２群に無作為に分け、４時間後の換気再開と同時に吸入を施行した。5 時間後にドナー肺をフラッシュし心肺ブロックを摘出した。冷保存の後、左肺全摘・片肺移植を行い、ドナー肺を再灌流した。再灌流 45 分後に右肺動脈を遮断し、再灌流 240 分後までの生存率、動肺コンプライアンス、酸素分圧、肺胞気動脈血酸素分圧較差 (Alveolar-arterial oxygen difference: A-aDO2)、肺内シャント率、肺組織湿乾重量比、肺組織内のアデノシン三リン酸（adenosine triphosphate: ATP）レベル、気管支肺胞洗浄液の炎症性サイトカイン（IL-8、TNF-α）レベルおよびタンパク量、ミエロペルオキシダーゼ（myeloperoxidase: MPO）活性の検討により移植肺の評価を行った。  温虚血中の吸入後、生食群の動肺コンプライアンスは変化しなかったが、サーファクタント群では有意に上昇した。再灌流後、生食群 2 例が 75 分後に重篤な肺水腫により死亡したが、サーファクタント群は 4時間後まで全例生存した。再灌流 4時間後の動肺コンプライアンス、肺酸素化能、A-aDO2、肺内シャント率、肺組織湿乾重量比はいずれもサーファクタント群で有意に改善した。肺組織中内の ATP 含量はサーファクタント群で有意に高値であった。気管支肺胞洗浄液中の IL-8、TNF-αおよびタンパク量は共にサーファクタント群で有意に低値であった。MPO 活性はサーファクタント群で有意に低値であった。組織学的に、サーファクタント群は生食群に比して、間質の浮腫・出血、好中球浸潤は軽度であった。 本実験において、サーファクタントの吸入投与により、動肺コンプライアンスの上昇を認めた。これは、微小無気肺の改善によるもので、その結果、換気血流不均等が改善し、肺酸素化能の回復をもたらしたと考えられる。さらに、サーファクタント投与による抗炎症作用は、肺胞毛細血管バリアの破綻に対しても保護的に作用したと思われ、肺水腫の軽減、肺胞内へのタンパク漏出の減少に影響を及ぼしたと考えられる。また、これらの影響が本来のサーファクタント機能、動肺コンプライアンスの維持に寄与することで、さらなる好循環を生みだしたと考えられる。なお、肺組織の ATP 含量を維持することにより、虚血再灌流障害が抑制されることが知られており、本実験でもその一因となった可能 性がある。 最後に、心停止ドナー肺に対する、摘出前サーファクタント吸入の虚血再灌流障害に対する抑制効果を確認した。サーファクタント吸入は心停止ドナーのグラフト機能改善に寄与し得ることが示唆された。   （論文審査の結果の要旨） 深刻なドナー臓器不足に対して、心停止ドナーの利用は一つの現実的な対応策である。心停止ドナーにおいては、温虚血による臓器障害の緩和が重要である。これまでの研究により、温虚血後のドナー肺においてサーファクタント機能の低下が示された。今回、イヌ肺移植モデルを用いて、温虚血中のサーファクタント補充がドナー肺の障害を緩和するという仮説を立て研究を行った。 心停止させたビーグル犬を室温で安置し、心停止 4 時間後から換気を再開し、同時に生理食塩水（生食群）もしくはサーファクタント（サーファクタント群）の吸入を施行後、ドナー肺をフラッシュし心肺ブロックを摘出した。2 時間の冷保存後、左片肺移植を行い 4 時間の再灌流評価を行った。 再灌流後、生食群の 7例中 2例が 75分後に重篤な肺水腫により死亡したが、サーファクタント群は 5 例全例が 4 時間後まで生存した。また、再灌流後、動肺コンプライアンス、肺酸素化能、肺胞気動脈血酸素分圧較差、肺内シャント率、肺組織湿乾重量比はサーファクタント群で有意に改善し、肺保護効果が示唆された。また、サーファクタント群において、気管支肺胞洗浄液中の炎症性サイトカインおよびタンパク量は有意に低値を示し、肺組織中のATP 含量は有意に高値を示した。また組織学的に、サーファクタント群は間質の浮腫・出血、好中球浸潤が軽度であった。 結論として、温虚血中のサーファクタント吸入は、心停止ドナーにおける肺障害を緩和すると考えられる。  以上の研究は「心停止ドナーにおける肺障害」の治療法の開発に貢献し、臨床肺移植におけるドナー肺不足対策に寄与するところが多い。   したがって、本論文は博士（ 医学 ）の学位論文として価値あるものと認める。   なお、本学位授与申請者は、平成 28 年 12 月 15 日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。 要旨公開可能日：      年   月   日 以降 

イヌ心停止ドナー肺移植モデルにおいて摘出前サーファクタント吸入は保護効果を持つ

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/218007/1/yigak04174.pdf

イヌ心停止ドナー肺移植モデルにおいて摘出前サーファクタント吸入は保護効果を持つ

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