京都大学アカデミックデイ2016開催日時: 2016年9月18日（日）10:00-16:00会場: 京都大学吉田キャンパス 百周年時計台記念館主催: 学術研究支援室（URA室）, 研究推進部研究推進課, 国民との科学・技術対話ワーキンググループ京都大学の学術研究成果発信の一環として包括的に登録末尾に別紙「参考文献」を追加(2018.11.6

林, 智昭

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Title英語も生きている！Author(s)林, 智昭Citation京都大学アカデミックデイ2016 : ポスター/展示 (2016)Issue Date2016-09-18URL http://hdl.handle.net/2433/216759RightType PresentationTextversionnoneKyoto University・前置詞during（「〜の間に」）は動詞dure（「続く、耐える」という行動を表す）からできた。・歴史をみると、元はフランス語durer,	ラテン語durareという語に由来。・動詞dureは1882年を最後に使われなくなり、現代英語には存在しない。・他にconcerning,	regarding（前置詞about（「〜について」）と同じ意味）などがある。→動詞らしさを失った前置詞「動詞派生前置詞（deverbal prepositions)」と呼ばれる。英語を題材に、言語変化の研究をやっています！言葉は、実は変化している！変化は、ゆっくりと進んでいく上の (i)	(ii)	を調べるために、(i) 通時的研究：その語が、歴史的にみてどのようにできあがったか？→変化が起き始めたのはいつ頃か。いつ、前置詞になったのか。(ii) 共時的研究：その語は、現代英語ではどうなっているのか？2. 二つの研究アプローチ3. 言語データ・1990年代以降、コンピュータの発達により、電子データを大量に処理できるようになった。・膨大なテキストデータは電子化され、コーパス (Corpus)	という形で公開されている。→現代英語、古い時代の英語、書き言葉、話し言葉など、目的によりさまざま。（例） COCA	(Corpus	of	Contemporary	American	English)：約5.2億語の現代アメリカ英語。BNC	(British	National	Corpus)：約1億語の現代イギリス英語。ARCHER	Corpus：1650年〜1990年の約200万語のイギリス・アメリカ英語。・英語の歴史的辞書を、研究に用いることもある（例文が豊富）（例）OED	(Oxford	English	Dictionary),	MED	(Middle	English	Dictionary)	など。・研究 (i)	では、コーパスが大活躍！・コーパスは、ジャンル（話し言葉、書き言葉、フィクション、雑誌、新聞など、例文がどんな種類のテキストなのか）についての情報も収録！→研究 (ii)	でも大活躍。・本研究で、やるべきこと＆解決すべきこと：(i) 1つ1つの動詞派生前置詞ができあがったプロセス（歴史）は異なる。(ii) 動詞派生前置詞のふるまい、特徴の違いは？（今、どうなっている？）「語彙→文法」という現象を研究し、言語変化の一端を解明していく！1. 研究の背景【1】言語変化の研究としては：(1)	動詞派生前置詞（未調査分）の記述研究(2)	英語の歴史と、言語変化の関係を考察→ノルマン征服直後（フランス語の言葉が流入）、中英語後期の前置詞の増加、などの影響は？【2】言語変化の研究は、英語教育の役に立つ？・大学生へのアンケート調査の結果「英語も生きているなんて、考えたことがなかった」→学校では、現代英語のルールを教える。では、英語の歴史はヒントとなる？cf.	polite [ai]	vs.	police [i:]（後者は、16世紀の大母音推移後、フランス語から借用）・英語の学習参考書（学参）には、明治・大正期に書かれたものが残っている。（例）現代英語では滅多に使われない「クジラ構文」(no	more…than…)	など→他に現代英語で使われていないものがあれば、学参の記述を修正する必要性（例）実際の現代英語ではdespiteが使われるが、日本人学習者はin	spite	ofを使う傾向がある。※本研究は、科研費（特別研究員奨励費、研究課題番号:	15J00373）の助成を受けています。7. 参考文献（別紙）5. わかったこと(i)	通時的研究→OEDで、昔の英語を、調べてみよう！・excluding,	preceding,	barringを調査。（例）preceding/followingには、前置詞before/afterのような違いがある？→先行研究によると、followingは20世紀後半に前置詞化。一方、precedingは20世紀までに前置詞になっていない。→コーパスで現代英語を見ると前置詞になりつつある。将来、前置詞になる？(ii)	共時的研究→英語ネイティブへのアンケート20世紀、消滅したbatingはネイティブも知らない動詞派生前置詞は、前置詞らしくない！(i) 過去の英語を見ると、将来（これから）英語に起こりそうな変化が見えてくる。(ii) 現代英語の中に、英語の歴史が見え隠れしている！（動詞派生前置詞が書き言葉で使われやすい理由も、歴史を見ると…）6. これから、やってみたいこと4. これまでにやってきた研究（の一部）参考文献  専門外の方々への「わかりやすさ」に焦点を置き、展示ポスターには出典情報を記載せず別紙にて配布しました。各節の内容に関わる参考文献は、発表者自身によるものも含め、以下に基づきます。出典の頁数など詳細な情報が必要な方、質問・コメントなどあれば、遠慮なく林 (hayashi@hi.h.kyoto-u.ac.jp) までお問い合わせ頂ければ幸いです。  1. 研究の背景 秋元実治. 2014.『増補 文法化とイディオム化』東京: ひつじ書房. Fukaya, Teruhiko. 1997. The Emergence of -ing Prepositions in English: A Corpus-Based  Study. In Masatomo Ukaji, Toshio Nakao, Masaru Kajita and Shuji Chiba  (eds.), Studies in English Linguistics: A Festschrift for Akira Ota on the Occasion of his  Eightieth Birthday, 285–300. Tokyo: Taishukan. 川端朋広. 2001.「英語における動詞派生接続詞の発達と文法化: provided/providing の接続詞 用法」, 秋元実治（編）『文法化―研究と課題―』97–119. 東京: 英潮社. 児馬修. 2001.「周辺的前置詞（接続詞）save, saving の文法化」, 秋元実治（編）『文法化― 研究と課題―』73–95. 東京: 英潮社. Kortmann, Bernd and Ekkehard König. 1992. Categorial Reanalysis: The Case of Deverbal  Prepositions. Linguistics 30: 671–697. Trousdale, Graeme. 2013. Gradualness in Language Change: A Constructional Perspective. In  Ramat, Anna Giacalone, Caterina Mauri and Piera Molinelli (eds.), Synchrony and  Diachrony: A Dynamic Interface, 27–42. Amsterdam/Philadelphia: John Benjamins.  3. 言語データ Biber, Douglas, Susan Conrad and Randi Reppen. 1998. Corpus Linguistics: Investigating  Language Structure and Use. Cambridge: Cambridge University Press. （斉藤俊雄・朝 尾幸次郎・山崎俊次・新井洋一・梅咲敦子（訳）『コーパス言語学―言語構造と用法の 研究―』, 南雲堂, 2003.） Hoffmann, Sebastian. 2004. Using the OED Quotations Database as a Corpus: A Linguistic  Appraisal. ICAME Journal 28(4): 17–30.   http://www.hit.uib.no/icame/ij28/hoffmann.pdf Mair, Christian. 2004. Corpus Linguistics and Grammaticalisation Theory: Statistics,  Frequencies, and Beyond. In Hans Lindquist and Christian Mair (eds.), Corpus  Approaches to Grammaticalization in English, 121–150. Amsterdam/Philadelphia: John  Benjamins. Traugott, Elizabeth Closs and Graeme Trousdale. 2013. Constructionalization and  Constructional Changes. Oxford: Oxford University Press.  ※言語データについては、Traugott and Trousdale (2013: 40–43) を参照。他の文献では、コーパスの概説 (Biber et al. 1998) や、OED を用いた研究方法のメリット・デメリットが述べられている (Hoffman 2004, Mair 2004)。   4. これまでにやってきた研究（の一部） 林智昭. 2013.「excluding の用法の歴史的変化―文法化の観点から―」『言語科学論集』19:  127–150. http://dx.doi.org/10.14989/185118 林智昭. 2015a.「preceding/following の非対称性―文法化の観点から―」『日本英文学会第 87 回大会 Proceedings』245–246. Hayashi, Tomoaki. 2015. Prepositionalities of Deverbal Prepositions: Differences in  Degree of Grammaticalization. Papers in Linguistic Science 21: 129–151.  http://dx.doi.org/10.14989/207859 林智昭. 2016a.「動詞派生前置詞 barring の通時的発達」『JELS』33: 10–16. Olofsson, Arne. 1990. A Particle Caught in the Act. On the Prepositional Use of Following.  Studia Neophilologia 62: 23–35.  5. わかったこと Görlach, Manfred. 1991. Introduction to Early Modern English. Cambridge: Cambridge  University Press. 林智昭. 2015b.「considering の前置詞・接続詞用法の共時的研究―レジスターの観点から―」 『日本語用論学会第 17 回大会発表論文集』10: 105–112. 林智昭. (in press)「『除外』の意味を表す周縁的前置詞の用法の棲み分けに関して」『日本 語用論学会第 18 回大会発表論文集』11. 山梨正明. 1995.『認知文法論』東京: ひつじ書房. 山梨正明. 2000.『認知言語学原理』東京: くろしお出版.  ※林 (2015b, in press) では、動詞派生前置詞が書き言葉で使われる傾向があると論じた。  6. これから、やってみたいこと 林智昭. 2016b.「文法指導への意味論的アプローチ: 言語変化の『文法化』を例に」『JACET  Kansai Journal』18: 106–125. 菊地翔太. 2015.「現代英語における譲歩を表す前置詞―英語史研究の英語教育への貢献―」 『専修人文論集』97: 375–391. http://id.nii.ac.jp/1015/00009385 寺澤盾. 2008.『英語の歴史』東京: 中公新書. 寺澤盾. 2015.「変容する現代英語―英語史と英語教育の接点―」『関東英文学研究』8: 11–18. 八木克正. 2007.『世界に通用しない英語―あなたの教室英語、大丈夫？―』東京: 開拓社.  ※【2】は以下に基づく。これらの研究は、言語変化を扱う英語学研究が、どのような形で英語教育へと貢献できるかを論じたものである。林 (2016b) は、英語の授業において「言語変化」という見方を紹介した調査結果をまとめたもの。polite vs. police などの例については英語史を教育へと活かす試みである寺澤 (2015) を参照。八木 (2007: 2) は、「クジラの構文」など、現代の学習参考書などの問題点を英語研究者の立場から論じている。八木 (2007: 170–179) の提起に応える先駆的研究として、学習者コーパス（JEFLLなど）を用いた調査を行い、日本人英語学習者は現代英語における頻度の低い in spite of などを過剰使用し、前置詞の使用時には 20%以上の頻度で誤りを犯す傾向がある、と報告した菊地 (2015: 386) がある。 

英語も生きている！

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