論文(Article)【諸言】雌ずい組織の観察は,不受精,不和合現象の研究や雌ずいの受精能力,あるいは受粉から受精までに要した時間などの調査を行う上で欠かすことができない.しかし,果樹関係の図書や報文の中では,雌ずいの微細構造にふれた部分は多いとはいえない.それは,ひとつには,雌ずいそのものが対象としてあまりに植物学的であり,自明の器官の一つとして取り扱われてきたからであろう.しかし,生長にともなう花器官の形態的,生理的変化をくわしく知っておくことは,現在,作物栽培の分野でも重要なことであり,これまでのように,花芽形成→開花→受粉・受精と簡単な記述ではすまされないように思われる.こうした理論的には自明の部分を,できるだけ実証しようとしてこれまでも光学顕微鏡による果樹類花器の観察調査の結果がかなり報告されている.しかし,光学顕微鏡による観察には限界があり,より微細な部分については十分実証できなかったと思われる.現在,わが国は電子顕微鏡の開発普及のレベルが高く,走査型電子顕徴鏡を使用すれば比較的容易に,物体の微細な表面構造を観察できる所から,植物体表面構造についても,これを駆使すれば,これまで指摘できなかった詳細な部分を明らかにすることが可能になった.この研究は,走査型電子顕微鏡(以下SEM)を用い, リンゴ及び二,三の落葉果樹の雌ずいの表面構造を観察し,光学顕微鏡(以下LMS)では明瞭に観察しえなかった点を補足しようとしたものである.departmental bulletin pape