FUNNELL, Martha M.

Community Repository of Fukui

（6）第376号　2009年（平成21年）7月5日発行（毎月1回5日発行）昭和53年3月22日　第三種郵便物認可　ISSN 0913-3380
● Martha M. Funnell（MS, RN， CDE）�
4
Diabetes Care from the USA ～米国CDE事情～�連載第4回�
略  歴�
Bachelor's Degree from Lenoir Rhyne College in Hickory, North Carolina �
Master Degree in Nursing from the University of Michigan�
1998年　米国糖尿病教育者協会　Distinguished Service Award�
1999年　米国糖尿病学会　Outstanding Educator in Diabetes Award�
2002-2003年　米国糖尿病学会 President Health Care and Education �
現職　　ミシガン大学医学部医学教育部 Research Investigator�
　　　　ミシガン大学糖尿病研究訓練センター 　行動・臨床・健康システム部門 Co-director�
翻訳された著書�
池田義雄監訳：糖尿病教育パ フーェクトガイド，医歯薬出版株式会社，2001．�
石井均監訳：糖尿病エンパワ メーント，初版，医歯薬出版株式会社，2001．�
三村悟郎監訳：糖尿病療養指導のためのコア・カリキュラム， メディカルレビュー 社，2002．�
門脇孝監訳：糖尿病エンパワ メーント　101のコツ，初版， 医歯薬出版株式会社，2005．�
門脇孝監訳：糖尿病セルフマネジメント教育101のコツ，初版， 医歯薬出版株式会社，2006．�
石井均監訳：糖尿病エンパワ メーント，第２版，医歯薬出版株式会社，2008．�
米国において、糖尿病教育ナショナル
スタンダードが策定され、すでに20年の
歳月がすぎました。ADA（米国糖尿病学
会）は、本スタンダ ドーの開発に中心的な
役割を果たしてきましたが、2007年ADA
とAADE（米国糖尿病教育者協会）は協
力して、糖尿病教育ナショナルスタンダー
ド（第4次改定）を報告しました1）。糖尿
病教育ナショナルスタンダ ドーは、多様な
診療状況においても、容認できる質を保
証するために、認定基準を満たしている
かを判定するという重要な意味がありま
す。メディケア（米国保険官掌保険）を含
め多くの保険会社は、ナショナルスタン
ダードに適合したした医療施設のみに、
教育に対する医療費償環を行っています。
筆者は、糖尿病教育ナショナルスタンダー
ドの第2・4次改定の策定委員会代表を
つとめ、この策定プロセスを通じて学ん
だ経験について述べたいと思います。
本スタンダ ドーが広く受け入れられるた
めには、糖尿病教育にかかわる幅広い機
関から策定委員を集めることが重要です。
策定委員会（表1）には、ADA/AADEを
中心に、米国疾病対策センターなどの国
家機関とともに、米国栄養士協会や米国
薬剤師協会からも参加いただきました。
策定委員には、1名の糖尿病患者が入り、
患者の立場から大きな貢献を果たしまし
た。糖尿病患者からの情報の提供と協力
がなければ、患者中心ではなく、医療者
中心のスタンダ ドーになってしまう危険
がありました。
糖尿病教育ナショナルスタンダ ドー（第
4次改定）では、糖尿病教育を“糖尿病自
己管理に必要な知識や技術、セルフケア
能力を促進するための継続的なプロセ
ス”であると定義しました。このプロセス
には、糖尿病とともに生きる人のニーズ、
目標、人生経験を織りまぜ、しかも根拠
に基づく標準化された方法を基盤にして
います。糖尿病教育の目的とするところ
は、情報を提供された上での意思決定、
セルフケア行動、問題解決、医療職者と
の積極的な共同作業を支援し、臨床的ア
ウトカム指標や健康状態、そしてQOL
を改善することです。
本スタンダ ドーを策定するうえでの課題
は、糖尿病教育の質を測定する基準を作
りあげる難しさでした。つまり、“どの
ような糖尿病教育が有効であるか”を示
す根拠は、論文として報告されたものの
他、ADA教育プログラム認定委員会の
見解や、糖尿病教育者が展開する教育方
法など、さまざまな考えがあり、統一見解
を得るに至っていなかったのです。また、
糖尿病教育は、従来の“病院やクリニッ
ク”という枠を超えて、薬局で薬剤師が糖
尿病教育を提供する場面も増え、そこで
も明確なアウトカムが求められるように
なりました。糖尿病患者数は著しく増加
傾向にあり、コミュニティにおいて糖尿病
教育を求めるニーズが高まっています。
したがって、糖尿病教育の認定基準をあ
まりに高く設定することは、教育活動の
縮小につながり、糖尿病教育を受けるこ
とができない患者が増加するという、大
きなジレンマを生むことになりました。
2000年に報告された糖尿病教育ナショ
ナルスタンダ ドー（第3次改定）では、対象
となる人 （々Target Population）の特性に
合った糖尿病教育カリキュラムが、展開
できていることが求められました。
ADA糖尿病教育認定施設として、監査
者によって判定され最終的に認可を受け
るためには、実績のある教育部門責任者
（Program Coordinator）の引抜きなど、
体制を作るために多くの経費がかかりま
した。それでも、ナショナルスタンダ ドー
認定施設には、医療機関からの紹介を含
め、患者が集中するようになり、糖尿病
教育の効率性・有効性・公正性が高ま
り、収益向上にもつながりました。
その結果、ADA糖尿病教育認定プログ
ラムは、2000年では1,283件でしたが、
2005年には1,926件に増加しました。もっ
とも、2000年から2005年にかけて、505
件が認定を停止されており、糖尿病教育
ナショナルスタンダ ドーに達することがい
かに困難であるかが示されています。
この段階を経て、第4次改定では、糖
尿病教育の指針のためのエビデンス（表
2）を設けました。第4次改定では、患者
中心の自己管理計画と、長期フォローアッ
プ戦略を実施していることが認定基準に
上がっています（図）。第4次改定では、
教育プログラムにそって知識や技術を伝
達するにとどまらず、行動変化を目指し
て、目標設定（Goal Setting）、行動計画
（Action Planning）、問題解決（Problem
Solving）がつながっているプロセス（＃5
～7）であることが求められました。さら
に個別性と継続性を重視し、長期フォロー
アップ計画（＃8）、アウトカムを測定する
方法（＃9）、継続した質改善：CQI（＃
10）が求められました。
行動変化をおこす鍵は何か？それを知
るのは、患者のみだということを、もう
一度考えてみましょう。互いに協力して
目標設定と問題解決に向かう“共同作業”
が、糖尿病教育ナショナルスタンダ ドーの
根幹にあります。
（訳：福井大学医学部看護学科　森川浩子）
文献
1）Funnell MM et al: National Standards for Diabetes
Self-Management Education, Diabetes Care,  30 :
1630～1637（2007）
は じ め に �
策定委員会を構成する�
糖尿病 を定義する�
直面するジレンマ�
糖尿病教育の新たな段階�
は じ め に �
策定委員会を構成する�
糖尿病教育を定義する�
直面するジレンマ�
糖尿病教育の新たな段階�
は じ め に �
策定委員会を構成する�
糖尿病教育を定義する�
直面するジレンマ�
糖尿病教育の新たな段階�
は じ め に �
策定委員会を構成する�
糖尿病教育 定義する�
直面するジレンマ�
糖尿病教育の新たな段階�
は じ め に �
策定委員会を構成する�
糖尿病教育を定義する�
直面するジレンマ�
糖尿病教育の新たな段階�
表1　策定委員会メンバー�
Task Force Chair Martha Funnell （看護師）�
American Association of Diabetes Educators Mark Peyrot  (心理学者)�
 Linda Siminerio （看護師）�
 Katie Weinger （看護師）�
American Diabetes Association Belinda Childs （看護師）�
 John Piette （心理学者）�
 Diane Reader （栄養士）�
American Dietetic Association Melinda Maryniuk （栄養士）�
American Pharmacists Association Brian Jensen （薬剤師）�
Centers for Disease Control and Prevention Gwen Hosey （看護師）�
Indian Health Service Tammy Brown （栄養士）�
Department of Veteran Affairs Linda Haas （看護師）�
Patient Centered Solutions Michel Weiss （糖尿病患者）�
表2　5つの基本理念�
図　糖尿病教育ナショナルスタンダ ドー（2007）�
糖尿病教育は、少なくとも短期間には、臨床指標やQOLを改善するのに有効である。�1
糖尿病教育は、従来の一方的な知識伝達型の指導から、より理論に基づいたエンパワ�
メントモデルに進化している。�
2
“唯一無二”といわれる教育プログラムやアプローチは存在しない。しかし、行動科学�
や心理学的な戦略を加えたプログラムは、アウトカムを改善する。さらに、文化や年齢を�
考慮した教育プログラムは、アウトカムを改善する。�
3
糖尿病教育において、継続的な支援は、患者が自己管理行動を継続する上で鍵となる。�4
行動上の目標設定をすることは、自己管理行動を支援する上で、効果的な戦略である。�5
構造� プロセス� アウトカム�
＃基準4�
教育を統括する�
コー ディネー ター �
＃基準3�
教育を受ける�
対象者の特性�
＃基準2�
諮問委員会�
＃基準1�
組織・使命�
組織の目標�
＃基準8�
個々のフォロー�
アッププラン�
＃基準7�
査定・計画・介入�
および記録�
＃基準6�
教育カリキュラム�
＃基準5�
教育担当者要件�
＃基準10�
CQI
＃基準9�
アウトカム測定�
CQI�
（Continuous Quality Improvement）�
継続した質改善�


糖尿病教育ナショナルスタンダード

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