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長期定域観測用水中グライダーの第1回海洋実験

Abstract

【概要】 長期に亘って一定の海域に留まり、海底から海面までの海洋観測を行う長期仮想係留用水中グライダー「ツクヨミ」の概要と第1回海洋実験結果を報告する。 【始めに】 現在長期海洋観測はアルゴフロート、係留ブイ、衛星、観測船などによって行われているが、いずれも一長一短がある。アルゴフロートは水深2000mまでの海洋環境を10日に1度程度、4?5年間に亘って観測する。現在約3600台のアルゴフロートが全海洋に展開され、準リアルタイムでデータを収集している。このアルゴフロートは海洋研究にブレークスルーをもたらした。しかし、海洋は広大であり、その観測密度は十分とは言い難い。最大観測深度も2000mに限定されている。また、海水中に浮遊するので、重要な観測点での定点観測ができない。常に同じ水塊を観測している可能性も否定できない。観測ブイは定点観測が行えるが、設置・維持のコストが大きく、観測点数を飛躍的に増やすことは難しい。衛星観測は海面付近の観測に限定される。観測船での観測もその観測点を飛躍的に増やすことは困難である。 このような状況に鑑み、長期に亘って妥当なコストで、海底から海面までの観測を行う手段として、筆者らは一定の海域内で海底から海面まで観測する水中グライダーの開発を提案し、平成21年度より開発を開始した。平成22年には小型模型を作成し、曳航水槽で流体力学的試験を行い、その形状を決定した。平成23年には、実機を作成し、同じ曳航水槽で滑走試験を行い、その安定した滑走と回頭性能を確認した。平成24年3月には「かいよう」により第1回海洋実験を行い、その基本的な機能を確認した。以下に、その概要を報告する。 【オペレーションの概要】   図1と図2はそれぞれオペレーションのイメージと外観を示したものである。ツクヨミは深海用フロート Deep NINJA(1)用に開発した浮力エンジンを搭載し、潜水・浮上する。通常の水中グライダーと同様に翼を利用して水中を滑走する。内蔵の電池を移動することにより、その重心位置を変えて、ピッチングと方位を制御する。高度計を搭載する予定で、海底に着底して一定期間スリープすることにより、観測時間を延長し、長期観測を実現する。水面浮上時にイリジウム経由でデータを伝送するとともに、GPSで測位し、一定の海域に留まる。1年以上の観測が可能である。適用可能海域を広げるため、最大水深は3000mとした。全長と空中重量はそれぞれ約2.5m、150kg である。 【シミュレーションと水槽実験】 水中グライダーでは最小限の電力で滑走を行うために、優れた流体力学的な形状を持つことが重要である。そこで、安定した滑走と回頭性能を同時に満たす形状を求めるために、1/2縮尺の模型を用いて曳航水槽で流体力学的実験を行い、翼の形状を決定した。さらに、この実験により得られたデータを用いて運動シミュレーションを行い、滑走性能を推定した。これらの結果を基に、実機を製作し、水槽を用いた滑走試験を行い、計画通りに安定した滑走や旋回ができることを確認した。図3は、九州大学応用力学研究所所有の曳航水槽で行った滑走試験結果の一例を示したものである。浅い俯角での滑走実験に限定されたが、最大で約0.6m/s の滑走速度を確認した。また、安定した旋回が行えることも確認した。 【第1次海洋実験】 第1次海洋実験では、500mまでの潜水と浮上、海面でのGPS測位とイリジウム通信などの基本的機能を確認した。また、安全のために細径ロープを接続して、潜水と浮上を行った。図4は実験結果の一例で、水深500m までの安定した潜水が行えることを確認した。また、海面浮上時に安定したGPS測位とイリジウム通信が行えることも確認した。BE13-60講演要旨 / ブルーアース2013(2013年3月14日~15日, 東京海洋大学品川キャンパス)http://www.godac.jamstec.go.jp/darwin/cruise/kaiyo/ky12-04/

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