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観光資源開発の方向性

Abstract

土地は資本、労働とならんで生産の三要素の一つである。しかし工業社会における主たる産業が製造業であり、そしてそこでの生産活動が土地の豊度をはじめとする自然条件に大きい影響を受けることなく、付加価値の増大およびそのための労働生産性が追求されるものであるだけに、土地の生産に対する役割はそれほど重視されることはなかった。今日の大衆観光は、そうした工業社会によってもたらされてきたものである。大衆の生存費以上の所得増や余暇時間の増加、交通・宿泊をはじめとする観光産業の発展などは、いずれも工業社会の成果であり、1960年代以降それらが互いに結びつくことによって、大衆観光は飛躍的に発展してきた。そうして観光資源の開発は、観光資源をベースにした観光地という土地への考察が十分になされないまま、製造業同様の付加価値の増大を重視したものになった。ただ観光資源開発は、そうした資本・賃労働関係によるところの付加価値の側面ばかりでなく、観光地という土地の特性が観光対象となっているだけに、農業同様に、土地の優劣に大きい影響を受ける側面もある。現実に、土地の優位性を追求しない観光資源開発の多くはこれまで失敗に終わってきた。本稿は、資本・労働・土地という生産の三要素という視点から、持続可能な観光資源開発の方向性を示そうとするものである

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