京都大学0048新制・課程博士博士(社会健康医学)甲第19636号社医博第69号新制||社医||9(附属図書館)32672京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻(主査)教授 佐藤 俊哉, 教授 今中 雄一, 教授 小西 郁生学位規則第4条第1項該当Doctor of Public HealthKyoto UniversityDFA

Ichikawa, Kayoko

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Title Effectiveness of Home Visits in Pregnancy as a Public HealthMeasure to Improve Birth Outcomes( Abstract_要旨 )Author(s)Ichikawa, KayokoCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2016-03-23URL https://doi.org/10.14989/doctor.k19636RightType Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University京都大学 博士（社会健康医学） 氏 名 市川 佳世子 論文題目 Effectiveness of Home Visits in Pregnancy as a Public Health Measure to Improve Birth Outcomes (公衆衛生対策として、妊婦への家庭訪問が出生アウトカムに及ぼす効果) （論文内容の要旨） 【背景と目的】早産や低出生体重などの出生アウトカムは、身体的・脳神経生理学的な障害と関連し、長期的に子どもの発達や健康に影響を与える。リスク因子として妊娠中の感染症、喫煙、妊婦のやせ、うつ、低所得などが知られており、これらのリスク因子は重複していることが多い。米国をはじめとして、妊婦に対する専門家による家庭訪問が実施されており、母子の健康と子どもの発達を支援するために妊婦に対する包括的な支援を行っているが、出生アウトカムに対する効果の検証を行った研究は少なく、結果も様々である。 本研究では、日本のハイリスク妊婦に対する家庭訪問の、出生アウトカム（早産、低出生体重）に対する効果を検証した。 【方法】2011年 7月から 1年間の間に京都市に妊娠届を提出したハイリスク妊婦を対象とした。日本では初めて、2011年から京都市が全てのハイリスク妊婦に対する保健師による家庭訪問を行っている。ハイリスク妊婦の定義は、「現在何らかの疾患を持つ妊婦、双子妊娠、10代での妊娠、22週以降に出生届の提出をした妊婦、望まない妊娠、未婚、外国人、妊娠届面接時の保健師判断」とした。教育を受けた保健師が、妊娠中に (平均妊娠 27.2 週) 1回以上 1時間以上の家庭訪問を行った。内容は、妊婦の周囲の支援状況を把握、健康教育や栄養教育、妊婦の健康チェック、必要時医療機関への情報提供、心理的支援などである。必要時には電話や再度の家庭訪問を行った。出生体重、出生週数、低出生体重 (2500g以下)、早産 (37週未満) をアウトカム指標とした。統計解析として、ベースラインで測定した家庭訪問に影響すると考えられる変数をすべて用い、家庭訪問を受ける probability を推定し、傾向スコアマッチングを行った。さらに妊娠 28週以内と 28週以降の家庭訪問の 2群に分け、サブグループ解析を行った。 【結果】研究期間中に妊娠届を提出した妊婦は 11,749人で、ハイリスク妊婦は1,023人、その内妊娠中に家庭訪問を受け入れた妊婦は 594人 (58.1%) であった。1023名のうち、アウトカムの欠損したデータを除き、964名 (家庭訪問群 410名、家庭訪問なし群 554名) を解析の対象とした。全ての対象者 964名のうち、家庭訪問を受けなかった群は受けた群と比べて、妊娠中の喫煙や飲酒があり、未婚であり、望まない妊娠である傾向が見られた。傾向スコアマッチングを行ったところ、介入群 (家庭訪問群) 311名、対照群 311名となった。二群の背景因子に差はなかった。介入群は対照群よりも、出生週数が 0.55週 (95%CI: 0.18-0.92) 遅くなり、早産のOdds比が 0.62 (95%CI:0.39-0.98) となり、出生体重が 107.8g (95%CI: 27.0-188.5) 増加した。サブグループ解析で、28週以降に家庭訪問を行った群 (209名) は、出生週数が 0.40週 (95%CI: 0.06 -0.74) 遅くなった。 【考察】本研究によって、日本の公衆衛生施策の中で行うハイリスク妊婦に対する家庭訪問は、早産を予防する可能性が示された。特に、28週以降の家庭訪問が有効であることが示唆された。家庭訪問を受け入れない重度ハイリスク妊婦に対して、               いかに家庭訪問を行うかがもう一つの公衆衛生上の課題である。 本研究の限界は、既存資料を用いた観察研究であるため、未測定の因子や、未知の交絡因子が存在する可能性がある。また、今回家庭訪問を行った回数を測定しておらず、今後の研究では家庭訪問の回数と出生時アウトカムの量反応関係を調査する必要がある。 【結語】本研究はハイリスク妊婦に対する家庭訪問が早産の予防に役立つ可能性を明らかにした。本研究は、日本の公衆衛生政策におけるエビデンスに基づいた政策評価の一助となる。  （論文審査の結果の要旨） 米国をはじめとして諸外国で、妊婦に対する専門家による家庭訪問が実施されているが出生アウトカムに対する効果への結論はでていない。そこで本研究では、日本の保健医療で行われている身体的、社会経済的にハイリスク妊婦に対する家庭訪問の出生アウトカム（早産、低出生体重）に対する効果を明らかにした。対象者のハイリスク妊婦は 1,023人で、その内妊娠中に家庭訪問を受けた妊婦は 594人 (58.1%) であった。傾向スコアマッチングを行い、家庭訪問群 311名と非家庭訪問群311名の二群を比較したところ、家庭訪問群のほうが、出生週数が 0.55 週 (95%CI: 0.18-0.92) 延長し、早産のOdds比が 0.62 (95%CI:0.39-0.98) となり、出生体重が 107.8g (95%CI: 27.0-188.5) 増加した。なお、リスク因子が重複している妊婦は傾向スコアマッチングで除外された傾向があり、解析対象はややリスクの低い妊婦であった。 この研究によって、日本の保健医療で行う軽度から中程度のハイリスク妊婦に対する家庭訪問は、早産を予防する可能性が示された。  以上の研究は軽度から中程度のハイリスク妊婦に対する家庭訪問の早産予防実態の定量化に貢献し、今後のより詳細な家庭訪問の効果の検証に寄与するところが多い。  したがって、本論文は博士（社会健康医学）の学位論文として価値あるものと認める。  なお、本学位授与申請者は、平成 28年 1月 27日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。  

公衆衛生対策として、妊婦への家庭訪問が出生アウトカムに及ぼす効果

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/215462/1/ysyak00069.pdf

公衆衛生対策として、妊婦への家庭訪問が出生アウトカムに及ぼす効果

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