京都大学0048新制・課程博士博士(医学)甲第19571号医博第4078号新制||医||1013(附属図書館)32607京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 羽賀 博典, 教授 武藤 学, 教授 竹内 理学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Nakatsuji, Masato

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Title EP4 receptor-associated protein in macrophages amelioratescolitis and colitis-associated tumorigenesis( Abstract_要旨 )Author(s)Nakatsuji, MasatoCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2016-03-23URL https://doi.org/10.14989/doctor.k19571RightType Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University京都大学 博士（医学） 氏 名 中 辻 正 人 論文題目 EP4 receptor-associated protein in macrophages ameliorates colitis and colitis-associated tumorigenesis （マクロファージにおける EP4受容体関連蛋白は腸炎と腸炎に関連した腫瘍形成を改善する) （論文内容の要旨） 炎症性腸疾患は、近年増加傾向にある深刻な腸管疾患であり、腸腫瘍形成にも関与している。プロスタグランジン E2 受容体には 4 種類のサブタイプ（EP1-4）があり、その中の EP4 受容体シグナルは、腸管炎症を抑制し、炎症性腸疾患の治療標的となることが示されていた。マウス実験において、プロスタグランジン E2 アゴニストや EP4 選択的アゴニストの投与により、DSS（デキストラン硫酸）により誘導される腸炎（以下 DSS 腸炎）の程度が減弱するという報告が以前よりされていた。しかし、ヒト臨床治験において、潰瘍性大腸炎患者に対して EP4 選択的アゴニストを投与した際に、下痢や血圧低下といった副作用が生じた。これらの副作用は、腸管上皮細胞や血管上皮細胞において、EP4 の下流にある cAMP産生が増加することに起因している可能性が高い。そこで、EP4と関連し、かつ cAMP の影響を受けない分子に着目した。最近同定された EP4関連蛋白（EP4 receptor-associated protein; EPRAP）は、in vitro では、マクロファージにおける EP4 経路の抗炎症作用に対して重要な役割を果たしているという報告がある。そこで本論文では、in vivo での EPRAP の役割を検証するため、腸炎や腸炎に関連した腫瘍形成における EPRAP の役割を研究した。まずEPRAP ノックアウトマウスでは DSS 腸炎の程度が増悪した。EPRAP ノックアウトマウスの骨髄を WT（野生型）あるいは EPRAP ノックアウトに移植したマウスの方が、WT マウスの骨髄を WT あるいは EPRAP ノックアウトに移植したマウスより DSS 腸炎の程度が高度であった。腸炎に関連した腫瘍形成に関して、EPRAP ノックアウトマウスあるいは EPRAP ノックアウトマウスの骨髄を移植したマウスの方が、AOM（アゾキシメタン）と DSS 投与により誘導される腸腫瘍形成が高度であった。EPRAP は正常の腸管ではほとんど発現していないが、DSS 腸炎、AOM/DSS 腸炎において、腸管間質や粘膜下層の単核球に豊富に発現していた。蛍光二重免疫染色において、EPRAP はマクロファージ、好中球に多く認められた。DSS 腸炎における EPRAP ノックアウトマウスの腸管間質マクロファージでは、炎症性サイトカイン遺伝子の発現が WTマウスに比べ著明に増加した。しかし、DSS 腸炎における EPRAP ノックアウトマウスの腸管組織では、好中球ミエロペルオキシダーゼ活性は WT マウスと有意差は認めなかった。WT マウスにおいて、EP4 選択的アゴニストであるONO-AE1-329 を投与すると DSS 腸炎の程度は減弱したが、EPRAP ノックアウトマウスでは DSS 腸炎の程度は減弱しなかった。EPRAP ノックアウトマウス、WT マウスの腹腔内マクロファージ、腸管上皮細胞を EP4 アゴニストで刺激して cAMP の上昇につき検討したが、EPRAP ノックアウトマウスと WT マウスの間に差は認められなかった。EPRAP ノックアウトマウスにおいて、DSS腸炎における腸管間質マクロファージのリン酸化 p105、MEK、ERK が増加しており、マクロファージがより活性化していると考えられた。マクロファージにおける EPRAP の役割を検証するために、マクロファージにおいて EPRAP を強制発現させたマウス(CD68-mEPRAP transgenic mice)を作製した。このEPRAP トランスジェニックマウスでは、DSS 腸炎の程度が減弱し、AOM とDSS による腸腫瘍形成の程度も軽度であった。EPRAP トランスジェニックマウスにおいて、DSS 腸炎における腸管間質マクロファージのリン酸化 p105、MEK、ERK は減少した。これらのデータを総合すると、マクロファージにおける EPRAP は腸炎抑制において重要な役割を果たしていることが示唆された。ヒトの病理組織学的検討においても、潰瘍性大腸炎患者の腸管間質において、EPRAP 陽性マクロファージの集積が認められ、潰瘍性大腸炎の重症度とマクロファージにおける EPRAP 発現は負の相関を示した。これらのことから、EPRAP は、炎症性腸疾患や colitic cancer に対する治療標的になる可能性が考えられた。  （論文審査の結果の要旨） 炎症性腸疾患は近年増加傾向にあり、腸腫瘍形成にも関与するため、新規治療法の開発が求められている。プロスタグランジン EP4 アゴニストは腸管炎症を抑制するが、cAMP による下痢、血圧低下などの副作用が生じうる。そこで申請者は、EP4 の下流因子 EP4 関連蛋白（EPRAP）の腸管炎症における働きを、遺伝子改変マウスで検討した。 DSS 投与による腸炎は、野生型マウスに比べ、EPRAP ノックアウト（KO）マウスで増悪し、CD68-EPRAP 過剰発現（TG）マウスで軽減した。AOM-DSS投与による炎症性腸腫瘍も、KO マウスで増悪し、TG マウスで抑制された。また、KO マウスの骨髄を移植したマウスでは、DSS 腸炎は増悪した。細胞内シグナルを検討すると、KO マウスでは EP4 アゴニストにより、cAMP 上昇は影響を受けずに、抗炎症効果が減弱した。DSS 投与時の腸管マクロファージ中のp105 リン酸化、MEK、ERK 活性は、KO マウスで上昇し、TG マウスで低下した。さらにヒト潰瘍性大腸炎手術症例では、炎症部位で EPRAP 陽性マクロファージが増加し、重症度と逆相関していた。そのため、腸管マクロファージにおける EPRAP は PGE2-EP4 の下流で、 cAMP を変動させず、p105-MEK-ERK を介して腸管炎症、炎症性腸腫瘍を抑制することが示唆された。以上の研究は、炎症性腸疾患治療に寄与する可能性がある。 したがって、本論文は博士（医学）の学位論文として価値あるものと認める。 なお、本学位授与申請者は、平成 28 年 1 月 27 日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。 要旨公開可能日：      年   月   日 以降 

マクロファージにおけるEP4受容体関連蛋白は腸炎と腸炎に関連した腫瘍形成を改善する

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/215397/1/yigak04078.pdf

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