京都大学0048新制・課程博士理学博士理博第22号新制||理||10(附属図書館)133京都大学大学院理学研究科物理学専攻(主査)教授 小林 稔, 教授 湯川 秀樹, 教授 林 忠四郎学位規則第5条第1項該当Kyoto UniversityDA

Nagata, Shinobu

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TitleNuclear Deformation and Nuclear Force, I( Abstract_要旨 )Author(s)Nagata, ShinobuCitationKyoto University (京都大学)Issue Date1960-12-20URL http://hdl.handle.net/2433/210743RightType Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University)学 位 の 種 類学 位 記 番 号学位授与の日付学位授与の要件研究科 ･専 攻学位 論 文題 目永 田 忍なが た しq)ぷ理 学 博 士理 博 第 2 2 号昭 和 35 年 12 月 20 日学 位 規 則 第 5 条 第 1 項 該 当理 学 研 究 科 物 理 学 専 攻N uclear D eform atiorL and N uclear Force, I(原子核の変形と核力, 1 )(主 査)論文調査 委員 教 授 小 林 稔 教 授 湯 川 秀 樹 教 授 林 忠四郎論 文 内 容 の 要 旨ヽ原子核の変形および回転, 振動の集団運動に関する従来の考察は運動学的な立場にとどまるか, あるいはそれぞれの場合に応じて便宜的に導入された有効力を用いるという現象論的な段階のものに限られていた｡ 永田 忍の本論文はこの段階を一歩進め, 実際の核力と核の変形との関係を直接にしらべようとする野心的な試みによってえられた結果を発表したものである0校内の核力に関しては, さきに Brueckner らが核力を Gam m el-T haler のポテンシャルによる二体散乱の反応マ トリックスから導いている｡これらは無限にひろがる核物質に対 してえられたものであるが,有限核の表面の影響はあまり大きくないと考えられるから, 核内の有効核力としてその結果を利用することができよう｡ したがって本論文ではこの核力にさらに近似をほどこしたものを採用し, 核は最初から変形しているものと仮定して, その変形のパラメーターを不定のままに㌧残し, この変形した力場内における各核子の軌道に相当する状態に低いほうから順次に核子をつめていく方法で核のもつエネルギーを算出している｡ このようにしてえられたエネルギーを極値にするという条件で核変形のパラメーターをきめるという変分方法にしたがって議論をすすめている｡実際の計算には取り扱いやすいためになるべく簡単でしかも回転準位のあらわれるものとして M g2 4 を例にとっている｡ えられた核エネルギーの値を変形パラメーターの関数として図示しており, 各準位が変形によって推移していくありさまが示されている｡ 実際の計算ではさらに核子間平均距離もパラメーターとして残し, その変分も行なって, 平均距離がやはり今まで推定されていた程度の値になるところで平衡点がえられることを示しているo M g 24 で計算された結果は核力のうち中心力の部分が変形をおこす主な力となっていることを示しているが,G am m el-T haler のポテンシャルをとった場合, 非中心力すなわちテンソル力, スピンー 軌道結合力も相当に寄与し, これらを無視すれば安定な変形がえられないことが示されている｡ したがって, 核変形にはテンソル力, スピンー 軌道結合力が不可欠のものであることを定量的に示している｡ 中間子論による核力との関係は, その場合テンソル力が再びスピンー軌道結合力という形- 1 -にもあらわれるので, 以上の計算から定量的な推定は困難であるが, 少なくとも中間子論の特徴である強いテンソル力が核変形に本質的な役割を演じていることは以上の結果から推定できる｡以上に述べたように,永田 忍の主論文は核変形の問題を従来のような運動学的考察でなく,力学の問題として核力から直接に取り扱うという正統的な研究をきわめて着実に発展させ, 少なくとも定性的に満足な結果を得たばかりでなく, 今後この方面- の研究の発展の緒をつくるという重要な役割を果たしたものであって, 原子核理論の進歩に大きい貢献をしたといってよい｡ その意味でこの論文は重要な意義をもつものである｡論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨永田 忍の主論文は回転の準位をもつ軽い原子核の変形の大きさを核子問に働く核力を用い変分の方法によって評価 したものである｡周知のように,原子核はその構成要素である核子問に強い近距離力が働くにもかかわらず,各核子は原子核の殻模型から知られているように独立軌道量子状態をもち,その上, 核は全体として集団運動, すなわち回転および振動を行なう｡ 前者に関しては近年 B rueckner らが実際の核力を用いてその性質が少なくとも原理的には理解できることを示したが, 後者, すなわち原子核の集団運動は従来現象論的に論じられているにすぎず,したがってなぜに原子核が変形し,集団運動を行なうかということを核力に立ちかえって論じる仕事にはいまだ誰も手をつけていないとい ってよい状態である｡ 永田 忍の主論文およびその後編である参考論文その 4 はこの問題に先鞭をつけたということに大きい意義をもつものである｡永田 忍は原子核理論の現状の分析から, 今や核変形の問題を核力に結びつけて考察しうる段階であるとの確信をもち,その手はじめに,例として軽い原子核で回転準位をもつものとして M g乏4 核の変形を核力から導くという野心的な研究にとりついた｡ まず N ilsson らにしたがい, 核が最初から変形していると考えてその変形の度合いをパラメータT として残し, この変形した核による平均ポテンシャル内の各核子の波動関数を試行関数に用い,核子問には二体の核力が働いているとしてエネルギーの期待値を求め,えられた結果を変形のパラメーターによって変分することにより安定な変形の皮合いを定めるといういわゆる変分方法を採用することによって上の目的に達することを試みている｡ 計算に用いた核力は現在もっともよく用いられているいわゆる G am m el-T haler ポテンシャルであったが, このポテンシャルのうち,中心力の部分, テンソル力の部分およびスピンー 軌道結合力の部分のいずれがどのようにきくかという吟味も行なっており, したが って他の形の核力, たとえば中間子理論による核力の場合にもその結果の予想をたてることができる形に論じてある｡えられた結果は現在の理論の段階においては満足すべきものであるといえよう｡ すなわち, 例にとったM g乏4の変形のありさまはこの考察によって大体実験値と矛盾 しないことが示されているOさらに,その変形に寄与する部分は主として中心力の部分であるが, いわゆるテンソル力の部分を無視 しては実際に合う結果がえられないことをかなり定量的にまで推論できることを示 している｡また,その類推をすすめることによって,中間子論で与えられる核力がやはりこの場合も正しい結果を与えるであろうという結論をえている｡以上に述べたように, 主論文の着想は核理論の現状から見てもっとも当をえたものであり,その上,常に面倒な計算を精力的に推しすすめて一応満足すべき結果に達し, 未知の分野の開拓に貢献した業績は高く- 2 -評価されてよいと患われる｡参考論文は4 編提出されていて,その4 は主論文の要旨でふれたように,永田 忍がその協力者の助力により,彼の着想を数値的に発展させたものである｡参考論文その 1 は原子核の集団運動を内部運動と非回転的な表面運動との結合と見る立場から核の有効慣性能率の大きさを説明しようとしたものであり, その 2は核変形と回転運動の起源を系の- ミル トン関数の分離という立場から論じ, 従来の核回転に与えられていた諸説の問の関連を示 したものである｡その 1 ,その 2 はともに多粒子系の運動学的考察を高度に推 しすすめたものとして意義のある研究であるO永田 忍はこれらの研究を通 じて,さらに問題の本質に近づこうとする意欲によって王論文の研究にすすんだのである｡ 参考論文その 3 は中間子理論によってえられる核力のテンソル力の部分がいわゆるスピンー 軌道結合力の少なくとも主な原因となっていることを示 した歴史的な業績の結果であって, 沢田達郎, 笹川辰弥, 玉垣良三との共著の論文であるが, その研究において永田 忍は有力な一員として協力したのである｡ 永田 忍はこれらの研究において核力理論の理解を深め,それがやはり主論文の研究に入る大きい力となったと考えられる｡要するに, 永田 忍はその堅実な研究態度と冷静な状勢分析により, 常に原子核理論のもっとも重要な問題をとらえ, これを精力的に追求することによって理論の発展に重要な寄与をつづけてきたのである｡特に主論文は単に 1 個の例題としてではなく, 今後の研究の発展の新 しい分野をひらく魁として重要な地位を占めるものと確信する｡ よって, 本論文は理学博士の学位論文として価値あるものと認める｡〔主 論 文 公 表 誌〕Progress of T heoretical Physics, V ol.25 (1961), N o.1〔参 考 論 文〕1･ O n the Collective M ode of Internal M otion of the N ucleu_S to be Coupled w ith the lrrotationalSurface M otion(原子核における非回転性表面運動と結合すべき内部集団運動について)(丸森寿夫ほか 2 名と共著)公表誌 Progress of T heoretical Physics, V ol.19 (1958), N o.52. Foundation of D eform ed Potential M odel for N uclear R otation(原子核の回転に対する変形模型の基礎)(小林 稔ほか 3 名と共著)公表誌 Progress of T heoretical Physics, V ol.20 (1958), N o.63, T ensor force of t壬le Pion-T heoretical Potential and the D oblet Splitting in n-H e4 Scattering(中間子論によるテンソル力と中性子- ヘリウム散乱における二重項分離)(笹川辰弥ほか 2 名と共著)公表誌 Progress of T heoretical Physics, V ol.22 (1959), N o.24. N uclear D eform ation and N uclear Force,ⅠⅠ(原子核の変形と核力, Ⅲ)(池田清美ほか 1名と共著)公表誌 Progress of T heoretical Physics, V ol.25 (1961), N o.1- 3 -

原子核の変形と核力, 1

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