京都大学0048新制・課程博士博士(農学)甲第6905号農博第923号新制||農||740(附属図書館)学位論文||H9||N3029(農学部図書室)16022UT51-97-H289京都大学大学院農学研究科農学専攻(主査)教授 草薙 得一, 教授 矢澤 進, 教授 櫻谷 哲夫学位規則第4条第1項該当Doctor of Agricultural ScienceKyoto UniversityDA

Miyaura, Rie

Kyoto University Research Information Repository

Title Geographical Variations of Eleusine indica (L.) Gaertn. inTemperate and Tropical Asia( Abstract_要旨 )Author(s)Miyaura, RieCitationKyoto University (京都大学)Issue Date1997-03-24URL http://hdl.handle.net/2433/202388RightType Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University氏 名学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位授与の日付学位授与の要件研 究科 ･専攻学位論文題 目【416】みや うら り ぇ宮 浦 理 恵博 士 (農 学)農 博 第 923 号平 成 9 年 3 月 24日学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当農 学 研 究 科 農 学 専 攻GeographicalVariationsofEleusineindica(L.)Gaertn.inTemperateandTropicalAsia(温帯および熱帯アジアにおけるオヒシバの地理的変異)(主 査)論文調査委員 教 授 草 薙 得 一 教 授 矢 揮 進 教 授 楼 谷 哲 夫論 文 内 容 の 要 旨本論文はわが国を含む東アジア,東南アジアにおける畑雑草オヒシバの分布と発生 ･生育状況,作物に対する雑草害および防除方法などについて調査するとともに,これらの地域で採集したオヒシバを供試して,日本とインドネシアで比較栽培実験を行い,種生態的特性,特に生活史特性,種内変異および適応の実態などを明らかにしたものである｡ 論文は5章から成り,主な内容は次の通りである｡1.北緯36度から南緯8度に至る温帯および熱帯アジア7か国において,オヒシバの発生分布,生育期間および雑草害などについてアンケート調査と現地調査を行った結果,北緯31度付近 (鹿児島県種子島)を境にして,それ以北では一年生夏雑草であるが,それ以南の地域では通年生育が可能であることが明らかになった｡この差異は最寒月の平均最低気温が10℃,最高気温が10℃ のラインを境界として発現していることが認められた｡さらにわが国についてみると,本州中部以北では畦畔や農道など非農耕地に発生し,農耕地への侵入はみられなかったが,西日本,特に西南暖地では農耕地へ侵入し,普通畑や野菜畑における強害雑草となっている｡また,熱帯では各地の野菜畑で顕著な被害が認められた｡2.インドネシア高地において,標高の違いと分布および発生消長の調査を行い,標高が高くなるに伴って明らかに発生頻度が減少することが認められた｡これを西ジャワ高地における調査でみると,オヒシバの出現頻度は標高 1650m以上で減少しはじめ,1750m付近では40%に低下した｡また東南アジアにおけるオヒシバの垂直分布の最高地点は2100mの畑地であった｡これらの結果からオヒシバの垂直分布の上限の年平均気温は最低 10℃,最高 18℃ であることが分かった｡熱帯におけるオヒシバの発生は雨季,乾季を問わず一年中みられ,各作物の作付け期間において耕起後約 1か月で発生ピークに達することが認められた｡また発生量は乾季よりも雨季に多かった｡3.温帯および熱帯の各地で採集したオヒシバ種子を用いて日本 (京都)とインドネシア (ボゴール)で比較栽培実験を行った結果,北緯28度以北の温帯産オヒシバおよび熱帯高地 (標高700-800m以上)に分布しているオヒシバは熱帯の中間地や低地に分布しているオヒシバとは明らかに生態型の異なること-1173-が認められ,前者は一年生雑草,後者は多年生雑草であることがわかった｡この生態型の分化は両国で栽培しても全く同様に認められた｡また形態的特性にも差異が認められ,北緯28度以北産オヒシバは日本での実験で,総分げっ数,無効分げっ数ともに少ないが,その他の熱帯産の多年生オヒシバは分げっ数が多くみられた｡4.個生態的特性調査の一環として,種子の休眠と発芽について調べ,発芽の最適温度条件を兄い出すとともに,その温度条件で発芽試験を行い,温帯集団のオヒシバは休眠が深いこと,北緯28度以南の熱帯集団のものは休眠が極めて浅いことを認め,オヒシバの生活史特性が北緯28度付近を堺にして,不連続に分化している実態を確認した｡5.温帯および標高差の異なる熱帯の代表的なオヒシバ集団について,温度と出穂との関係を調べた結莱,温帯産集団は他集団のものと異なり,高温で出穂が促進された｡また出芽後出穂までの日数と草丈,分げっ数など複数の形態形質の一日当たりの増加量との間に高い相関が認められた｡さらに出穂に対する日長反応については温帯および熱帯の中間地産や低地産のオヒシバは中日性であったが,熱帯高地産のオヒシバはこれらと異なり,短日性反応を示した｡このように温帯産オヒシバは出穂反応が中日性で,高温に反応して出穂が認められ,一年生の生態型を示したことは,夏期に充分な日照と気温条件下で種子生産を行い,冬期に種子が休眠し,1年以内で生活環が完了するような生活史特性の分化によって適応したものであると推察した｡これに対して熱帯産オヒシバが多年生の生態型を示していることは,熱帯が1年の周期が降雨によって規定されており,そのパターンは年格差が大きく,不安定であるため,環境に左右されずに出穂を開始し,種子生産を長期にわたり継続していくことが,生活史戟略からみて有利であると指摘した｡論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨オヒシバは温帯から熱帯に至る広範な地域に分布するイネ科植物で,特に亜熱帯や熱帯では普通畑や野菜畑の作物に対して大きな被害を及ぼしている｡ 本論文はオヒシバの分布をわが国を含む東アジア,東大アジアを中心に調査し,地理的分布の実態を明らかにするとともに,それらの地域で採集したオヒシバを用いて栽培実験を行い,立地環境と生態型分化との関係並びに生活史特性の地理的変異を解明しようとして行った研究の成果をまとめたものである｡評価できる主な点は次の通りである｡1.オヒシバはわが国では北海道を除く各地に分布し,特に西南暖地では畑地における強害雑草であるが,本州中部地域を境にして北日本では畑地-の侵入が認められず,農道,空地など非農耕地の人里植物であることを認め,わが国における耕地雑草としての位置づけを明確にした｡2.東アジア,東南アジアにおけるオヒシバの分布を調査し,高緯度地域の温帯では一年生夏雑草であるのに対して,低緯度地域の熱帯では年間を通して生育していることを認め,この両生活型が北緯31度付近を境界として明瞭に分化していることを兄い出した｡また熱帯では垂直分布においても生活型の違いかがみられ,標高700-800m以上に分布するオヒシバには一年生雑草がみられたが,それ以下の中間地や低地に分布するオヒシバは多年生雑草であることを明らかにした｡また生態型の分化は最寒月の平均気温が10℃付近を境にして発現していることを認めるとともに,この生態型の違いやその形態的特徴の差異-1174-は日本とインドネシアにおける比較栽培実験によっても確認した｡3.熱帯高地産オヒシバが短日性の出穂反応を示すこと,また熱帯の中間地産や低地産のオヒシバの出穂に対する日長反応が温帯産オヒシバと同じように中日性であることを初めて明らかにするとともに,温帯産オヒシバの出穂が高温によって促進されることを認めた｡さらにこのような生態型の繁殖特性を検証し,オヒシバの生活史特性が生育地の気候の違いに対応して異なっていることを具体的に指摘した｡4.オヒシバ種子の発芽は変温と光条件の組合わせによって促進されることを明らかにするとともに,温帯産オヒシバには深い休眠があるが,熱帯産オヒシバの休眠は極めて浅いことを認めるなど,オヒシバの繁殖生態上における重要な生活史特性が北緯28度付近を境にして不連続に分化していることを指摘した初めての知見として注目される｡以上のように,本論文は温帯および熱帯アジアにおけるオヒシバの地理的分布の調査および栽培実験の結果から緯度や標高によって生態型が分化していることを兄い出し,オヒシバの地理的変異を明らかにするとともに,生活史特性の分化を実証的に解明し,多くの新知見を提示したものであり,雑草学並びに雑草防除の実際面に寄与するところが大きい｡よって,本論文は博士 (農学)の学位論文として価値あるものと認める｡なお,平成9年 2月17日,論文並びにそれに関連した分野にわたり試問した結果,博士 (農学)の学位を授与される学力が十分あるものと認めた｡-1175-

温帯および熱帯アジアにおけるオヒシバの地理的変異

http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/202388/1/ynogk00923.pdf

温帯および熱帯アジアにおけるオヒシバの地理的変異

Abstract

Similar works

Full text

Available Versions

Kyoto University Research Information Repository