京都大学0048新制・課程博士博士(農学)甲第19197号農博第2136号新制||農||1034(附属図書館)学位論文||H27||N4943(農学部図書室)32189京都大学大学院農学研究科森林科学専攻(主査)教授 西尾 嘉之, 教授 木村 恒久, 教授 髙野 俊幸学位規則第4条第1項該当Doctor of Agricultural ScienceKyoto UniversityDFA

Sugimura, Kazuki

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TitleComparative Studies on Miscibility and IntermolecularInteraction for Cellulose Ester Blends with Vinyl Copolymers(Abstract_要旨 )Author(s)Sugimura, KazukiCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2015-05-25URL http://dx.doi.org/10.14989/doctor.k19197RightType Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University （ 続紙 １ ）                             京都大学 博士（  農 学  ） 氏名 杉村 和紀 論文題目 Comparative Studies on Miscibility and Intermolecular Interaction for Cellulose Ester Blends with Vinyl Copolymers （セルロースエステルとビニル共重合体から成るブレンドの相溶性と分子間相互作用に関する比較研究）  （論文内容の要旨）   天然高分子セルロースは有機酸エステル誘導体へと変換することで、溶剤溶解性・成形加工性が飛躍的に向上する。光学フィルムや繊維、分離膜など種々の分野において重要な材料であるセルロース有機酸エステル（CE）に更なる物性改良と機能化を施し、その用途拡大を図る上で、相溶ブレンド法は有効な手段の1つとなる。本論文では、汎用CE類の1つであるセルロースプロピオネート（CP）を主対象とし、N-ビニルピロリドン（VP）ユニットを含有するビニル共重合体とのブレンド体を各種調製し、CPの熱可塑化および力学的・光学的物性の向上を試みている。CPの側鎖置換度（DS）とビニル共重合体中のVP含有率を変数として、ブレンド系の相溶性の判定を行い、有用な相溶マップとして結果を整理するとともに、相溶化の駆動力となる分子間相互作用についても詳細に検討している。さらに、既報のセルロースアセテート（CA）並びにブチレート（CB）の各ブレンド系との比較から、分子相溶化に寄与するCE側鎖種の効果を明確化している。論文は5章より構成されており、各章の概要は以下の通りである。   第1章では、CE類をベースとした機能性材料の設計開発について概説し、異種ポリマーとの複合化の一手法である相溶ブレンド法の有用性を示すとともに、本研究の目的について述べている。  第2章では、CPとN-ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体（P(VP-co-VAc)）との相溶性を、示差走査熱量測定（DSC）を用いた熱分析により評価し、相溶マップを完成させている。まず、CP/ポリ(N-ビニルピロリドン)（PVP）ブレンド系では相溶するDSの上限が2.7となり、CA/PVP系の上限値2.8とCB/PVP系の2.5の中間となることを、要因とともに明らかにしている。次いで、CP/ポリ(ビニルアセテート)（PVAc）ブレンド系はプロピオニルDS>2.5のとき部分相溶となり、プロピオニル側鎖とビニルアセテート（VAc）ユニット間の親和性が極めて良好であると考察している。一方、PVPおよびPVAcの両ホモポリマーとは相溶しない高DS（>2.7）のCPが、VP含有率が約10–65 mol%のP(VP-co-VAc)と相溶することを見出し、これを、共重合体の構成モノマー間の反発力に由来する他成分との間接的引力効果によって“相溶の窓”（miscibility window）が発現しているためであると説明している。さらに、各種分光学的測定並びに動的粘弾性測定からブレンド成分間に生じる相互作用と相溶スケール- 1 -  の評価を行い、その結果をブレンド系の相溶マップの特徴と関連付けて論じている。  第3章では、VPと共重合させるモノマー成分をメタクリル酸メチル（MMA）としたN-ビニルピロリドン-メタクリル酸メチル共重合体（P(VP-co-MMA)）とCPとのブレンド試料について、DSC熱分析により相溶性を評価し、相溶マップを完成させている。相溶マップ内にmiscibility window領域が発現することを見出すとともに、先行研究のCA/P(VP-co-MMA)系および第2章のCP/P(VP-co-VAc)系との比較から、側鎖炭素数並びに共重合体構成成分の影響について考察している。また、相溶ブレンド化による熱機械的な物性の向上と、フィルムの熱延伸によって生じる光学的複屈折を解析評価している。さらに、混合エステルであるセルロースアセテートプロピオネート（CAP）は、より広いビニル共重合組成に渡ってP(VP-co-MMA)と相溶しうることを示している。  第4章では、希薄溶液粘度測定により各成分セグメント間の相互作用パラメーターを算出し、CEとVP含有ビニルポリマーの相溶性挙動全般について整合性の良い比較考察を遂行している。数値比較からブレンド成分間に働く引力または斥力効果を再検討し、第2章および第3章で見出された“相溶の窓”がビニル共重合体の構成モノマー間の強い反発力に由来するものであることを明確にしている。さらに、CP成分はVAcあるいはMMAユニットと極めて良好な親和性を示し、他のCEブレンド系よりも広い相溶領域を発現する要因として寄与することを明らかにしている。  第5章では、本研究で得られた成果をまとめるとともに、セルロースエステル誘導体の今後の機能展開について述べ、本論文を総括している。    注)論文内容の要旨と論文審査の結果の要旨は１頁を３８字×３６行で作成し、合わせて、３,０００字を標準とすること。 論文内容の要旨を英語で記入する場合は、４００～１,１００wordsで作成し 審査結果の要旨は日本語５００～２,０００字程度で作成すること。  - 2 -  （続紙 ２ ）                             （論文審査の結果の要旨）   相溶ブレンド法をセルロースエステル（CE）に適用する際、置換度（DS）および側鎖種の効果を体系的に整理したデータは非常に重要となる。本論文は、セルロースの汎用エステル誘導体の物性改良を目的として、セルロースプロピオネート（CP）とN-ビニルピロリドン（VP）ユニットを含有するビニル共重合体とのブレンド体における相溶性と成分間相互作用を解析評価し、他のCE類（アセテート並びにブチレート）との比較考察から、分子相溶化に寄与する側鎖種の効果について論じたものである。成果として評価できる点は以下の通りである。  1. CPとVP含有ビニル共重合体とのブレンドの相溶性を順次判定し、CPのプロピオニルDSと対成分ビニル共重合体中のVP含有率を関数とした相溶マップとして整理した。既報のCEブレンド系のデータとの比較から、アセテートとブチレートの中間側鎖長を有するCPのブレンド系で、相溶領域が大きく拡張することを明らかにした。 2. 前項1のCP/ビニル共重合体ブレンドについて、良好な相溶性発現のための駆動力となる異種成分間の引力的相互作用（水素結合等）並びに共重合体内部の斥力効果について、体系的にまとめることに成功した。特に、CPブレンド系で確認された相溶領域の拡大について、その要因をブレンド構成成分のセグメント間の相互作用との関連において明確化したことは特筆に値する。 3. 相溶と判定されたCP/ビニル共重合体ブレンドについて、固体13C NMR法等により均一混合スケールを定量的に評価し、成分間相互作用との関連を明確化した。   以上のように、本論文は、天然由来のセルロース誘導体をベースとしたポリマーブレンドの相溶性と成分間相互作用に関して多くの基礎的知見を得るとともに、高機能セルロース材料の新しい設計指針を提示したものであり、バイオマス複合材料化学、セルロース化学、天然高分子化学、および環境材料科学に寄与するところが大きい。  よって、本論文は博士（農学）の学位論文として価値あるものと認める。  なお、平成 27年 4月 10日、論文並びにそれに関連した分野にわたり試問した結果、博士（農学）の学位を授与される学力が十分あるものと認めた。  また、本論文は、京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し、公表に際しては、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。  注）論文内容の要旨、審査の結果の要旨及び学位論文は、本学学術情報リポジトリに掲載し、公表とする。 ただし、特許申請、雑誌掲載等の関係により、要旨を学位授与後即日公表することに支障がある場合は、以下に公表可能とする日付を記入すること。  要旨公開可能日：   年   月  日以降（学位授与日から３ヶ月以内） - 3 - 

セルロースエステルとビニル共重合体から成るブレンドの相溶性と分子間相互作用に関する比較研究

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