京都大学0048新制・課程博士博士(理学)甲第19168号理博第4108号新制||理||1591(附属図書館)32160京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻(主査)准教授 重 尚一, 准教授 林 泰一, 教授 余田 成男学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDGA

Nattapon, Mahavik

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TitleStudy on rainfall over the middle of the Indo-China Peninsuladuring summer monsoon by producing gauge-calibratedground-based radar data( Abstract_要旨 )Author(s)Nattapon, MahavikCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2015-05-25URL http://dx.doi.org/10.14989/doctor.k19168Right学位規則第9条第2項により要約公開Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University  （ 続紙 １ ）                             京都大学 博 士（ 理 学 ） 氏名 Mahavik, Nattapon 論文題目 Study on rainfall over the middle of the Indo-China Peninsula during summer monsoon by producing gauge-calibrated ground-based radar data（雨量計補正した地上レーダデータ作成による夏季モンスーン期インドシナ半島中央部における降雨の研究） （論文内容の要旨）  インドシナ半島は、下層南西風をもたらすインド夏季モンスーンと、それを弱める西部北太平洋モンスーンとの間に位置し、狭い山脈を有するため、夏季モンスーン期の降雨は複雑な空間・時間分布を持つ。しかしながら、インドシナ半島では高い時間・空間分解能を持つ雨量データが不足しており、観測的把握は十分ではない。本研究は、インドシナ半島中部に設置されたレーダの観測データから降雨量データを雨量計の観測データで補正して作成し、インドシナ半島中部の降雨について調べた。  まず、2009年と2010年の夏季モンスーン期（7～9月）について、1台のレーダデータから雨量計補正した1日毎の日積算降雨量マップを作成し、インドシナ半島中部において卓越する降雨の空間パターンについて調べた。日積算降雨量マップに経験的直交解析を適用し、インドシナ半島中部における降雨変動の約40%が第1から第3主成分で説明でき、これらの空間パターンが地形と環境風に結びついていることを示した。   次に、2010年夏季モンスーン期（7～9月）について、3台のレーダデータから雨量計補正した１時間毎の降雨量合成マップを作成し、インドシナ半島中部における降雨の日変化について調べた。降雨の極大が現れる回数は、平地部では1日1回、山岳部では1日2回以上の傾向が示された。この傾向は、雨量計による先行研究の結果と一致しているが、レーダデータを用いることで時空間的に密に連続して捉えることができた。平地部で1回の極大が現れる時間帯は、西部のChaophraya平原では夕方、北東部のKhorat高原では深夜・早朝と異なっており、それぞれ極大が現れる時間帯には強い降雨強度が観測されており、対流性降雨であることが示唆された。  さらに、１時間毎の降雨量合成マップを用いて、山脈下流側で発生する伝播性降雨システムに注目して解析した。伝播性降雨システムの同定とその伝播方向を決定する手法を提案し、2010年夏季モンスーン期の各日を東向き伝播レジーム、西向き伝播レジーム、その他に分類した。その結果、東向き伝播レジームが支配的だが、下層西風が弱まる際に西向き伝播レジームが起こっていることが分かった。東向き伝播レジームの日数は７月に最大で、９月に向かって減少し、西向き伝播レジームは逆に７月から９月に向かって増加していた。  支配的な東向き伝播レジームの降雨システムを詳細に調べたところ、Chaophraya平原では、先行研究で報告されているように、卓越する下層西風とほぼ同じ速度（約6ms-1）で移動する降雨システムが夕方に降雨極大をもたらしていた。一方、Khorat高原では、卓越する下層南西風の下、個々の降雨システムの移動速度は速くはないが、その発生域が深夜から早朝にかけてKhorat高原北西部から南東部に移ることにより、全体として約14ms-1という速い速度で南東方向に伝播がしていることが新たに分かった。深夜・北西部では地形性上昇流が関連するが、朝方・南東部では、Khorat高原に近接するAnnam山脈の局地的循環によって生じる収束が原因ではないかと推論した。    （続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨）   インドシナ半島はほぼ全域が地上レーダ網で覆われているにもかかわらず、その価値が同地域では十分認識されていないため、観測データは保存されていない状況にある。これまでの特別な要請によって保存されたデータを用いた研究においては、1台の地上レーダの利用であった。また、その多くが強いエコーを示す領域の面積に関する議論にとどまっていた。申請者は、地上レーダによるエコーデータから、定量的な議論に資する降雨量データをインドシナ半島で作成した。特に3台の地上レーダから初めて作成した１時間毎の降雨量合成マップは、インドシナ半島の地上レーダ網の有効性を示す上で極めて価値が高い。   申請者は、作成したデータを用いて、インドシナ半島中部モンスーン期に卓越する降雨の空間パターンならびに降雨の日変化特性の時空間分布を明らかにした。本研究で得られた降雨の詳細な空間的特性は、点観測の雨量計、降雨データとして信頼性が低い静止衛星赤外画像、衛星通過時の観測のみで観測幅も狭い低軌道衛星搭載降雨レーダなどの既存のデータでは得ることができないもので、インドシナ半島中部モンスーン期における降雨の気候学的特徴に関して、時空間的により精密な知見を追加するものとして意義がある。   申請者はさらに、伝播性降雨システムの同定とその伝播方向を決定する手法を１時間毎の降雨量合成マップに適用し、2010年夏季モンスーン期の各日を東向き伝播レジーム、西向き伝播レジーム、その他に分類した。その結果、東向き伝播レジームが支配的だが、西向き伝播レジームと季節内変動していることを明らかにした。この結果は、下層南西風をもたらすインド夏季モンスーンと、それを弱める西部北太平洋モンスーンとの間に位置するインドシナ半島の特有性を示す結果として意義がある成果である。   申請者はまた、東向き伝播レジームの降雨システムを詳細に調べた。Khorat高原では、卓越する下層南西風に従って降雨システムが北東に伝播すると考えられていたが、実際には南東方向に約14ms-1という速い速度で伝播していることを示した。この結果は、従前の認識を更新する新しい結果を呈示したものとして意義ある成果である。単一の降雨システムが速い速度で移動しているのではなく、個々の降雨システムの移動速度は遅いが、その発生域が深夜から早朝にかけて北西部から南東部に移ることにより、全体として速い速度で伝播がもたらされていることが分かった。米国ロッキー山脈から大平原では、東向きに速い伝播速度を持つ個々の降雨システムが、後方の西側に新たに発生することによって、全体として遅い速度で伝播することが知られており、本研究の成果は、降雨システムの多様な階層構造に関する知見を追加するものであり、メソ気象の理解をより一層深めるものである。  よって、本論文は博士（理学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成２７年２月１２日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行った結果、合格と認めた。   要旨公表可能日：     年   月   日以降 

雨量計補正した地上レーダデータ作成による夏季モンスーン期インドシナ半島中央部における降雨の研究

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