京都大学0048新制・課程博士博士(理学)甲第18805号理博第4063号新制||理||1584(附属図書館)31756京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻(主査)教授 土`山 明, 准教授 三宅 亮, 准教授 伊藤 正一学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDGA

Matsuno, Junya

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TitleOn the origin and formation process of glass with embeddedmetal and sulfides (GEMS) inferred from 3D observation andreproduction experiment( Abstract_要旨 )Author(s)Matsuno, JunyaCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2015-03-23URL http://dx.doi.org/10.14989/doctor.k18805Right学位規則第9条第2項により要約公開; 許諾条件により要約は2016/03/23に公開Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University  （ 続紙 １ ）                             京都大学 博 士（ 理 学 ） 氏名  松野 淳也 論文題目  On the origin and formation process of glass with embedded metal and sulfides (GEMS) inferred from 3D observation and reproduction experiment   （論文内容の要旨）  宇宙空間には広くダストと呼ばれる100 nm程度の固体微粒子が存在しており、一般的には、進化末期の赤色巨星や超新星爆発が放出する高温のガスが冷やされる際に形成されると考えられている。天文観測からは、珪酸塩ダストは星周領域では90 %以上が、星間空間では98 %以上が非晶質であることが示唆される。しかしその非晶質珪酸塩の組成を赤外スペクトルから完全に決定するのは難しく、例えば主要な固体元素の一つであるFeはその存在形態が不明(金属として存在、もしくは二価の陽イオンとして珪酸塩に固溶し存在している)であるという問題がある。一方彗星はその温度が低いことから、初期太陽系に存在していたダストを現在まで保持していると考えられている。実際に彗星由来の宇宙塵には太陽系の最も始原的な物質の一つと考えられている GEMS (glass with embedded metal and sulfides)と呼ばれる直径100-500 nmの非晶質珪酸塩ダストが普遍的に含まれている。その赤外スペクトルが星間ダストのものとよく合致する事から、星間ダストの生き残りではないかと唱えられてきた。一方、同位体分析・元素組成の分析結果やGEMS中の金属鉄・硫化鉄微粒子の空間分布からGEMSの大多数は初期太陽系の高温ガスの凝縮物であるという説も提唱されている。しかし従来の組織観察は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた二次元の観察にとどまっており、またGEMS様粒子を合成した凝縮実験はない。そこで本研究ではGEMSの起源と形成過程に制約を与えるため、電子線トモグラフィーによる三次元観察と凝縮による再現実験を行った。  GEMSの三次元組織観察を、TEMを用いた電子線トモグラフィーにより行った。ウルトラミクロトームで切り出した彗星塵の超薄切片を観察した結果、GEMSの金属鉄粒子は硫化鉄に比べて数が多く、またサイズは小さく、さらに金属鉄は非晶質珪酸塩粒子の内部に存在するのに対し硫化鉄は表面に存在することを定量的に記載した。また金属鉄中に5-10 nm程度の微小な泡構造を見出した。なお、今回のように超薄切片試料を用いたトモグラフィーでは、透過像の取得が±70度程度の試料回転範囲に制限されるため、再構成された断層像には偽像が出現してしまう（不完全トモグラフィー）。本研究では、彗星塵を集束イオンビーム(FIB)により棒状に加工しタングステン針上に載せ、先端を加工したTEMホルダーに装着することで、完全トモグラフィーによる断層像を得ることにも成功した。これにより多  数のGEMSがクラスターを作って存在していることが確認できた。  GEMSの再現実験では高温ガスからGEMSが凝縮するかどうかを調べるため、誘導熱プラズマ装置(ITP)を用いた凝縮実験を行い、その合成物をX線粉末回折(XRD)、TEM、赤外線吸収分光を用いて分析した。GEMS平均組成をした酸化物-金属の混合粉末を出発物質にして実験したところ、非晶質珪酸塩内部に20 nm程度の金属鉄粒子が多数含まれる100 nm以下の凝縮物が合成された。また隕石粉末を用いた実験では、非晶質珪酸塩内部に金属鉄を一つ含み、表面に硫化鉄粒子が存在する凝縮物が合成された。また凝縮粒子の赤外線スペクトルもGEMSのものと一致していたことから、GEMSの模擬粒子が高温ガスの凝縮により合成できたと結論づけた。  以上のように、三次元のGEMSの組織と凝縮実験生成物の組織がよく一致すること(金属鉄・硫化鉄の空間分布、粒子サイズなど)から、GEMSは高温ガスからの凝縮で形成しうると結論づけた。核形成と成長により粒子形成を扱う理論に基づき凝縮実験が宇宙のどのような環境でのプロセスに対応するか調べたところ、原始太陽系円盤でのコンドリュール形成を起こす加熱イベントや、晩期型巨星や超新星爆発の星周領域における高温ガスの冷却が対応することが分かった。これらの場がGEMS形成に関連が深いと示唆される。これらの結果よりGEMSの形成モデルを考察した。進化末期の恒星周囲で生成したGEMSは星間空間を経て原始惑星系円盤にとりこまれ、プレソーラー粒子として観測されると考えられる。プレソーラー GEMS粒子が星周領域から星間空間にかけて存在するということは、これらの領域ではGEMSがFeのキャリアーになりうるということを示唆している。一方で大部分のGEMSは太陽系の酸素同位体比を持つことから、プレソーラーGEMSの多くは一度原始惑星系円盤で蒸発し、新たなGEMSがコンドリュール形成のような瞬間加熱イベントの際に形成されるべきである。なお彗星塵中の結晶質珪酸塩も気相からの凝縮で形成したと考えられているため、彗星の珪酸塩のほとんどは凝縮物であるといえる。このことは初期太陽系の内側(コンドリュール形成を考えると2-5 AU)から外側(彗星の存在領域を考えると30 AUより遠方)への大規模な物質循環が、起こっていたことを示唆している。     （ 続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨）  本学位審査論文は、太陽系の始原物質である彗星塵中に特徴的に含まれるGEMSと呼ばれる金属鉄および硫化鉄ナノ粒子を含む非晶質珪酸塩球状微粒子について、３次元微細組織観察と凝縮による再現実験により、その起源と形成プロセスを解明しようとしたものである。  GEMSを含む彗星塵の組織観察は従来TEMによっておこなわれてきたが、それらはすべて切片（厚み80 nm程度）の透過２次元観察であった。GEMSのサイズ（100-500 nm）を考えると空間分解能は不十分であり、３次元観察により空間分解能の向上が期待される。本論文では、近年発展してきたTEMトモグラフィーを始めてGEMSに適用し、その３次元組織を明らかにした。これにより、２次元観察から想像されていた３次元組織が基本的に正しいことを示し、金属鉄や硫化鉄ナノ粒子の３次元空間分布やサイズ分布を定量的に記載した。また、空間分解能の向上により、金属鉄ナノ粒子中に微小な空隙を始めて見出した。この空隙は太陽風の照射によって生成された可能性が高く、この発見の意義は大きい。また完全トモグラフィーの手法開発にも成功し、GEMSだけでなく地球惑星物質の微細組織に関する研究についての今後の発展が期待される。  一方、元素組成を制御した高温ガスからの均一核形成が可能な誘導熱プラズマ（ITP）装置を用いた凝縮実験をおこなった。これにより、Sも含めた主要元素系においてGEMSの３次元組織の再現に始めて成功し、GEMSが高温ガスからの凝縮によって生成されうることを示した。さらに、ガスからの均一核形成・成長理論における凝縮パラメータをもとにして、凝縮実験条件と宇宙での固体微粒子生成条件を比較し、晩期型巨星や超新星爆発の星周領域における高温ガスの冷却および原始太陽系円盤における局所的な加熱・冷却（例えばコンドリュール形成プロセス）により、GEMSが生成されうることを示した。  以上の成果をもとに、GEMSの起源が晩期型星星周と原始太陽系円盤の両方にあるという新しいGEMS形成モデルを提唱した。GEMSの起源についてはこれまで星間空間説と原始太陽系説の間に論争があったが、今回のモデルにより同位体組成を含めたGEMSの特徴を総合的に説明できる。さらに、これまで問題であった太陽系固体原料物質の鉄の存在状態が、晩期型星星周で生成されたGEMS中の金属鉄や硫化鉄ナノ粒子により説明できることを明らかにした。  よって、本論文は博士（理学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成27年1月15日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行った結果、合格と認めた。  要旨公表可能日：     年   月   日以降 

三次元観察と再現実験から迫る彗星塵微粒子GEMSの起源と形成過程

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