京都大学0048新制・課程博士博士(理学)甲第18798号理博第4056号新制||理||1583(附属図書館)31749京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻(主査)准教授 齊藤 昭則, 教授 田口 聡, 教授 余田 成男学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDGA

Akiya, Yusuke

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TitleVisible and near-infrared airglow structures in the mesosphereand the lower thermosphere observed by space-borneinstruments( Abstract_要旨 )Author(s)Akiya, YusukeCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2015-03-23URL http://dx.doi.org/10.14989/doctor.k18798Right学位規則第9条第2項により要約公開Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University  （ 続紙 １ ）                             京都大学 博 士（ 理 学 ） 氏名  秋谷 祐亮 論文題目 Visible and near-infrared airglow structures in the mesosphere and the lower thermosphere observed by space-borne instruments (宇宙空間からの観測による中間圏および下部熱圏における可視近赤外域大気光の構造についての研究) （論文内容の要旨）  中間圏及び下部熱圏などの地球超高層大気領域は観測手段が限られているため、その変動及び変動の要因については未解明な部分が多い。本論文では、中間圏・下部熱圏における変動を詳細かつ広範囲に観測するため、この領域で発光している大気光の測定を宇宙空間から実施した。研究は、観測装置の開発、水平方向の測定による特徴的な同心円状構造の観測、鉛直方向の測定による緯度構造の観測、の３点からなる。  第１章では、研究内容に関する先行研究及び計測される大気光現象の物理過程の概説が行われ、最後に本論文の研究目的が述べられている。  第２章では、国際宇宙ステーションに搭載され、第３章で報告される観測に用いられた可視近赤外分光撮像装置VISIの開発及びデータ校正について述べられている。装置の開発としては、打ち上げ前に、焦点合わせののち、感度測定実験を実施し、装置の測定特性の計測を行った。データ校正としては、主に打ち上げ後に軌道上で得られたデータを元に、装置の電磁環境に起因するノイズの除去、感度の波長特性の補正、撮像データ・ピクセル間の感度差の補正が行われた。またVISIは前方向及び後方向を指向する２つの視野を持っており、両視野における撮像データを比較することにより、対象となる大気光の発光高度の推定が可能である。この大気光発光高度の推定をVISIの観測データに対して行い、波長762nmの酸素分子からの大気光の発光高度が95km-100kmであること、波長630nm大気光の酸素原子からの大気光の発光高度が220kmであることを明らかにした、これらは先行研究の結果と整合的である。  第３章では、VISIによる国際宇宙ステーションからの大気光観測によって発見された同心円状の大気光構造について報告されている。この観測では、波長762nmの酸素分子からの大気光を用いて、1200kmほどの水平方向の広がりをもつ、波長80kmの波からなる同心円状の構造が2013年6月1日に観測された。前後の視野においてほぼ同じ構造が測定されており、２つの視野の比較によってこの構造の出現高度が95km付近であることが明らかにされた。また詳細な比較によって、この波長80kmの波構造は125m/s程度の速度で中心から外側に向けて伝搬していることがわかった。またGPS受信機網による全電子数の観測により、この大気光同心円状構造の出現の前に、電離圏プラズマの同心円状構造がより広範囲に発生していたことも明らかになった。この同心円状構造の中心領域においては、対流圏での活発な雲活動が観測されており、対流圏で生成された大気波動が上方に伝搬し、高度95kmでの同心円状構造を生成したと推定した。  第４章では「れいめい」衛星搭載の多波長オーロラ・カメラMACによるリム方向の大気光観測データを用いて、大気光発光の緯度方向の変動の統計的解析が報告されている。視線方向の積分量である光学観測データから、単位体積あたりの大気光発光量の推定を行い、その発光の緯度による変動を季節・経度によって分類して、解析を行った。その結果、北緯30度付近に酸素原子による波長557.7nmの大気光発光の極大が見られることを明らかにし、モデル計算との比較から大気潮汐によるものとの推定された。  最後に第５章では、全体的な結論が述べられている。    （続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨）  大気光の計測は、地球超高層大気領域においてその密度構造を遠隔観測する上で有効な観測手段であり、おもに地上観測において多くの観測が行われてきた。申請者は、装置の開発、データ校正を行うことで、宇宙空間からの可視光・近赤外線による大気光の水平構造の撮像というこれまでにない観測を実現し、その結果を用いて特徴的な超高層大気現象の解明を行った。また、そのような構造の背景となる大規模な大気光構造の解明を行った。  1990年代以降の地上からの大気光の撮像観測によって、超高層大気には空間スケール10km-100kmの多くの波状の構造が発生していることが明らかになってきた。これらの構造の波長・伝搬特性などが調べられ、その波状構造が対流圏などの下層大気で生成されたものが、超高層領域まで鉛直伝搬したものであると推定されているが、地上観測では、下層大気に雲があるときには大気光が雲に遮られて観測ができないため、対流圏活動が活発なときには超高層大気の観測ができない、という大きな観測的制限があった。そのため、下層大気での活動と超高層大気での構造との関連性を示す直接的な観測的証拠は限られていた。また、地上観測の視野が400km程度に限定されているため、地上観測で測定される構造の空間的広がりも明らかではなかった。  申請者は、第２章で述べられているように、国際宇宙ステーション搭載の大気光撮像観測装置であるVISIの開発とデータ校正を担当し、測定ノイズの低減に成功し、微弱な大気光およびその変動の２次元構造の宇宙空間からの測定を可能にした。VISIは、国際宇宙ステーションからの超高層大気撮像観測ミッションISS-IMAPの一部であり、宇宙空間からの大気光撮像観測を実施し、地上観測の問題点を解消し、現象の全体像を明らかにすることを目指したものである。装置の開発期間が限られていたことから打ち上げ前の室内実験が十分に行えず、軌道上での観測データを基にしたデータ校正が測定ノイズの低減には重要であった。申請者の研究は、月光の雲による反射光を用いた波長感度校正手法を確立するなど、高精度なデータ校正手法を確立し、高い信頼性を持つ観測データの作成に成功した点が評価できる。  続いてVISIを用いて実施した超高層大気構造の観測では、波長762nmの酸素分子による大気光に特徴的な同心円状の構造を発見し、その形態的な特徴の解析、伝搬特性の解明を行った。このような構造は地上観測からの大気光測定では断片的には観測されていたが、雲に遮られない広い視野を持つ宇宙空間からの観測を実施した事によって、構造の全体像が申請者によって初めて明らかにされた。1,200kmという空間的な広がり、80kmという支配的波長特性は、視野の広い宇宙空間からの測定によって初めて得られたものである。また、超高層大気における同心円状構造の中心位置と対流圏構造との比較は、対流圏で発生した大気波動の超高層大気領域への伝搬を直接的に示唆する観測成果であった。これらの結果は、他の地上装置・衛星による観測的研究、及びシミュレーションなどの理論的研究へ大きな影響を与える成果である。  また、「れいめい」衛星を用いて行った大気光の緯度構造の測定では、大気光の大規模な構造の解明に成功しており、観測が限られている宇宙空間からの大気光構造の解析結果として重要であり、上記のような超高層大気の10km-1,000kmスケールの構造の背景の解明としても価値がある。  よって、本論文は博士（理学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成２７年１月１９日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行った結果、合格と認めた。  要旨公表可能日：     年   月   日以降 

宇宙空間からの観測による中間圏および下部熱圏における可視近赤外域大気光の構造についての研究

http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/199107/1/yrigk04056.pdf

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