京都大学0048新制・課程博士博士(理学)甲第6675号理博第1810号新制||理||988(附属図書館)16097UT51-97-H59京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻(主査)教授 安藤 雅孝, 教授 尾池 和夫, 助教授 中西 一郎学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDA

Horikawa, Haruo

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Title Inversion for dynamic source parameters : Application to the1990 Izu-Oshima, Japan, earthquake( Abstract_要旨 )Author(s)Horikawa, HaruoCitationKyoto University (京都大学)Issue Date1997-03-24URL http://hdl.handle.net/2433/202443RightType Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University氏 名学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位授与の日付学位授与の要件研究科 ･専攻学位論文題 目亡91】はり かわ はる お堀 川 晴 央博 士 (理 学)理 博 第 1810号平 成 9年 3 月 24日学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当理 学 研 究 科 地 球 惑 星 科 学 専 攻Inversionfordynamicsourceparameters:Applicationtothe1990Izu-Oshima,Japan,earthquake(動力学的震源パラメタ-を求めるインヴァージョン:1990年伊豆大島近海地震への適用)(主 査)論文調査委員 教 授 安 藤 雅 孝 教 授 尾 池 和 夫 助教授 中西 一郎論 文 内 容 の 要 旨地震の震源は,摩擦法則にしたがって変位に不連続をもつ領域が動的に広がるとして表現され,これをクラックモデルと呼ぶ｡これまでのクラックモデルを用いた研究では,摩擦法則を記述するパラメタ-の分布として極端な例を扱い,それぞれのパラメタ-の性質を調べるため,数値実験による理論的な研究に重点が置かれてきた｡そして,実際の地震におけるパラメタ-の分布に関しては,得られた結果から想像するにとどまっていた｡一方,波形その他データを使った実際の地震の解析では,破壊の物理過程を考慮しない運動学的なモデルにもとづくモデルの推定が行われてきた｡また,最近は,データ解析により得られた運動学的なモデルを満たすような,クラックモデルの推定も試みられている｡ ここで,すべりの時刻歴は応力の時刻歴と密接に結びついていることに注意する必要がある｡ なぜなら,運動学的なモデルによる解析では,すべりの時刻歴についてなにがしかの仮定を入れることが多いからである｡ すなわち,すべりの時刻歴の仮定に不適切な面があれば,それにより,得られた応力の履歴,ひいては,摩擦法則のパラメタ-の分布がおかしくなる危険性がある｡そこで,本研究では,摩擦法則下でのクラックの伝播を波形解析の過程で常に考慮する新しい解析手法を提唱する｡波形解析の段階で,常にクラックの伝播を考慮している以上,上記の危険性を回避できるだけでなく,破壊の物理に照らして妥当なモデルが得られることが常に保証されており,得られたモデルは,実際の地震のモデルとして適切であると考えられる｡本研究の解析では,波形の非線形インヴァージョンを用いる｡ 非線形インヴァージョンでは,与える初期モデルによっては大域的に見て残差が最小なモデルにたどりつくことができず,局所的に見て残差が最小なモデルが得られる可能性がある｡したがって,非線形インヴァージョンでは,初期モデルを立てる際の基準を持つことが必要となる｡そこで,あらかじめ答えの分かっている数値実験により,初期モデルを立てる際の基準を確立することを最初の目的にした｡続いて,その手法を1990年の伊豆大島近海地震の強- 316-震記録に適用し,摩擦法則のパラメタ-の分布,及び,破壊伝播の様子を求めた｡波形合成は表現定理をもとにしている｡ 断層面上でのすべりの履歴は,クラック伝播を差分法により計算することで求めた｡なお,強度と応力降下量の2つのパラメタ-を使った単純な摩擦法則を仮定した｡そして,グリーン関数は水平多層構造を仮定し,refletivity法により計算した｡摩擦パラメタ-は,断層をいくつかの小領域に分割してその各々に割り振 り,その小領域内では一定とした｡インヴァージョンで求めるべきパラメタ-は,最終的には,上記の強度および応力降下量であるが,実際には,応力比と強度を使っている｡数値実験による手法の検討の結果,初期モデルにおいて,波形のフェイズを極力合わせておくことが,大域的に見て残差が最小なモデルを得るために必要であることが分かった｡また,波形のフェイズを合わせるための指標として相互相関関数が有用で,ひいては,その大小により,インヴァージョンがうまくいくかどうかも予測可能であることが分かった｡次に,この手法を1990年伊豆大島近海地震に適用した｡得られたモデルでは,破壊開始点での応力降下量が低い｡また,そのため,最初の3秒間は,強度の低いところを広がっていった｡そして,主要な破壊が始まり,急激に破壊が広がっていった｡強度 ･応力降下量の深さ分布が最も浅い部分で大きいことが推測された｡ これは,今までの解析例では少ない｡これに対して,｢よく発達した｣断層という言い方もされる,サン=アンドレアス断層で発生する地震では,最も深い所でそれらのパラメクーが大きな借をとる｡ 余震の深さ分布と考えあわせると,この違いは,断層としての活動履歴の長さの違いを反映していることが示唆された｡運動学的なモデルに基づいたインヴァージョンの結果とクラックモデルの数値実験の結果とから,実際の断層面上では,すべ り速度に依存した摩擦法則が必要という主張がされている｡ 本研究では,すべり量にもすべり速度にも依存しない単純な摩擦法則を仮定しているが,得られたモデルからの合成波形が,戟測波形に比べて,短周期成分に欠けているようには見えない｡したがって,今回見た周波数領域では,すべり摩擦法則が速度依存性をもつ必要はないと考えられる｡論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨すべり量や破壊開始時刻をパラメタ-とする運動学的モデルは,物理的には不十分だが,その簡便さのため,波形データによる震源過程の解析に多く用いられ,破壊過程の多様性を明らかにするという一定の成果をあげた｡運動学的なモデルによる震源モデルは数多く求められているので,今後は,なぜそのような多様性が生じるのかを探求し,統一的な震源モデルを得る努力が必要である｡ しかし,すべり量や破壊開始時刻の分布の多様性は,動力学的なパラメタ- (摩擦パラメタ-)の分布に支配されている以上,その分布を求めて,初めて,多様性を知る準備が整ったといえよう｡申請者は,波形データから動力学的モデルを導く新しいインヴァージョン手法を開発し,摩擦パラメタ-の分布を推定することを試みている｡ この研究は,摩擦パラメタ-の分布を求めることを目的としており,上記の震源過程の研究の流れを考えると,これからの震源過程の研究の主流をなすと思われる｡まず,手法を確立するために,非線形インヴァージョンによる波形解析をする際に仮定する,初期モデ- 317-ルの指針を兄い出すことに重点をおいた研究を行っている｡ 技術的な問題という意味では切り込むべき問題の本質とは離れるが,インヴァージョンによる答えが,与える初期モデルによっては,大域的な意味での最適なモデルを得ることができず,局所的な意味で最適と考えられるモデルを得てしまう可能性がある以上,初期モデルを立てる際の基準を持つことは,おろそかにできない問題である｡ したがって,初期モデルを立てる際の基準を確立させたことは重要な研究成果である｡ また,初期モデルの善し悪しの評価のために,相互相関関数を導入したことは,他の非線形な問題を解く際にも応用できる可能性があり,より一般的な基準となる可能性を秘めている｡次に,1990年の伊豆大島近海地震を解析した｡得られた結果のうち,深さ方向に摩擦パラメタ-の分布に着目して震源過程の多様性の成因を考察し,断層の活動歴との関係を論じている｡ また,現在,大きな問題となっている摩擦法則のすべり速度依存性についても考察し,すべり速度依存性は必要ないとの見解を示している｡以上,本主論文は,より物理的な量で震源モデルを推定することに成功し,また,震源過程の多様性の成因や断層面上での摩擦法則を論じたことは,震源過程の研究に進歩に大きく貢献すると考えられる｡よって,本論文は博士 (理学)の学位論文として価値あるものと認める｡なお,平成9年1月14日,主論文および参考論文に報告されている研究業績を中心として,これに関連した研究分野について諮問した結果,合格と認めた｡- 318-

動力学的震源パラメターを求めるインヴァージョン : 1990年伊豆大島近海地震への適用

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動力学的震源パラメターを求めるインヴァージョン : 1990年伊豆大島近海地震への適用

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