京都大学0048新制・課程博士博士(工学)甲第19001号工博第4043号新制||工||1622(附属図書館)31952京都大学大学院工学研究科分子工学専攻(主査)教授 白川 昌宏, 教授 今堀 博, 教授 森 泰生学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDFA

Naotaka, Tsutsumi

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Title TLR/IL-1Rシグナルに関連するタンパク質の構造学的研究( Abstract_要旨 )Author(s)Naotaka, TsutsumiCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2015-03-23URL http://dx.doi.org/10.14989/doctor.k19001Right許諾条件により本文は2025/03/31に公開Type Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University 京都大学 博士（工学） 氏名 堤 尚孝 論文題目 STRUCTURAL ANALYSIS OF THE PROTEINS RELATED TO TLR/IL-1R SIGNALING (TLR/IL-1Rシグナルに関連するタンパク質の構造学的研究) （論文内容の要旨）  本論文は、ｉｎｔｅｒｌｅｕｋｉｎ（ＩＬ）－１ファミリーに属する炎症性サイトカインＩＬ－１８の受容体認識機構と、その下流シグナルの機能障害に関する構造的、生化学的解析であって、四章から構成される。ＩＬ－１ファミリー受容体（ＩＬ－１Ｒ）は、病原体センサーとして働くＴｏｌｌ様受容体（ＴＬＲ）と同様にＭｙＤ８８依存性経路の起点となり、リガンド結合により多様な炎症性サイトカインの発現を促す。  第一章は序論であり、高等生物の免疫機能、特にサイトカインによる免疫細胞の機能制御について、近年の研究を含めごく簡単に概説した後、ＴＬＲ／ＩＬ－１Ｒの機能や構造、疾患との関連、及び進化について紹介することで、本論文の導入としている。  第二章では、自然免疫不全症の一種であるＩＲＡＫ４欠損症／ＭｙＤ８８欠損症を引き起こしうるＩＲＡＫ４／ＭＹＤ８８遺伝子の変異を評価するためのｉｎ ｖｉｔｒｏ機能解析法を提案した。本疾患は、ＴＬＲ／ＩＬ－１Ｒ下流のＭｙＤ８８依存性経路が正常に活性化出来なくなる常染色体劣性遺伝形式の疾患であり、乳幼児期よりグラム陽性菌による重症感染症を繰り返す。その確定診断には、患者の病因遺伝子変異を同定する必要があるが、近年、エクソーム解析や次世代シークエンス技術の出現によりＩＲＡＫ４、及びＭＹＤ８８の新規遺伝子変異（多型・病的変異）が次々と報告されているため、各変異の機能を予め評価することが求められている。本研究では、これまでに報告のあった遺伝子変異（ＭｙＤ８８欠損症変異：Ｅ５２ｄｅｌ，Ｅ５３Ｘ，Ｌ９３Ｐ，Ｒ１９６Ｃ；ＭｙＤ８８－ＳＮＰ：Ｓ３４Ｙ，Ｒ９８Ｃ，Ｍ１７８Ｉ；ＩＲＡＫ４欠損症変異：Ｍ１Ｖ，Ｒ１２Ｃ，ｃ．１１８ｉｎｓＡ，Ｑ２９３Ｘ，Ｇ２９８Ｄ；ＩＲＡＫ４－ＳＮＰ：Ｉ５Ｖ，Ｒ２０Ｗ，Ｉ２６Ｔ，Ｉ３９Ｖ，Ｓ９８Ｒ）について、培養細胞を用いた発現実験と活性実験、及びリコンビナントタンパク質を用いた相互作用実験を組み合わせた機能評価を行い、機能喪失の機序（タンパク質の発現、分子間相互作用、及び安定性の喪失、低下）を分類した。このとき、ＭｙＤ８８変異体の機能解析では細胞実験と相互作用実験に矛盾が見られなかった。一方で、ＩＲＡＫ４の病的変異体であるＲ１２Ｃでは、細胞実験においては野生型と同様の挙動を示したが、サイズ排除クロマトグラフィー、ＮＭＲを用いた相互作用実験によりＭｙＤ８８との相互作用が低下することが示された。また、ＩＲＡＫ４－ＳＮＰであるＲ２０Ｗは、野生型と比して安定性が低下している可能性が示唆された。本研究により、変異体のタンパク質発現のみならず、その安定性やタンパク質間相互作用の低下がもたらす複合体（Ｍｙｄｄｏｓｏｍｅ）の形成異常により本疾患が生じることが確認され、その機能解析には細胞内実験と相互作用実験を組み合わせた評価系が有用であることが示された。  第三章では、ＩＬ－１８と受容体との複合体構造を解明した。ＩＬ－１ファミリーには７種類の炎症性アゴニストが含まれるが、この中でＩＬ－１８のみが特異的なシグナル受容体セットを有するという特徴を持つ。感染や細胞ダメージによるシグナルを受けてカスパーゼ１が活性化されると、ＩＬ－１８前駆体はＩＬ－１β前躯体と共に成熟型京都大学 博士（工学） 氏名 堤 尚孝 に変換されて細胞外に分泌さる。分泌されたＩＬ－１８は細胞膜上のＩＬ－１８Ｒα、ＩＬ－１８Ｒβと結合してＭｙＤ８８依存性経路を活性化し、炎症反応の増大に至る。このため、ＩＬ－１８は生体防御因子として重要な役割を担うが、その過剰産出は自己炎症疾患やアレルギーといった様々な疾患に繋がる。従って、ＩＬ－１８とその受容体との相互作用を制御することは、上記疾患の有効な治療戦略となると考えられ、これを助けるための構造情報が求められていた。第一節では、ＩＬ－１８、ＩＬ－１８Ｒα、及びＩＬ－１８Ｒβを高純度で大量精製する方法を記し、ＩＬ－１８単体、及びＩＬ－１８に受容体が結合した２者、３者複合体の結晶化とＸ線回折実験について纏めた。第二節では、ＩＬ－１８、ＩＬ－１８／ＩＬ－１８Ｒα、及びＩＬ－１８／ＩＬ－１８Ｒα／ＩＬ－１８Ｒβの構造決定を行った。得られた２者、３者複合体の構造は、既知のＩＬ－１β複合体の構造と一見似通っていたが、結合界面を中心に大きな違いが見られた。また、各受容体はそれぞれ３つのｉｍｍｕｎｏｇｌｏｂｕｌｉｎ（Ｉｇ）様ドメイン（アミノ末端側からＤ１、Ｄ２、Ｄ３）から成っていたが、他のＩＬ－１ＲのＩｇ様ドメインとは異なる特徴が見られた。２者複合体の構造は、ＩＬ－１８ＲαがＩＬ－１８を３つのＩｇドメインで握りこむという、ＩＬ－１βの２者複合体と同じ様式で結合していた。しかしながら、ＩＬ－１８Ｒα－Ｄ１はＩｇスーパーファミリーにおいて良く保存されたｆストランド上のシステイン残基がフェニルアラニンに置き換わっているために、ドメインコアのジスルフィド結合が存在しなかった。その一方で、リガンド結合表面に２つのジスルフィド結合を有し、それらにより維持されるポケットがＩＬ－１８の特徴的なβヘアピンを認識していた。さらに、ＩＬ－１８Ｒα－Ｄ３のＡｓｎ２９７に付加した糖鎖が、ＩＬ－１８と相互作用していた。このような特異的な機構によって、リガンドの受容体に対する配向はＩＬ－１βのものと比較して約２０度回転し、２次受容体との結合面からＩＬ－１８のβ４－β５ループが遠ざかっていた。ＩＬ－１８Ｒβは、ＩＬ－１ＲＡｃＰと同様に、形成されたヘテロ２量体に対して側面から結合していた。しかし、ＩＬ－１８ＲαとＩＬ－１８ＲβのＤ２ではＩｇドメインで良く保存されたｄストランドが欠失していたため、ＩＬ－１８Ｒβのｃ－ｄループはｃ－ｅループに置き換わり、結合界面から遠ざかっていた。ＩＬ－１ＲＡｃＰのｃ－ｄループとＩＬ－１ＲＩのｄストランドは、ＩＬ－１β、ＩＬ－１ＲＩ、ＩＬ－１ＲＡｃＰの３者が接する結合界面に存在し、シグナル複合体の形成に決定的な影響を及ぼすと考えられる。さらに、ＩＬ－１８複合体とＩＬ－１β複合体の間では、２者複合体（ＩＬ－１８／ＩＬ－１８Ｒα，ＩＬ－１β／ＩＬ－１ＲＩ）に対する２次受容体（ＩＬ－１８Ｒβ，ＩＬ－１ＲＡｃＰ）の配向が約２０度ずれていた。このｄストランドの欠損は他のＩＬ－１Ｒでは見られず、これがＩＬ－１ＲＡｃＰと対照的なＩＬ－１８Ｒβの特異性に寄与すると考えられる。これらの知見は、溶液ＮＭＲ法を用いた相互作用解析、ＳＡＸＳを用いた構造解析、ＳＰＲによる変異体の結合実験、及び細胞実験による変異体の機能評価と良く一致した。本研究により、ＩＬ－１ファミリーの受容体認識機構に関する知見が深まる一方で、得られた構造はＩＬ－１８シグナルの阻害剤設計に寄与すると期待される。  第四章は結論であり、本論文で得られた成果について要約している。   氏 名 堤 尚 孝 （論文審査の結果の要旨）  本論文は、①ＩＲＡＫ４欠損症／ＭｙＤ８８欠損症に係わる新規遺伝子バリアントの解析方法の提案とその発症機構の解明、及び②ＩＬ－１８とその受容体から成る複合体構造の解明、の２つを目標に研究した成果について纏めたものであり、得られた主な成果は次のとおりである。  １． これまでに報告のあった各種遺伝子変異による、ＩＲＡＫ４欠損症／ＭｙＤ８８欠損症の発症機構（タンパク質発現、分子間相互作用、及び安定性の喪失、低下）について、培養細胞による機能実験とリコンビナントタンパク質を用いた相互作用実験を組み合わせることによって明らかにすると共に、新たにＩＲＡＫ４のＲ２０Ｗが機能低下型の変異である可能性を示した。 ２． ＩＬ－１８、ＩＬ－１８Ｒα、及びＩＬ－１８Ｒβをリコンビナントタンパク質として高効率に得る方法を確立した。また、ＩＬ－１８単体、ＩＬ－１８／ＩＬ－１８Ｒαの２者複合体、及びＩＬ－１８／ＩＬ－１８Ｒα／ＩＬ－１８Ｒβの３者複合体についてＸ線結晶構造解析を行い、それぞれ２．３３Å、３．１０Å、３．１０Åの分解能で構造決定に成功した。得られた３者複合体構造は、ＩＬ－１ファミリーに共通な「レフト型」の２次受容体認識機構を証明した。また、ＩＬ－１８Ｒα－Ｄ１のコアジスルフィド結合の欠失や、３者界面における両受容体Ｄ２のｄストランドの欠失を明らかにすることで、ＩＬ－１ＲＡｃＰと対照的な、ＩＬ－１８Ｒβの特異的な３者複合体形成を説明した。 ３． ＩＬ－１８と各受容体の変異体を用いて相互作用実験、細胞機能実験を行うことで、複合体形成とシグナル伝達に係わる重要な領域を確定した。また、得られたＩＬ－１８複合体の構造と相互作用実験を基に、ＩＬ－１８シグナルを抑制する方法について議論した。  本論文は、ＴＬＲ／ＩＬ－１Ｒのシグナル伝達機構に関する興味深い知見や、アミノ酸変異による機能変換を生化学的、構造学的な観点から明らかにしており、①自然免疫不全症の確定診断や病態解明、②アレルギーや自己炎症性疾患に関連するＩＬ－１８シグナルの阻害剤探索などに有用で、学術上、実際上寄与するところが少なくない。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成２７年２月２３日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。 なお、本論文は、京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し、公表 に際しては、（平成３７年３月３０日までの間）当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。    

STRUCTURAL ANALYSIS OF THE PROTEINS RELATED TO TLR/IL-1R SIGNALING

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