京都大学0048新制・課程博士博士(工学)甲第18979号工博第4021号新制||工||1619(附属図書館)31930京都大学大学院工学研究科マイクロエンジニアリング専攻(主査)教授 鈴木 基史, 教授 木村 健二, 教授 蓮尾 昌裕学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDFA

Namura, Kyoko

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Title Studies on Photothermal Conversion by Noble MetalNanoparticles( Abstract_要旨 )Author(s)Namura, KyokoCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2015-03-23URL http://dx.doi.org/10.14989/doctor.k18979RightThis thesis is based on the following papers: [1] K. Namura, M.Suzuki, K. Nakajima, and K. Kimura, “Heat-generatingproperty of a local plasmon resonator under illumination, ”Optics letters 36, 3533‒3535 (2011). [2] K. Namura, M.Suzuki, K. Nakajima, and K. Kimura, “Highly localizedphotothermal conversion in two-dimensional Au nanoparticlearrays, ” Journal of Applied Physics 114(7), 074308 (2013).[3] K. Namura, M. Suzuki, K. Nakajima, and K. Kimura,“Photoacoustic emission from Au nanoparticles arrayed onthermal insulation layer, ” Optics Express 21, 8689‒8700(2013). [4] K. Namura, K. Nakajima, K. Kimura, and M.Suzuki, “Enhancement of photoacoustic emission from self-supported plasmonic multilayers, ” Journal of AppliedPhysics 116, 024310 (2014). [5] G. Recio-Sánchez, K. Namura,M. Suzuki, and R. J. Martín-Palma, “Nanostructuredcopper/porous silicon hybrid systems as efficient sound-emitting devices, ” Nanoscale Research Letters 9, 487 (2014).[6] K. Namura, K. Nakajima, K. Kimura, and M. Suzuki,“Photothermally controlled Marangoni flow around a microbubble, ” Applied Physics Letters 106(4), 043101 (2015).Type Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University京都大学 博士（工学） 氏名   名 村 今 日 子 論文題目 Studies on Photothermal Conversion by Noble Metal Nanoparticles （貴金属ナノ粒子による光熱変換に関する研究）  （論文内容の要旨）  本論文は、貴金属ナノ粒子の光吸収に伴う発熱に着目し、貴金属ナノ粒子を有する多層膜構造を制御することによって光熱変換を時間的、空間的に制御可能にした微小機能性ヒーターの開発と、それを用いた周囲流体の温度、振動、流れの制御に関する研究をまとめたものであって、７章からなっている。  第１章は序論であり、研究の背景と目的ならびに本論文の構成を述べている。貴金属ナノ粒子のプラズマ共鳴現象には強い光吸収や局所電場増強が付随することが古くから知られており、20 世紀の終わりころから局所電場増強のセンシング等への応用を目指した研究が盛んに続けられている一方で、近年強い光吸収に伴う発熱に着目したサーモプラズモニクスと呼ばれる研究分野が立ち上がりつつあることを紹介している。このような研究分野において、プラズマ振動と光のカップリングを積極的に制御することが有用であることを指摘した上で、本研究で扱う局所プラズモン共振器と呼ばれる多層膜に関連する先行研究と、本研究の目的が述べられている。  第２章では、局所プラズモン共振器の光学特性を理論的に考察している。局所プラズモン共振器は、貴金属ナノ粒子/誘電体層/高反射率鏡 多層構造からなる複雑な多層膜であるが、貴金属ナノ粒子や誘電体層の内部構造のサイズが本研究で着目する可視から近赤外の波長に比べて十分小さいため、各層を有効屈折率で特徴づけられる均一な層として扱うことが述べられており、そのモデル構造が示されている。特性行列法によって計算した局所プラズモン共振器の反射スペクトルと実験がよく一致することからこのモデルが妥当であることを主張している。そして誘電体層の厚さを変えることで、光の吸収を実質的に 0%から 100%までの広い範囲で制御することが可能であることを示している。さらに、多層膜内部での単位長さあたりの吸収率を計算する手法を開発して、多層膜における各層の役割を考察し、局所プラズモン共振器においては、表面に形成された 10 nm 程度のごく薄い貴金属ナノ粒子層が入射光のほぼすべてのエネルギーを吸収することで、高い吸収率が実現されることを明らかにしている。このことから、局所プラズモン共振器構造が、光のエネルギーを高い効率で熱に変換し、その熱を周囲の媒質に伝達するのに適していることを述べている。  第３章では、局所プラズモン共振器の作製について述べている。本研究では、真空蒸着によって離散的な貴金属ナノ粒子層を形成するために、その下地となる誘電体層に孤立したコラム構造を形成してひな形として利用している。コラム構造の形成には、動的斜め蒸着法というユニークな手法を用いており、誘電体層を真空蒸着する際に基板を蒸発源に対して 80°程度の大きな角度に傾けて配置し、さらには面内で回転させている。この手法によるナノコラムの形成のメカニズムが、自己シャドウイング効果によって理解できることを説明した上で、実験装置と試料作製の手順を述べている。特に本研究では、ナノ粒子層と誘電体層の最適な厚さの組み合わせを効率良く探索するために、コンビナトリアルな試料を作製する工夫をしている。  第４章では、光熱変換の空間的な制御について述べている。局所プラズモン共振器からの発熱を評価するため、試料表面に小型のセルを形成し、セルに満たされた水の温度京都大学 博士（工学） 氏名   名 村 今 日 子 を放射温度計で測定する方法が示されている。この方法によって、誘電体層の膜厚を変えることで貴金属ナノ粒子層での光熱変換の効率を制御可能であることを実験的に明らかにし、局所プラズモン共振器が空間的に発熱部位を制御可能な微小ヒーターとして機能することを示している。  第５章では、光熱変換の時間的な制御について述べている。局所プラズモン共振器では表面から 10 nm 程度の領域で光熱変換が起きるため、発熱部位の熱容量が小さく、また周囲の流体と直接接していることから、高速な温度変化と周囲流体への効率よい熱伝達が可能になることを期待している。それを実証するために強度変調したレーザ光を局所プラズモン共振器に照射して光音響効果を測定した結果、グラファイトなどのバルク光吸収体に比べて強い音波が発生することを明らかにしている。また、一次元の熱伝導方程式に基づく解析の結果、ひな形に用いている多孔質の誘電体層の熱伝導率が低いことも、強い音波の発生に寄与していることを指摘している。さらには貴金属ナノ粒子にCu を、誘電体層に Si3N4の自己指示膜や多孔質 Si を用いても同様の効果が得られることを報告し、本研究の成果が特定の材料や製法に特化されたものではないことを示している。  第６章では、第５章までに得られた知見に基づいて光熱変換の流体駆動への応用について述べている。まず、局所プラズモン共振器を水中に浸漬して適当な強度のレーザ光を照射することで、所望の場所に所望の大きさのマイクロバブルを形成できることを報告している。次に、マイクロバブルの大きさが大きく変わらないように強度を調節したレーザ光をバブル周辺に照射することで、渦状で高速の流れが誘起されることを報告している。バブルに光が入射した際の屈折を考慮して光の照射点と流れの関係を系統的に調査た結果、気相/液相/ナノ粒子表面の３相の境界近傍に光が照射された時にもっとも激しい流れが起きることを見出し、流れの方向と温度勾配の関係や、簡単な流体力学的な考察から、この流れが表面・界面張力の温度依存に起因するマランゴニ対流であると結論している。また、異なる直径のナノ球を分散させた懸濁液を用いてこの流れを誘起すると、直径によって異なる場所にナノ球が集まることを見出し、粒子の選別が可能であることを報告している。  第７章は結論であり、本研究で得られた成果ならびに今後の課題を述べている。      氏 名 名 村 今 日 子 （論文審査の結果の要旨）  本論文は，貴金属ナノ粒子の光吸収に伴う発熱に着目し、局所プラズモン共振器と称する貴金属ナノ粒子を有する機能性ナノ構造体を制御することによって光熱変換を時間的、空間的に制御可能にした微小機能性ヒーターの開発と、それを用いた周囲流体の温度、振動、流れの制御に関する研究をまとめたものであり、主な成果は以下の通りである。  1. 局所プラズモン共振器は、貴金属ナノ粒子/誘電体層/高反射率鏡 の複雑なナノ構造を持つ多層膜である。その光学特性を有効媒質近似と特性行列法に基づいて考察し、誘電体層の厚さを最適化すると、表面に存在する厚さ 10 nm 程度の極めて薄い貴金属ナノ粒子層でほぼ完全に光が吸収されることを明らかにした。  2. 局所プラズモン共振器における誘電体層の膜厚を変えることで貴金属ナノ粒子層での光熱変換の効率を制御することができることを実験的に明らかにし、局所プラズモン共振器が空間的に発熱部位を制御可能な微小ヒーターとして機能することを実証した。  3. 局所プラズモン共振器に強度変調したレーザ光を照射すると、グラファイトなどのバルク光吸収体に比べて強い音波が発生することを明らかにし、表面の貴金属ナノ粒子層の温度を高速に変化させることができることを実証した。  4. 局所プラズモン共振器を水中に浸漬してレーザ光を照射することで、a)所望の場所に所望の大きさのマイクロバブルを形成できること、b)マイクロバブル周辺を加熱することでマランゴニ効果に起因する高速の流れを誘起できることを見出した。この現象を利用することで、液中に浮遊する異なるサイズのマイクロ粒子の選別が可能であることを報告した。   以上のように本論文は、貴金属ナノ粒子による光熱変換を、機能性ナノ構造体を利用することで制御・応用するための研究成果をまとめたものであり、学術上、実際上寄与するところが少なくない。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成２７年２月２０日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。      

貴金属ナノ粒子による光熱変換に関する研究

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