research

傷害に対するスギ木部放射柔細胞の初期の反応 : 変色と細胞内容物の季節的変化

Abstract

傷害に対する木部柔細胞の初期の反応を, 主として細胞学的な観点から検討した。このため実験的に機械的傷害を与え, 傷害を与えた時点で木部を構成していた組織の変化を, 各季節において, 時間的経過を追って観察した。なお, 機械的傷害として1組の剥皮を行い, 一方はそのまま放置 (open) し, 他方は傷害後ただちに表面をエポキシ樹脂系接着剤で被覆 (sealed) した。得られた結果は以下のとおりである。(1) 傷害後木部は一般に変色を示した。変色の広がりは季節により異なった。すなわち春・夏には変色は広範囲に広がり, 秋にはやや狭く, 冬には最小値を示した。(2) 放射柔細胞内容物の変化は, 春・夏と秋・冬で異なった。すなわち前者では, 核の変形, 細胞質基質の変色, 貯蔵物質の減少の順に生じたが, 後者では細胞質基質の変色の後に核の変形がおこった。(3) openとsealedの両者において, 材の変色や放射柔細胞内容物の変化が見られた。しかしopenの方が一般に変化範囲が広く, また変色は濃色を示した。(4) 変色と菌類との関係を検討したところ, 材の変色にとって, 菌類の存在は必須のものではないと判断された。(5) 以上の結果から, 樹幹は機械的傷害に伴い, 必ず変色することが明らかになった。また傷害に伴う組織の生理的条件の変化が, 変色に必須であると判断された

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