古市, 剛史

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Title屋久島のニホンザルの社会的研究(III 共同利用研究2.研究成果)Author(s)古市, 剛史Citation霊長類研究所年報 (1983), 12: 38-38Issue Date1983-01-19URL http://hdl.handle.net/2433/163052RightType Departmental Bulletin PaperTextversionpublisherKyoto University屋久島のニホンザルの社会学的研究古市 剛史 (京大 ･理)1.従来の餌付けされたニホンザル群を対象とした研究結果とは異なり,自然群では個体の優劣は採食丘にほとんど影響を及ぼさないことがわかった｡採金時における優劣関係の現われ方には2種類あった｡1つは,括抗的社会交渉によって優位者が劣位者をある場所から追い払うというものであり,もう1つは,劣位者が自主的に優位者への接近を回避するというものである｡優劣関係がこれら2種輔の形態をとって現われるのは,ほとんど個体間距離が1m以内である場合に限られていた｡一方,採金時には普通3m以上の個体間距離が保たれていた｡これらのことから,劣位個体が劣位であるがゆえに行動を制限されることは少なく,したがって採食上の不利益をこうむることはほとんど無いことがわかった｡2.前年度の調査で,ニホンザル自然群では,餌付けされた群れではほとんど見られなかったオトナのオス同士のグルーミングが極めて頻繁に見られることがわかった｡そこで本年度はとくにオス間の社会交渉に注目して調査を行なった｡その結果.オス問の親和的関係の存在が,-ナレオスが群れに加入するのを助ける効果を持っていること,上位のオスもオス同士の親和的関係を維持するために枇極的な努力を行なっていることなどがわかった｡今後さらにオス間関係の研究を重ねることによって.ニホンザルの社会構造論に新たな観点を与えることが期待される｡箱根丁群の遊動生活におけるサブグルーピング現象の研究浦 本 昌紀 (和光大学 ･人文学部)筆者は,ニホンザルの群れを構成する個体が遊動生活の中でどのようなグルーピングを行っているかという点に着目し,箱根で群を対象に1981年4月から1982年3月まで調査を行った｡T群の4才以上の成員は個体識別され,血縁もほぼ明らかである｡T群で常時観察されるオトナメス(6才以上)18疏,オトナオス3頭について,個体追跡法により一定時間内に社会的交渉をもった個体との距離･行動を記録し,これを各季節について行った｡観察地域や季節によって視界が変化し観察条件が異なるが,対象個休から半径10m以内にいた個体は漏れなく記録できた｡記録結果に一定の操作を加え,各個体間の空間的距離を社会関係を表す示標として数塁化した｡その結果,社会的交渉頻度には個体ごとにはっきりした差が見られた｡また交渉頻度の高い個体は,グルーミング及び距離0メートルでの他個体との近接例数も同様に多かった｡ただしIn位1位オスは交渉頻度がずばぬけて高いにもかかわらず,グルーミング及び距離0メートルでの近接例数はきわめて少く,オトナメスどうしの社会的交渉のあり方と,オトナオス･オトナメス間のそれとの違いを示していた｡社会的交渉頻度の高い個肘 ま群れの中核となるサブグループを形成している可能性が高い｡また対象個体以外に,10頭内外のオスグループが群れから大きく離れて独自に遊動するのがしばしば観察された｡このオスグループも安定したサブグループである可能性が高い｡現在,群れの中核的サブグループ及び周辺的個体に着目し.調査続行中である｡中標高地域におけるヤクシマサルの生態学的社会学的研究只 田末 寿 (京大 ･理)上原 盃 男 (札幌大 ･教在)はじめに屋久島の国割岳西斜面は標高700m付近まで唆温帯林に覆われており,それはさらに,亜熟鞘林要素が多く混入する標高400m以下の下部唆温帯林とそれらが見られない上部暖温帯林に2分できる｡この植生の境界は,ヤクシマザルの垂直分布における最下層部の群れとその上部の群れとの境界ともほぼ一致する｡これらの異なる植生帯に生息する群れの社会と生態を比較するために,1981年の夏季に西部林道沿い(標高120-180m),浜之上林道 (標高320-720m),半山川流域 (標高150-700m),永田歩道 (標高150-800m),大川林道 (標高200-800m),安房林道 (標高450-900m)で調査をおこなった｡結 果① 上部唆温帯林では,サルは大きな川の沢沿い-38-

屋久島のニホンザルの社会的研究(III 共同利用研究2.研究成果)

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