この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。相溶する二成分高分子混合系の一成分を光架橋すると、架橋温度を変えることで異なるモルフォロジーが得られた。ここでは架橋反応と高分子鎖の拡散との関係に着目し、相分離構造の発現機構について検討す

Qui, TRAN-CONG

原田, あすか

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Title光架橋した二成分高分子混合系に見られる秩序化現象(ポスターセッション,基研短期研究会「複合系における動力学の新展開」,研究会報告)Author(s)原田, あすか; Qui, TRAN-CONGCitation物性研究 (1995), 63(5): 581-584Issue Date1995-02-20URL http://hdl.handle.net/2433/95470RightType Departmental Bulletin PaperTextversionpublisherKyoto University｢複合系における動力学の新展開｣光架橋した二成分高分子混合系に見られる秩序化現象原田 あすか ､QliTW ･CONG京都工芸搬維大学 高分子学科Bm皿;A51681@JPNKUDPC(Bitnet)要旨相港する二成分高分子混合系の-成分を光架稚すると､架柵温度を変えることで異なるモルフォロジー か得られた｡ここでは架構反応と高分子鎖の拡散との関係に着日し､相分離雄途の発現横様について検討するⅠ序高分子混合系の物性は､構成する分子鎖固有の特性のみならず､その集合体の構造 (モルフォロジー)にも大きく左右されることが知られている｡モルフォロジーの制御法は､実験室でよく行われるリビングアニオン重合による化学的方法l)と､加工過程で広く見られているせん断応力や撹拝などを利用した物理的方法2)との二つに大別できる.前者の例としてブロックコポリマーが挙げられ､重合組成の調整により､ラメラやシリンダあるいは球状 ドメインなどの秩序性構造を有する多相系材料が得られている｡ しかしながら､そのスケールはナノメータ領域に限定される｡一方後者では､相分離構造の大きさは可変であるが､秩序性の制御は極めて困難である｡このように､高分子材料の実用性 (耐衝撃的特性など)に決定的な影響を及ぼすミクロン領域におけるモルフォロジー制御3)が極めて重要視されている｡本研究では､相溶する二成分高分子混合系の-相領域内七､光照射により片方の成分のみを架橋した｡熱で架橋反応を行う場合とは異なり､光架橋は迅速に誘起できるだけでなく､低温における反応も可能であり､照射光の強度､混合系の組成などを変化することにより架橋反応と相分離過程の競合を容易に制御できる｡ このようにして､様々なモルフォロジーの発現と対応した物性の制御が期待される｡ここでは､均一-相領域において､二成分高分子混合系を異なる3つの温度で光架橋し､得られたモルフォロジー､特にターゲットパターンとその発現機構ついて検討する｡Ⅱ実験及び結果重量艶本研究で用いた試料は､前報一)のアントラセンをラベルしたスチレンとクロロメチルスチレンのランダム共重合体lP(SCMS)A】と､ポリビニルメチルエーテルPVMqから成るホリマ-ブレンドである.共重合体のアントラセン導入率は､P(SCMS)A一本鎖あたり平均65佃であった｡このブレンドの???? ????? ? ? ?? ? ?? ? ? ? ??0.0 0.5 1.0ガラス転移点の及び光散乱によって求めた曇点爪)をFig･1 ◎p(Sα S)A (wt%)に示すo FIB.1,Cloudpoints(○)andglassI,ansitiontcmpcfaturCS(●)ofP(SC叫S)A/PVMEblends.､B:光粂橋反応 hadiatioAtcmpcratm (×)･照射光は､Hg-Xeランプの365mの輝線を用い､P(SCMS)A鎖にラベルしたアントラセンの二量化反応を誘起した｡さらに､二量体の解離を防ぐためシャープカットフィルターによっ- 58 1 -研究会報告て300Ⅲ1以下の光を遮断した｡サンプルは組成P(SCMS)A/PVMq50/50)のポリマーブレンドであり､アルミニウムスペーサー¢Ⅱ皿×12mmx0.05Ⅱ皿)で成形した｡また､架橋に伴う残留応力を緩和させるため､サンプルのエッジにマスクをかけて､中心部4Ⅱ皿×8Ⅱ皿にのみ紫外光を照射した.ここでは､Fig.1に示す-相領域内の異なる三つの温度rL=30oC,90oC,120oC)で照射実験を行った｡また架橋密度(γ)は､架橋前後のアントラセンの吸収スペクトルより見積もった｡まず､異なるAT(=TJT.)で照射実験を行った結果を示す.共存曲線近傍(△T-12℃ ;120℃)で架橋する場合は､相分離速度が速いためスピノーダル構造が観測された｡架橋の効果により､相分離過程は進行できず､最終的に約2〟mの構造に収束したことが見られた(Fig.2)｡一方,すでに報告したように､T.近傍でDSC(示差走査熱分析)及び小角X線散乱を用いた実験では､架橋反応が相分離過程に打ち勝つため､室温では相溶するsEmJ'-IPN (半相互侵入高分子網目)が得られ､高温では混合系はミクロ相分離し､160Å程度のドメイン構造が確認されている.).また､これらの中間の温度すなわちAT-42℃とき(90℃)には､特異的なターゲットパターンが観測された(Fig.3)｡二次元光散乱パターンに現われる高次散乱から構造の高秩序性が予想される｡以下､ターゲットパターンの発現機構について検討する5)02.01.5育責1･00.50.0●●●●●-●● + bradiationat120●C0 20 40 60ImdiationTim c(min)¢)FIB.2,(a)hascICOntraStOPticalmicrographofaP(SCMS)A/PVME(50/50)blendirradiatedat120℃over40min(γ>4)･;O')nccomsponding2DFFrpowerspcctra･;(C)DcpcndcnceonirradiationtimeofthecharacteristicwavelengthsforP(SCMS)A/PVME(50/50)blendsphoto･CrossliJ)kcdat120℃.(A) LO岬 (b)ト==エ1xlO4cm･1Flさ･3,(a)Phase･contrastopticalmicrographofaP(SCMS)A/PVME(50/50)blendirradiatedat90℃OycrlOhrs(γ>14).;O)Thecorrcspondlng2DlightscatteringpatternoftheP(SCMS)A/PVME(50/50)blendimdiatcdat90℃overIOhrs.- 582 -｢複合系における動力学の新展開｣(D 干渉と対流まず､相分離過程の初期で生成した核による照射光の干渉が､相分離構造に及ぼす影響について検討した.そのため､ 直径3FLmのポリマービーズを用い､干渉実験を行ったが､本実験の条件下ではXe-Hgランプの光が干渉しなかったことを確認した.すなわち､照射光が広い波長分布 (300nm～900nm)を有する多色光であるため､干渉条件が成立しないことに起因する.一方､光照射によってサンプルの厚み方向に形成される架橋密度の勾配に伴い､ミクロ対流の発生が考えられる｡このような光反応誘起対流によるパターン形成は低分子液体系においてすでに報告されており､構進の大きさは厚み方向によって異なることが知られている )`｡対流の効果について検討するため､90℃で10時間照射した後､位相差顕微鏡で試料の表と義を観察したが､相分離構造に著しい差は見られなかった｡以上の結果よりFig.3に現れたターゲットパターンの形成機構に及ぼす光の干渉や対流の影響は除外できると考えられる｡② 残留応力上記したマスキング法を施さずに試料全体を光照射すると無秩序な構造が得られた｡これは架橋に伴った残留応力の効果によると考えられる｡一方､同一の照射条件下でマスキングして実験を行うとFig.3のターゲットパターンが観測された.この結果は､マスキングにより弾性歪が試料の周辺部へ緩和したことを示している｡さらに､マスキング法によって残留応力を完全に除去することは困難ではあるが､架橋によって生じた弾性歪はターゲットパターンの発現を妨げる要因であることを示唆している｡③ 弾性率の不釣り合い(dastic血S丘り合金のように弾性率か大きく異なる二成分混合系の場合では､相分離する際､せん断変形が弾性率の小さい相に集中し､軟らかい相が硬い相を包み込むため､特異的なモルフォロジーが発現すると解釈されている7).ポリマーブレンドの片方の成分に架橋を導入すると､二成分間の弾性率の差が大きくなることが予想される｡ここで､架橋反応に伴った二成分間の弾性率の不釣り合いがターゲットパターンの発現に及ぼす影響の有無を調べるため､30℃で30分間架橋した後(γ由 に対応)､試料を相溶領域から140℃(不安定領域内)へ温度ジャンプさせた｡結果としてスピノー ダル構造しか観測されなかった｡従って､二成分間の弾性率の不釣り合いのみではターゲットパターンの発現を説明することは極めて困難である｡④ 核生成とスピノーダル分解の結合(spinodalassociatedwi仙 mdeation)相溶する領域内で架橋反応を行うと､不安定領域が低温側へ広がっていき､試料がまずバイノーダル領域内に突入し､核生成が起こる｡連続照射の場合､不安定領域がさらに拡大し､前段階で生成した安定な核のまわりにスピノーダル分解過程が引き起こされ､ターゲットパターンの発現に至ると提案されている8).この機構について､次のような実験を行って検討した｡混合系の安定領域 (90℃)で1時間架橋し(†=14に対応)､安定な核の生成を確認した後､110℃(不安定領域)ー 583-(b) -1石蒜 ~｣Fig･4,(a)Phase-contrastopticalmicrographofaP(SCMS)A/m E(50/50)blendiradiatedat90℃over1hour.(γ=14).;(b)Phase･contrastopticalmicEOgraPhofthebleJld(a)afterannealingatlio℃overlhour研究会報告でアニリングした｡結果として､核の周囲にはスピノーダル構造が現われたが､ターゲットパターンが観測されなかった(Fig.4)｡ 従って､ターゲットパターンの発現は熱力学的な不安定性のみに起因するものではないと推察される｡Ⅲまとめまず､-相領域内で架橋を行った場合の相分離速度P)と架橋反応速度(相との定性的な関係について以下のように考えられる. 混合系のガラス転移温度Tgの近傍では､吃≫Rであるため､準安定な相溶するsemL'･IPNが得られた.逆に共存曲線近傍ではkc≪Rの条件が満たされ､スピノーダル構造か見られたが､架橋の効果により相分離過程が停止され､モルフォロジーの特徴的な大きさは一定値に収束した.kc～ Rの領域内にある90℃では､ターゲットパターンが観測され､2次元光散乱の結果からその高秩序性が確認された｡以上､述べた一連の実験結果より､上記の要因のみでターゲットパターンの発現を説明することは困難である.ターゲットバク-ンの形成機構を解明するのに､Calm･Hiliard方程式に架橋反応動力学の項を導入し､高分子混合系の反応拡散方程式を構築する必要がある｡最近､低分子系で C血 ･H皿ard方程式に一次9)ぉよび二次10)の反応項を取り入れ､シュミレーションが行われている.線形安定解析法では､長波長のモード(ソフトモード)のqltl0fや､モルフォロジーの自発固定化や自己組織化などの現象が見られている｡しかしながら､これらの結果は低分子系に限られている｡ネットワークの形成過程に伴った高分子混合系における弾性率の増加を考慮した反応拡散のモデルを構築することは今後の研究課題の一つである｡材料科学の見地から見れば､本講で述べた光架橋反応を相分離動力学と組み合わせる方法を利用すれば､従来得られなかった秩序性の高いメゾスコピック構造を有する多相系高分子材料を設計することができる｡謝辞.本研究は文部省科学研究助成 (平成6年度､一般研究 (C)､GTant･in-AidNo.06651052)により行われました｡ReferezLCeS1)Forexample,seeM.Morton,I.AnEoDL'cpolp eLizab'oD .･乃血cJi71esaLZ7d伽 ctceH,A瓜demicPress,NewYork(1983).2)Forem ple,seeA･放血e A由fW･Mibt,hZaJ･aeLD･58/_59,175 (1977)I3)For皿 nPle,seelTRzlbbeL･･TouBbeDedPlasdcs.',C.Keith Riew Ed.,Adv.Chem.Ser.No.222Am .Chcm.Soc.,WashingtonDC.(1989).4)T.Tamai,A.lmagawaandQ.Tran･ConsMaqoJ70JecuJes,血press(1994).5)A.H打ada,Q.Tran -Cong,tobepublished.6)M.'払gah,一aeh7LbaJiomudoD OfDissLiab'veSLt'cEuTeS.-,Ph,D.Dissertation,HebrewUniversity,Israel(1989)7)A.huki.andH.Nishimori Pbys.Rep.B43,13649 (1991)8)H;Furukawa,I.PLys.Soc.JpD.63,3744(1994)andpm'yBEecommzLDL'caEL'oD.9)S.C.Glot2Br,privatecomm血cation(1994);S.C.Glotzer, E.A.DiMarzioandM.Muthukumartobepublished.10)J.Verdasca,privatecommunication(1994);J.Verdasca,P.Borckn ansandG.Deweltobepublished.-584-

光架橋した二成分高分子混合系に見られる秩序化現象(ポスターセッション,基研短期研究会「複合系における動力学の新展開」,研究会報告)

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