宮崎大学博士（医学）2020年度doctoral thesi

34670

Mizutani, Youichi

ミズタニ, ヨウイチ

水谷, 陽一

English

University of Miyazaki Academic Repository

別紙様式第４ 学  位  論  文  要  旨 博士課程 甲 第   号 氏 名 水谷 陽一 [論文題名] Prediction of Posthepatectomy Liver Failure Proposed by the International Study Group of Liver Surgery: Residual Liver Function Estimation With 99mTc-Galactosyl Human Serum Albumin Scintigraphy.  （国際研究グループによって提案された肝切除後の肝不全の予測：99mTc-ガラクトシルヒト血清アルブミンシンチグラフィによる残存肝機能予測）  Clinical Nuclear Medicine,43(2):77-81, Feb 2018,  DOI:10.1097/RLU.0000000000001913  [要   旨] 背景と目的 99mTc-ガラクトシルヒト血清アルブミン(99mTc-GSA)は、哺乳類において肝細胞のみに存在するアシアロ糖タンパク質受容体に結合する放射性医薬品である。アシアロ糖蛋白室受容体の密度は肝予備能と密接に関連しており、術前の肝機能定量評価に広く利用されている。99mTc-GSA シンチグラフィにおいて、マルチコンパートメント解析を用いて得られる GSA Rmax 値は、肝臓の機能的予備能を評価するのに役立っており、肝切除術前シミュレーションで得られた局所的な残肝 GSA Rmax 値（GSA-RL 値）を算出して評価する手法は、致命的な術後肝不全を予防するのに有用と報告されている。2010 年にInternational Study Group of Liver Surgery（ISGLS）は、肝切除術後肝不全（Posthepatectomy liver failure；PHLF）の定義を提案した。以前にも 99mTc-GSA シンチグラフィと術後肝不全との関連については複数の施設・国から報告されているが、術後肝不全の定義が研究によって異なるために研究結果を比較することは困難であった。ISGLS によって提案された PHLF（ISGLS-PHLF）の予測と 99mTc-GSA シンチグラフィによる残肝機能評価推定と関連性は今まで報告はされていない。本研究では 99mTc-GSA シンチグラフィによる残肝機能評価推定の ISGLS-PHLF 予測における有用性を評価した。 研究方法 2011 年 8 月から 2015 年 11 月の期間において、宮崎大学附属病院で肝腫瘍に対して肝切除術を施行された患者のうち、術前に 99mTc-GSAシンチグラフィ検査を施行された 136症例を対象とした。99人（72.8％）が肝細胞癌、23 人（16.9％）が肝内胆管癌、14人（10.3％）が転移性肝腫瘍であった。99mTc-GSA シンチグラフィは、急速静脈注射の直後から肝臓と前胸部を含む、動的平面画像（30 秒/フレーム、40 分）を撮像し、次に肝臓領域の断層撮影画像を撮像した。GSA-Rmax 値は、5コンパートメントモデル（肝臓外血液、肝臓内血液、受容体、間質および尿）を用いた放射性薬物動態モデルおよび分析ソフトウェア（Fit AS ver.1.20）を使用して計算した。GSA-RL 値は SPECT 画像を用いて、事前の外科的切除計画に基づいて算出した。CT 画像を用いた残存肝容積の測定は、術前の CT 画像を用いて事前の外科的切除計画に基づいて肝切除シミュレーションを行い算出した。PHLF は ISGLS の定義に基づいて診断され、術後 5 日目のプロトロンビン時間（PT-INR）が 1.2 以上、高ビリルビン血症（1.2mg / dl 以上）と定義された。重症度は、ISGLS-PHLF 基準に従って患者の臨床管理への影響に基づいて評価された。統計分析の指標は年齢、性別、ICGR15、血清アルブミン値、血清ビリルビン値、血中ヒアルロン酸値、Ⅳ型コラーゲン値、Child-Pugh 分類、残存肝容積、GSA R-max 値およびGSA-RL 値を用いた。まず、肝細胞癌群、肝内胆管癌群、転移性肝腫瘍群の 3 群間で比較を行った。次に、PHLF 患者群と非 PHLF 患者群の 2群間において各指標の比較を行った。単変量分析で p 値が 0.05 未満の変数を選択し、多変量ロジスティック回帰分析の変数として利用し非 PHLF グループを参照としたオッズ比（OR）を計算した。GSA-RL 値と残肝容積の相関関係の評価はピアソンテストを用いた。 結果 肝細胞癌、胆管癌、または転移性肝腫瘍の 3つのグループ間で各指標に有意な差は認めなかった。136 人の患者のうち、17 人（12.5％）が ISGLS-PHLF 基準を満たし、17 人全員が Grade A であった。Grade B および C の患者は認めなかった。GSA-RL 値は PHLF 患者群で 0.232±0.08、非 PHLF 患者群で 0.354±0.13 であり、統計的に有意な差を認めた。単変量解析では、年齢、Child-Pugh 分類、残存肝容積、GSA R-max 値および GSA-RL値において PHLF 患者群と非 PHLF 患者群との間で統計的に有意な差を認めた。多変量解析では、GSA-RL 値と残存肝容積は ISGLS-PHLF の有意な独立した予測因子であった （p = 0.004、OR 149423; p = 0.038、OR 1.003）。GSA-RL 値と残存肝容積の間に相関関係は認めなかった。 考察 PHLF を評価するのに様々な臨床指標が用いられるが、我々の研究では GSA-RL 値がISGLS-PHLF の予測に最も有用で独立した指標であった。以前の報告で術後の高ビリルビン血症または肝不全を回避するためには予測される GSA-RL 値が 0.150mg /分以上であるべきと述べられている。我々の研究においては、Grade A の PHLF-ISGLS であった17 症例の GSA-RL 値は 0.157〜0.277 mg / min の範囲であった。この範囲内ではISGLS-PHLF Grade A に相当すると示唆される。残存肝容積も ISGLS-PHLF を予測するための別の独立した指標であったが、OR は GSA-RL 値の OR と比較して著しく低かった。また、GSA-RL 値と残存肝容積との間には相関関係は認めなかった。CT を用いた残存肝容積評価では評価できない残存肝機能を GSA-RL 値は評価できると考えられる。 結論 様々な術前検査指標の中で、99mTc-GSA シンチグラフィによって得られる GSA-RL 値は、ISGLS-PHLF の最も有用な独立した予測因子であった。 備考 論文要旨は、和文にあっては 2，000 字程度、英文にあっては 1，200 語程度 

国際研究グループによって提案された肝切除後の肝不全の予測：99mTc-ガラクトシルヒト血清アルブミンシンチグラフィによる残存肝機能予測

https://miyazaki-u.repo.nii.ac.jp/record/2000236/files/%E5%AD%A6%E4%BD%8D%E8%AB%96%E6%96%87%E8%A6%81%E6%97%A8.pdf

国際研究グループによって提案された肝切除後の肝不全の予測：99mTc-ガラクトシルヒト血清アルブミンシンチグラフィによる残存肝機能予測

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