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ミツハラ, ユリ

光原, 百合

Japanese

Onomichi City University Academic Repository

78	　この回の教養講座では、近年注目を集めているビブリオバトルについて紹介し、実演してみました。　ビブリオバトルとは、「知的書評ゲーム」という別名もある、一種のゲームです。比較的歴史が浅いので、いつどういういきさつで成立したかもはっきりわかっています。　創始者は工学博士の谷口忠大氏（2019 年現在、立命館大学情報理工学部准教授）。ことの起こりは、2007年、谷口氏が京都大学情報学研究科に特別研究員として赴任したときです。大学院生の指導にあたった谷口氏は、勉強会が今一つ盛り上がらないので、学生にもっと積極的に発言させる方法はないかと考えました。そして、教員の指定した本についてでは学生には発言が難しいらしい、しかし自分の好きな本について語るのなら盛り上がるのでは？と思いついたそうです。　そこで谷口氏は、指導する学生たちとともに、自分の好きな本について紹介するという取り組みを始めました。試行錯誤を重ねつつ、だんだんとやり方が固まってきて、「数名が一人５分間をかけて一冊ずつ本を紹介し、数分間のディスカッションを経た後、どの本を一番読みたいと思ったかを参加者による投票で決定する」というものになっていきました。　2008 年～ 2009 年、谷口氏の友人知人を通じて他の大学にもビブリオバトルが広がっていきました。2010 年にはビブリオバトル普及委員会が発足。ビブリオバトルは普及の一途をたどり、2014 年には、「全国大学ビブリオバトル」が始まりました。各地で予選、地区決戦を行って代表者を決め、全国大会でチャンプ本を決めるというものです。　現在ではビブリオバトル公式ルールとして、１．発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる。２．順番に一人５分間で本を紹介する。尾道本でビブリオバトル！尾道本でビブリオバトル！光原 百合尾道市立大学芸術文化学部日本文学科教授［研究要旨］光原 百合（みつはら ゆり）生まれも育ちも尾道。尾道市立大学芸術文化学部で文芸創作を教えるとともに、作家活動を行う。執筆ジャンルは推理小説、童話、ファンタジーなど。近年は地域の魅力や歴史を伝えるものとして、地域に伝わる怪談の発掘・研究に取り組んでいる。教養講座　2018/11/7	 	 79地域総合センター叢書10３．それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッションを２～３分行う。４．すべての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか？」を基準とした投票を参加者全員で行い、最多票を集めたものを『チャンプ本』とする。が規定されており、ビブリオバトルを冠するイベントを行うのであれば、このルールに沿わなければなりません。　発表者は発表時間５分を使い切ること、ということも、公式ルールの詳細として補足されています。つまり言うことがなくなっても、５分が過ぎるまで降壇することはできません。逆に、５分が経過したら発表途中であっても終えなければなりません。どのように紹介するか事前にきちんと立案し、練習も重ねなければ、限られた時間を生かした発表は望めないことになります。谷口氏は、ビブリオバトルの実践を通して、学生のプレゼンテーションスキルが飛躍的に上がることを実感されたそうです。　こうしてビブリオバトルは、読書好きの間で本の面白さを分かち合うゲームとして楽しまれるとともに、教育現場でも少しずつ、子供たちへの読書指導の一環として、またプレゼンテーション能力の養成のため、導入されるようになってきました。　ただ、特に教育現場での活用に際して注意すべきことは、「投票によってチャンプ本を決める」というコンセプト自体に、抵抗を感じる向きもあるということです。本の面白さに優劣をつけるのはふさわしくないと感じる人は多いようです。創始者の谷口氏によれば、この投票によってチャンプ本を決めるという方法は、発表を行う人たち（バトラーと呼ばれます）以外の、発表を聴いている人たち（オーディエンスと呼ばれます）にも投票という形で参加してもらうことにより、積極的に聞く姿勢を持たせることができるので有効だということです。おそらく教育現場では、ビブリオバトルというゲームを「本の優劣・勝敗を決める」ものと感じて好まない児童・生徒と、逆にゲーム性を楽しむあまり、優劣・勝敗にこだわりすぎる児童・生徒がいることが予想されます。これについては指導側が慎重に、このゲームは優劣や勝敗を決めるものではなく、あくまで、「発表を聞いてどの本を読んでみたいと思ったか」を考える場なのだと伝える必要がありそうです。確かに実践してみての実感としては、この投票によるチャンプ本決定があるからこそビブリオバトルは盛り上がる、というのは間違いないようです。　さて、教養講座においては、ビブリオバトルの歴史やコンセプトについて解説すると同時に、やはり実際に実演してみて、オーディエンスにも投票に参加してもらってこそ面白さが伝わると考えたため、尾道市立大学の学生にも協力を願って、１ゲーム行うこととしました。　ビブリオバトルにおいて紹介する本に制限を付けるべきかどうかという問いは、ビブリオバトルを実践する上に置いてしばしば持ち上がります。ビブリオバトル公式ルールには、特に本への制限はつけられていません。よくある疑問は、マンガ、絵本、図鑑のように、文字でなく絵に大きな比重があるなどの本を取り上げてもいいかというものですが、これについては実際に行う場合の運営主体の方針に任されていると言っていいようです。また、何かテーマを設けることも自由です。筆者が初めてオーディエンスとして参加したビブリオバトルは「妖怪」をテーマにしたビブリオバトルで、妖怪に関する研究書、図鑑、マンガなども幅広く紹介されていました。　今回の教養講座には尾道市民の参加が多いと考えられたため、親しみを持っていただけるよう、「尾道」をテーマにした本の紹介バトルを行うことにしました。尾道を舞台にした小説、尾道出身者が著者である作品など、何かの形で尾道と関連している本を紹介してください、とバトラーとして参加した３人の学生たちに依頼しました。尾道本でビブリオバトル！80	　結果として今回紹介された本は、『風の交シンフォニー響楽』（光原百合著）、『尾道茶寮夜咄堂 おすすめは、お抹茶セット五百円（つくも神付き）』（加藤泰幸著）、『尾道草紙 13』（尾道市立大学創作民話の会編著）、『おのみち怪談』（東雅夫監修）となりました。　学生バトラーは３人だったのになぜ４冊紹介されたかといえば、筆者・光原もバトラーの一人として参加したからです。ビブリオバトル１ゲームの人数としては、あまり多すぎると紹介された本の内容を覚えていられないが、二人三人ではあまり盛り上がらないので、四、五人といったところがちょうどいいとされます。そこで今回も四人で一ゲームとしました。知識量を問うゲームではないので、教員と学生が同じ土俵の上でバトルを行っても差支えないのがビブリオバトルの面白いところです。実際このときは、筆者も全力でバトルしましたが、チャンプ本を獲得したのは学生の一人が紹介した『尾道茶寮夜咄堂 おすすめは、お抹茶セット五百円（つくも神付き）』で、これも大変楽しいことだったと思います。　これからも、ビブリオバトルによって本の面白さや自分の意見を述べる楽しさを知る若者たちが増えるよう、様々な場で活用していきたいと考えています。読者の皆様にも機会があればぜひ、ビブリオバトルにオーディエンスとして、あるいはバトラーとして参加していただきたいと思います。本が好きだという思いさえあれば、どなたでも楽しめるゲームですので。（注）ビブリオバトルの詳細は、公式サイト（http://www.bibliobattle.jp/biburiobatoruno-rekishi）をご覧ください。この項を書くに際しても、ビブリオバトルの公式ルールや歴史、創始者谷口氏の取り組みの様子などについては、公式サイトを参考にさせていただきました。尾道本でビブリオバトル！

尾道本でビブリオバトル！

https://onomichi-u.repo.nii.ac.jp/record/1445/files/chi1001.pdf

尾道本でビブリオバトル！

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