上田, 佑子

上野, 秀人

山下, 陽一

本田, 克久

石掛, 桂士

阿立, 真嵩

Japanese

Ehime University Institutional Repository

－ 11 －愛媛大学農学部農場報告（Bull. Exp. Farm Fac. Agr., Ehime Univ.）30：11－14（2008）植物によるドリン類農薬汚染土壌の浄化石　掛　桂　士 1）・山　下　陽　一 1）・阿　立　真　嵩 1）上　野　秀　人 2）・本　田　克　久 2）・上　田　佑　子 3）Remediation of Drin-pesticides Contaminated Soils by Plants Keiji Ishikake 1）, Yoichi Yamashita 1）, Masataka Adachi 1）, Hideto Ueno 2）,Katsuhisa Honda 2） and Yuko Ueda 3）Summary　Drin-pesticides have been detected in the soils since their sale and use were banned in 1971.  The pesticides are very toxic, hard-degradable, transferred in the long distance and easily accumulated in the human bodies.  It is well known that an active absorption is specific to Cucurbitaceous plants.  Morning glory（Ipomoea nil） and basil（Ocimum basilicum） were used to remove dieldrin and endrin residues from contaminated soils. Low- and high-organic soil types were employed in the experiments.  Morning glory plants absorbed the drin-pesticides more greatly than basil plants.  They also absorbed more amount from low-organic soils than high-organic soils.  High-organic soils retained the pesticide residues more than low-organic soils.緒　　　　　言　ドリン類農薬は、1960年代から1970年代にかけて多用された有機塩素系農薬である。これらが使用禁止となったのは、強い毒性に加え、難分解性、生物蓄積性、長距離移動性といった性質を持つためである。そのため販売･使用が禁止となった現在でも土壌中にドリン類農薬が残存しているという報告１）がある。またドリン類農薬は、キュウリなどのウリ科作物で特異的に吸収されるという報告１）もあり、問題となっている。　そこで本研究では、土壌の浄化を目的としてドリン類農薬汚染土壌での作物栽培とドリン類農薬の吸収率を分析した。１）愛媛大学農学部附属農場（University Farm, Faculty of Agriculture, Ehime University）２）愛媛大学農学部（Faculty of Agriculture, Ehime University）３）三浦工業（Miura Kogyo K.K.）－ 12 －材料および方法１．材料　　植物材料として、アサガオおよびバジルを供試した。 ２．土壌調整　　ドリン類農薬として、ディルドリン、エンドリンを供試した。栽培土壌は、愛媛大学農学部附属農場の土壌（以下農場土と表記）、市販の培養土（以下市販土と表記）の二種類とした。ドリン類農薬は、直接土壌に混和できないため、セライトに吸着させて土壌へ混和した。以下にその手順を示す。①アセトン350mℓにドリン剤それぞれ約４mgを溶かし、ドリン－アセトン溶液を作製。②セライト100gにドリン－アセトン溶液を混和。③40℃湯浴、100hPa減圧下でアセトンを除去、さらに60℃湯浴、100hPa減圧下で完全にアセトンを除去。セライトのドリン類農薬の濃度は約４mg/kgとなった。土壌中のドリン類農薬の濃度が0.2mg/kgとなるようにセライトを混和した。調整後の土壌中のドリン類農薬の実測値は、農場土ではディルドリン0.17mg/kg、エンドリン0.1mg/kg、市販土ではディルドリン0.31mg/kg、エンドリン0.17mg/kgとなった。これはｎ=１での結果である。３．栽培および生育調査　　栽培には９cmビニルポットを用い、ドリン類農薬がポット外へ出るのを防ぐためポットにナイロン袋をかぶせた。生育調査は、草丈、葉数、葉色値をはかった。４．植物体中のドリン類農薬含有率の分析　　細断した植物体から５gを採取し、20mℓのアセトン中でホモジナイズした。それを吸引ろ過し、50mℓにメスアップした。その中から20mℓ分取し、①サロゲートを適量添加後、約５mℓに濃縮。②５％食塩水、ヘキサンを加え、振とう抽出。③二層カラムによりろ過。④I. S. 50μℓ加え、全量が200μℓとなるように濃縮。これをGC/MS-SIMにより分析した。５．栽培土壌中のドリン類農薬含有率の分析　　土壌５gを20mℓアセトンに入れ、よく振とうした。振とう液を吸引ろ過し、50mℓにメスアップした。これ以降の手順は、植物体分析①から④と同様である。結果および考察　グラフ中の“ア農”は農場土で栽培をしたアサガオ、“ア市”は市販土で栽培したアサガオ、“バ農”は農場土で栽培したバジル、“バ市”は市販土で栽培したバジルを表している。生育調査に関してはｔ検定を、ドリン類吸収に関してはTukeyの多重比較検定を行った。各処理区５検体を供試した。１．生育調査　　生育調査の結果、アサガオ、バジルとも各項目に有意差は見られなかった（第１図アサガオの草丈）。これは、ポットが小さかったこと、ナイロン袋をか051015209/11 9/19 9/25 10/3測定日草丈（cm）ア農ア市第１図　アサガオの草丈－ 13 －ぶせての栽培で、排水性・通気性に問題があったこと、水やりが均一にできなかったこと などが考えられた。また、ポットが小さく根圏が限られたことも要因として考えられたが、ドリン類農薬を含む土壌を最低限の量にするための措置であったため、栽培方法等を検討する必要があった。２．植物体分析および土壌分析　　分析の結果を第２、３図に示した。ディルドリンはア農で、他の処理区よりも５%水準で有意に高く吸収しているのが確認された。エンドリンは、ア農のみから検出され他の処理区からは検出されなかった。　　有機物はドリン類農薬を吸着すると言われる２）。愛媛大学農学部附属農場において、過去多くのドリン類農薬が使用されたにもかかわらず検出されなかったのは、農場土が有機物の少ない土壌であるためと考えられた。逆に市販土は有機物に富んだ土壌であるため、ドリン類農薬を吸着していたと考えられた。また本研究では、ドリン類農薬がポット外へ出るのを防ぐためにナイロン袋をかけていたため、農場土において遊離状態のドリン類農薬が多く存在し、それをアサガオが吸収したものと考えられた。　　次に土壌の分析結果では、農場土、市販土ともに栽培植物による有意差が見られなかった（第４、５図）。地上部の結果から、バジルでは地上部でのドリン類の濃度がアサガオの濃度より低いため、土壌濃度に差が出ることが予想されたが、合致しなかった。そのため、バジルではドリン類を吸収後、生体内で分解する可能性があるのではないかと考えられた。仮にバジルに吸収・分解の能力があれば、土壌浄化に最も適した植物と考えられる。しかし、栽培の精密性、分析時の誤差などの可能性もあり、推定の域を出ないため、断言できない。また、植物油が土壌微生物を活性化し、有機塩素系化合物の分解が促進されるという報告もあり３）、バジルについてはさらに検討する余地があ00.010.020.030.040.05ア農 ア市 バ農 バ市ディルドリン含有率（mg/kg）00.0050.010.0150.02ア農 ア市 バ農 バ市エンドリン含有率（mg/kg）第２図　植物体のディルドリン含有率 第３図　植物体のエンドリン含有率00.050.10.150.2ア農 ア市 バ農 バ市ディルドリン含有率（mg/kg）00.050.10.15ア農 ア市 バ農 バ市エンドリン含有率（mg/kg）第４図　土壌中のディルドリン含有率 第５図　土壌中のエンドリン含有率－ 14 －ると考えられた。ウリ科作物は、根からなんらかの分泌物を出し、土壌に吸着されたドリン類農薬を溶脱・吸収すると考えられている４）ため、現段階では、土壌浄化にはウリ科作物のほうがアサガオ、バジルよりも優れていると考えられた。摘　　　　　要　ドリン類農薬は1971年に販売と使用が禁止されてからも、これまでに土壌で検出されてきた。この農薬は毒性が強く、難分解性で、長距離移動性があり、人体にも容易に蓄積する性質を持っている。また、ウリ科の植物に特異的に吸収されることが良く知られている。ドリン系農薬に汚染された土壌からディルドリンとエンドリンを除去するために、アサガオとバシルを実験に用いた。土壌は有機物の少ない土壌と多い土壌の２種類を使った。バジルに比べてアサガオは多くのドリン類農薬を吸収する傾向があった。また、有機物の多い土壌より少ない土壌で吸収量が多かった。有機物の多い土壌が少ない土壌に比べて、ドリン類農薬が多く保持される傾向が見られた。謝　　　　　辞　残留農薬の分析では、愛媛大学農学部環境先端技術センター、三浦工業株式会社のご協力を得て遂行することが出来た。また、本研究は平成20年度科学研究費補助金奨励研究（課題番号20925007）によるものであり、申請では、工学部 阿部文明氏のご指導をいただいた。心から謝意を申し上げる。引　用　文　献⑴　Hashimoto Y. 2005. Dieldrin residue in the soil and cucumber from agricultural field in Tokyo. J. Pestic. Sci. 30：397-402.⑵　Harris, C.R. and W.W. Snas. 1972. Behavior of dieldrin in soil : Microplot field studies in the influence of soil type on biological activity and absorption in carrots.  J. Entomol. 65：333-335.⑶　本間憲之．2008．原位置バイオレメディエーションによる有機塩素化合物汚染土壌・地下水の浄化技術．三井造船技報　193：17-22.⑷　Otani T., N. Seike and Y. Sakata. 2007. Differential uptake of dieldrin and endrin from soil by several plant families and Cucurbita genera . Soil Sci. Plant Nut. 53：86-94.

Remediation of Drin-pesticides Contaminated Soils by Plants

https://ehime-u.repo.nii.ac.jp/record/2061/files/AN00381455_2008_30-3.pdf

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