金沢医科大学博士（医学）2019thesi

ノダ タクヤ

能田 拓也

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Kanazawa Medical University Repository

- 1 - 氏名（生年月日）  能の 田だ 拓たく 也や  学 位 論 文 題 目 Effects of Tokishakuyakusan on Regeneration of Murine Olfactory Neurons In Vivo and In Vitro （当帰芍薬散が嗅神経の再生に及ぼす影響に関する研究）   学位論文内容の要旨            研究目的  感冒後嗅覚障害は，流行性感冒やインフルエンザに伴う上気道感染症後の神経性損傷から生じる。これは神経性障害と分類され，一部の患者は自然に回復する。但し，嗅覚機能の回復には嗅覚ニューロンの再生が必要である。近年，漢方製剤の当帰芍薬散が感冒後嗅覚障害に有効であることが報告されているが，その作用機序については明らかにされていない。当帰芍薬散は婦人科疾患患者の治療薬として広く使用されている。今回，当帰芍薬散の嗅神経再生に及ぼす影響とその機序を，嗅神経傷害モデルマウスを用いた in vivo ならびに培養アストロサイトを用いた in vitro の実験系で検討した。  実験方法  8 週齢 BALB/c 雌マウスに嗅上皮障害作用があるメチマゾールを腹腔内投与し，嗅上皮を脱落させた。その後当帰芍薬散飼料で飼育のうえ 2，4，6週後に頭部を解剖し嗅上皮と嗅球を摘出した。そして嗅上皮の厚さ，成熟嗅細胞と増殖細胞のマーカーである OMP とKi-67 の個数をコントロール飼料群と比較検討した。また嗅球における神経成長因子（NGF）を定量しコントロール飼料群と比較検討した。その他 in vitro で培養アストロサイトに当帰芍薬散エキスを添加し NGFの発現を検討した。また複数の阻害剤を投与することで当帰芍薬散による NGFの産生経路を推定した。他に当帰芍薬散の構成生薬別でも検討し NGF を産生させる成分効果を測定した。  実験成績  嗅上皮障害マウスにおいてメチマゾール投与 14 日目と 28 日目に，嗅上皮の厚さと OMP陽性細胞数はコントロールマウスと比較して当帰芍薬散投与マウスでより増加した。42日目ではコントロールマウス，当帰芍薬散給餌マウスの間で有意差を示さなかった。しかし Ki-67 陽性細胞は，観察期間を通して非 TSS 飼育マウスより有意に増加した。当帰芍薬散給餌マウスの嗅球の NGF発現は，28 日目に増加した。14日と 42日目では有意差はでなかったがその傾向がみられた。また，in vitro の実験においては当帰芍薬散添加により，培養アストロサイトにおける NGF mRNA および蛋白の産生が時間依存性・用量依存性に増加した。阻害剤を用いた実験では，MEK1/2 阻害薬 U0126 の添加により TSS による NGF 産生が抑制された。さらに，構成生薬の中で蒼朮，当帰により NGF 産生が増加し，その構成成分である Atractylodinや Levistolide A の添加によっても NGF 産生が増加した。 - 2 -  総括および結論  in vivo の実験において当帰芍薬散給餌マウスにおいて嗅上皮の厚さ，OMP，Ki-67 有意に多く発現していたことが明らかになった。また嗅球における NGF の発現も増加する傾向がみられた。このことから嗅球の NGF発現は当帰芍薬散投与によって増加し，嗅上皮での嗅覚ニューロンの再生を促進させている可能性が指摘できた。培養アストロサイトを用いた実験では，MEK1/2 阻害薬 U0126 の添加により TSS による NGF 産生が抑制されたことから，当帰芍薬散による NGF産生促進は ERK 経路を介している可能性が示唆された。さらに，その中核となる成分として，Atractylodin ならびに LevistolideA が重要であると考えられる。本研究では、in vivo ならびに in vitro の実験で，当帰芍薬散の神経性嗅覚障害に対する治療効果が嗅球における NGF増加を介している可能性を明らかにし得た。 

Effects of Tokishakuyakusan on Regeneration of Murine Olfactory Neurons In Vivo and In Vitro

https://kanazawa-med.repo.nii.ac.jp/record/67/files/summaryk533-1.pdf

Effects of Tokishakuyakusan on Regeneration of Murine Olfactory Neurons In Vivo and In Vitro

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